年金保険料支払い延長案が出た背景とは?
そもそも日本の年金制度は、現役世代が払う保険料で年金受給者を支える賦課方式と呼ばれるものです。したがって、少子高齢化により働き手が少なくなる一方で高齢者が増える現在において、年金制度を維持するには、現役世代からの保険料収入を増やすか、年金受給者の受け取り額を減らすかしかありません。そのため過去にも制度改革が行われており、今回新たに議論に上がったのが、年金保険料の支払いを5年延長する案です。国民年金保険料の支払いが5年延長されると?
この案を具体的に説明すると、現行の国民年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人が、40年間保険料を納めることで、65歳からは満額である79万5000円(令和5年度)(*1)を受け取れる制度であるのに対し、改正案では支払い期間を5年延長し、保険料支払いを45年間にするといったものです。令和5年度の毎月の保険料は1万6520円であり、仮に保険料が現在と同じ額で支払いが5年間延長された場合、単純計算で約100万円の保険料負担が増えることになります。
・1万6520円×12カ月×5年=99万1200円
*1:68歳以上の方の満額は79万2600円
保険料の負担が増えるのは誰?
国民年金保険料の支払いが5年延長された場合、実際に負担が増えるのは誰なのでしょうか。まずは、自営業者やフリーターの方(*2)などです。自営業者やフリーターの方などは、現在も国民年金保険料をご自身で負担していると思いますが、加入期間が5年延長されれば、64歳まで保険料の負担が続くことになります。
また、会社を定年退職され、60歳以降に働いていない方や、60歳以降も厚生年金に加入せずに働く方も対象となるでしょう。日本の年金制度は2階建てであり、会社員は2階部分の厚生年金に加入する(*3)と同時に、1階部分の国民年金にも加入しています。なお、給与からは「厚生年金保険料」が天引きされていますが、別枠で国民年金保険料を負担することはないのです。しかし会社を定年退職したり、厚生年金に加入しない働き方をする場合は、ご自身で国民年金に加入することになります。5年延長となった場合、60歳~64歳までの国民年金保険料は自分で負担することになります。
さらに、会社員である夫の社会保険上の扶養に入っていた方(*4)で、夫が定年退職された場合なども、ご自身で国民年金に加入することになり、64歳までの国民年金保険料を負担することになります。
*2:第一号被保険者のこと
*3:第二号被保険者のこと
*4:第三号被保険者のこと
保険料負担が増えれば年金額は増えるのか?
審議案通りに国民年金保険料の支払い期間が5年延長された場合、受け取れる年金額は増えるのでしょうか。答えは「現時点では分からない」です。現時点では「国民年金保険料の支払いを5年延長する案が審議されることになった」との情報だけであり、給付額がどうなるかに関した情報はありません。
まとめ
今回は、2025年の年金改革に向け、国が国民年金保険料の支払いを5年延長する審議に入った件について解説してみました。現時点での情報は少ないため、確実に言えるのは、改正案が現実のものとなれば自営業者やフリーターの方などは、約100万円の負担増となるということくらいです。
いずれにせよ政府が年金の給付水準を含め、今後どのような方針を打ち出していくのかを注視していく必要がありそうです。
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