亀山早苗の恋愛コラム

結婚10年、夫が妻に隠し続けた「秘密」。突然現れた義弟が一枚の写真を取り出して…

夫婦間にも秘密のひとつやふたつはあるだろう。事情はどうあれ、「隠し続けられた」ことに大きなショックを受ける人もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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今の時代、整形手術はそれほど珍しい話ではない。目を二重にするとか少し鼻筋を通すとか、自ら告白する人たちもいる。

とはいえ、整形手術が「遠いできごと」だと感じる人も少なからずいるだろう。ましてやその事実を、結婚10年たってから知ることになったとしたら……。
 

鷹揚(おうよう)でアバウトな夫

結婚して10年、8歳と5歳の子がいるリカコさん(42歳)は、つい最近、夫が整形手術をしていたことを知った。

「もともと夫は地方出身、さらに父親が転勤族だったそうで、大学入学と同時に彼は東京でひとり暮らし。結婚したとき、両親は北海道、弟さんはアメリカに住んでいた。今、義両親は山陰地方にいます。お義父さんはもう定年になっていますが、まだまだ現役で働いていて。お義母さんも仕事をしているので、うちは義実家とは疎遠なんですよね。リモートでときどき子どもたちが会ってはいますが。私の実家は東京なので、夫も私の実家にはよく行ってくれます。父と夫は仲良しで、ふたりで釣りに出かけたりするくらい」

仕事関係で知り合って意気投合、1年足らずの付き合いで結婚に至った。うちの親には事後報告でいいという夫を説得して、彼女は北海道まで会いに行った。

「淡々とした両親でしたが、愛情は深いと思いました。大人なんだからふたりの好きなようにすればいいという感じ。でもお義母さんは『私は料理が下手なの。近所においしいレストランがあるから行きましょ』とオープンな人で。お義父さんは、『いいんだよ、家事なんかしなくたって誰も死にゃあしない』というアバウトな人。夫もオープンでアバウトなところがあるので、この両親にしてこの彼か、と当時は思ったものでした」

リカコさんも共働きの道を選んだが、確かに家事については夫はアバウト。代わりに食洗機やロボット掃除機を買ったりして、家事の手間が減る方向を探るタイプだった。

「子どもにも鷹揚ですよ、夫は。おおらかといえるけど、たまにこれでいいのかしらと思うこともあります。言ったことをそのまま受け取るタイプなので、察してくれは通用しない。でもストレートに言えば受け入れてくれる。あんまりウエットなところがないから楽だけど、イマイチ情緒に欠けるところはありますね」

それでもケンカひとつせず、結婚生活が続いてきた。売り言葉を投げつけても夫は決して買おうとしないからだ。
 

整形がバレて、夫は……

リカコさんが不思議だったのは、夫の過去の写真がほとんどなかったことだ。

「小学校に入るくらいまではあるんです。その後はまったくない。大学生になってからは本人が持っていましたが。どうしてなのかと聞いたら、『高校生のときに家が火事になって、すべてなくなった』と。目に見える思い出はなくても、心の中にはあるからいいんだ、と言うのを聞いて気の毒だけど前向きな人だなと思ったんです」

転校が多かったから同窓会にも呼んでもらえないんだと言ったこともあった。だが実は、夫は以前の顔がわからないほどの整形手術をしていたのだ。

「それがわかったのは2カ月ほど前です。彼の弟が久々に日本に戻ってきた。今までも帰国したことはあったし、夫は会っていたんでしょうけど、弟さんが忙しいという理由で私は会っていなかった。今回も会わない予定だったんですが、私の職場に義弟が訪ねてきてくれたんです。『兄は僕をあなたに会わせたくないんですよ』と義弟は言いました。どうしてというと、写真を見せてくれた。義弟の隣にいたのは、まったく知らない人。『それが兄貴です。あなたに整形のこと、言ってないでしょ』って。言葉が出ないほど驚きました」

リカコさんは今の夫の写真を見せてくれた。かなりのイケメンである。きりっとした二重の目、鼻筋が通り、顎のラインもシャープだ。そして義弟がもっていた写真も見せてくれた。そこには丸顔で細い目の男性が写っていた。

「義弟が団子っ鼻なんですが、兄貴も同じだった、と彼は笑っていました。『数日前、兄貴に会ったとき、それとなく整形のことを蒸し返したら、リカコは知らないんだから言うなと口止めされた』って。『別に整形したのはかまわない。当時、兄貴は自分の顔にものすごいコンプレックスを持っていたから、それが払拭できただけよかったと思う。でもそれをパートナーに一生隠し続けるのは、何かが違うと僕は思った』と義弟は言っていました」

それにしても「面影」すらない変わりようだ。高校時代、リカコさんの夫は顔へのコンプレックスがますます強くなり、一時期、学校に行けなくなったことすらあると義弟は明かした。そのため、いっそ好きな顔にしてしまえばという両親の勧めもあって、半年ほどかけて「大改造」をしたらしい。

「兄貴は一年浪人して大学に入ったと言っていますが、浪人じゃなくて高校を留年しているんですと義弟は言っていました。そういう秘密があったとわかると、夫の鷹揚さが、単なる性格ではなく、自らの秘密を知られないようにするためのものなのかとさえ思えてきて」

黙っていようかとも思ったが、やはり触れないわけにはいかなかった。どうして妻の私に話してくれなかったのか、そんなに信用できないのか。その晩、リカコさんがそう尋ねると、夫は「僕の心の奥にある強烈なコンプレックスは、今もなくなっていないんだ」と力なくつぶやいた。だからそこは封印しておきたいのだ、と。

「わかったとは言ったけど、話してくれなかったことは私にとってはやはりひっかかる。このことで夫婦の関係が変わってしまう可能性もある。今、私の心が危機だと思います」

夫を嫌いになったわけではない。だが「隠し続けられた」ことがどうしても納得できない。どう考えればいいのかわからないと、彼女は小声でつぶやいた。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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