亀山早苗の恋愛コラム

托卵とは?「托卵女子」が子を欲しいと感じてから産むまでの2年間

鳥類が他の鳥の巣に卵を産みつけ、その鳥に孵化したひな鳥を育てさせることを「托卵」という。それになぞらえ、他の男性の子を産み、夫に育てさせる妻を「托卵女子」というらしいが……。今回は実際の托卵女子にお話を伺いました。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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「托卵」とは

「托卵」とは

夫以外の子を妊娠、出産して夫の子だと偽って育てていくことを「托卵」といい、そういう女性を「托卵女子」というのだそう。托卵とは、そもそも動物の習性のひとつで、鳥類が他の鳥の巣に卵を産みつけ、その鳥に孵化したひな鳥を育てさせること。それになぞらえて、他の男性の子を産み、夫に育てさせることから「托卵」という言葉を当てているようだ。
 

托卵女子の気持ち……「好きな人の子がどうしてもほしい」

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「どうしても好きな人の子がほしかったんですよね」

そう言うのはハルカさん(37歳)だ。夫との間には7歳になる子がいるが、ふたり目はなかなか授からなかった。

「セックスレスとまではいかないものの頻度が極端に落ちていましたから、そう簡単にはできないと思っていました。私たち、10年つきあって妊娠をきっかけに結婚したんです。妊娠していなかったら、きっと腐れ縁的に友だちと恋人の間をさまようような関係だったのではないかと思う。生活する上でのパートナーとしては、家事育児に積極的だし、いい人なんだけど、ときめきはもうないですよね。お互いにそうだと思う」

2年前に仕事関係で出会ったのが、3歳年上のテツオさん。彼にも家庭があったが、お互いに惹かれ合い、どうにもならなくなって関係を持った。以来、「離婚するのは大変なので、家庭優先で」というルールのもと、粛々とつきあっていた。

「でもある日、ふと思ったんです。彼の子がほしい、と。私も彼も、結婚してしまった以上、家庭を壊すことは考えていませんでした。万が一、離婚してテツオと一緒になっても、また『家庭』という枠が息苦しくて、他の異性に目移りするかもしれない。

テツオは『結婚なんて、誰としてもたいして変わらないよ。それより恋愛のほうが僕にとっては重要』と言ってしまうような人。でも私も本音ではそれに賛同していました。だからこそ、私の家庭生活は壊さずに、心から好きになったテツオの子がほしいと思ったんです。万が一、私たちの恋愛が終わっても、テツオの子がいれば私は強く生きていける」

テツオさんに話すと、「いいけど、僕はその子を育てられないんだよね。それは寂しいなあ」という反応だった。一般的にはおそらく“非常識”な反応だろうが、ハルカさんはそれがうれしかった。頭ごなしに反対されなかったからだ。やはりテツオさんとは、感覚的に似ていると確信した。
 

夫はとても喜んでくれた

「育てるのは私と夫だけど、いつでも会えるようにするからと言って、ふたりで妊娠しやすい日を選びました」

その日は必ず、夫にも挑むとハルカさんは決めた。そして挑戦すること3カ月目、ハルカさんはテツオさんと体を重ねた数時間後に「受精した」と確信したそうだ。「思い込みかもしれないけど、『あ、今だ』とわかった」と彼女は言う。その夜はもちろん、夫ともしなければいけない。

「だけど夫は酔って帰ってきてすぐに寝てしまったんです。このままじゃまずい、ととりあえず“した”ような形跡を残しておきました。翌朝、『あんなに酔ってたのに……』と言ったら、夫もそうだったかなって」

その後、無事に妊娠を確認。夫がものすごく喜んだとき、チクリと胸が痛んだ。テツオさんも大喜び、「無事に産もう」と言ってくれた。

今年の春に出産、上は男の子だが、今回は女の子だったため、ハルカさんはほっとした。

「男の子だと、どうしても父親に似てるとか似てないとか言われがちだから」

テツオさんに娘を会わせることができたのは夏になってからだ。それまでは三日にあげず写真を送っていた。

「早く会いたいとせがまれました。夫が出張でいない日をみはからって彼に来てもらって。彼は何度も何度も娘を抱いて涙を流していた。実は夫も泣いたんですよ、娘が産まれたときに。こんなに愛されて産まれてきてよかったと思いました」

自分が少しズレているのはわかっている、とハルカさんは言った。それでも、テツオさんの遺伝子を半分受け継いだ命がこの世に産まれてきたことがうれしいし、その子を夫と一緒に育てられるのもうれしいと彼女は淡々と口にした。

「世間では『托卵』っていうんですか。なんだかピンとこない……。もちろん、夫に嘘をついているのは申し訳ないと思うけど、夫が娘を抱いていると、ああ、夫の子なんだなと思うことがあるんです。でもテツオが抱いていると、やっぱりテツオの子だ、と。いずれにしても私にとっては息子同様、自分の命に替えてもいい存在。いつか本当のことがわかったとしたら? 正直、そこまで考えていなかったけど、すべての責任は私がとるつもりです」

彼女を責めることができるのは夫だけかもしれない。他人が善悪のジャッジをしていいとは思えない。ただ、彼女の娘が愛されて産まれてきたことはまぎれもない事実だ。


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