定年・退職のお金

20年で1000万円も減った!退職金クライシスの現実と対処法【2022年】

この20年で退職金の額は1000万円もダウン。退職金制度自体がない企業も増えています。これまでは、収支がマイナスでも「退職金でリカバリーできるから大丈夫」と考える人も多かったのですが、そうは言っていられない時代に突入しました。その現状と回避方法をご説明します。

酒井 富士子

執筆者:酒井 富士子

60代の得する働き方ガイド

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退職金はこの20年間で1000万円ダウン

ひと昔前までは、退職金で、住宅ローンを完済したり、子育ても終わって悠々自適に老後を過ごしたり……といったことが可能だったかもしれません。しかし、これから老後を迎える世代にとっては、そうもいかなそうなのです。

厚生労働省の「就業条件総合調査」によると、退職金(大卒、就業20年以上)は1997年の2868万円をピークに、2002年2499万円、2007年2280万円、2012年1941万円、2017年1788万円と20年で1000万円以上減っている計算。退職金制度がある会社も26.6%と、全体の約4割。しかもその割合は年々減っているのです。
退職金の支給額は年々下がっている

退職金の支給額は年々減っている(厚生労働省「就業条件総合調査」より)

私が執筆した『60代の得する「働き方」ガイド』では、65歳までフルタイムで働く「仕事バリバリ派」の近代太郎さん(仮名)が登場します。59歳の会社員で、妻がおり、長女と長男はともに独立して、教育費の心配はない。60歳の定年退職時に1000万円の貯蓄があり、退職金を1764万円もらう設定。定年退職後は定年時50万円だった給料が26万円に下がるが、65歳の誕生日まで再雇用で働く優等生です。詳細は省略しますが、この人の貯蓄が底をつくのは84歳のとき。

このように退職金がもらえれば、貯金の目減りを遅らせることができます。もう少し日々の生活を切り詰めたり、0.5%でも運用すれば、なんとか年金生活を安泰を暮らせる計算でした。

しかし、この試算。もしも退職金がゼロだったらという試算に変えると、結果は大きく変わります。65歳までフルタイムで働くとしても、65歳のときには貯蓄が底をついてしまうのです。年金生活に入る前に老後破たんしてしまうという、とんでもない結果に……。

退職金がゼロだとどうなる?

以前の記事(定年後には「子や孫」にかかる出費に要注意!60~64歳にかかるお金は高額)でもご紹介しましたが、60歳から65歳は、ライフイベントや第2の人生の門出としての出費が多い時期です。

近代太郎さんの場合も、60代前半は、夫婦で海外旅行、車の買い替え、自宅のリフォーム、長男・長女の結婚式への援助、孫誕生のお祝い金など、ライフイベントの出費でいっぱいです。

でも退職金がゼロになったら、上記のようなイベントはもちろんすべて中止。それどころか、夫だけでなく、妻も、夫が定年退職した後に働き続ける必要があります。

「50代で子どもたちに教育費がかかり、それまでの貯蓄が切り崩されても、退職金があるからなんとかリカバリーできる」というのが、今までの日本人の一般的なライフプランでした。しかし、退職金がなくなると、多くの会社員が老後破たんを迎えてしまうのは間違いないのです。

退職金クライシスを回避するには

さて、ではどうしたらいいのでしょうか。まず、定年を迎える前から老後のお金まわりについての準備をすること。下流老人の記事でもお伝えしましたが、子育てが終わったからと気を緩めて贅沢をしてしまわずに、収入が多いうちに日々の生活費をダウンサイジング。「なんとかなるだろう」と問題を先送りにせず、コツコツ貯金を増やしておきましょう。

また、公的年金を受給できる原則65歳になるまでは、雇用継続や転職などで年300万円程度のフルタイム勤務を続けるのは今や常識。65歳以降も70歳までは、月10万円程度の収入があれば、公的年金をもらいながらも貯蓄を切り崩さず、生活していくことができるでしょう。子どもなどが独立した50代後半は人生最後の貯め時なので、運用を怠らず、「つみたてNISA」や「iDeCo」といった非課税制度を利用して、手持ち資金の運用や余剰資金の積み立て投資をしていくことが大切です。
 
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