喫煙可能店に子ども連れ……2つの事例から見る飲食店選び
ファミレスや回転ずしチェーン店など子連れフレンドリーのお店であっても、当然ながら飲食のマナーは必要です。しかし、そもそもの場所選びが不適切で、そこに居合わせたお客様に迷惑をかけてしまうことも。今回は喫煙可の喫茶店に入店した子連れと、普段から子連れウェルカムな飲食店しか使わないご家庭の2つの事例に、飲食店に従事されている方のコメントを交えながら、「子連れお断り」のメッセージの難しさとともに、飲食店の場所選びについて考えていきたいと思います。
<目次>
事例1:喫煙可の喫茶店に子連れで来店、落ち着いた雰囲気が台無しに
●投稿者プロフィール45歳男性(新潟県)一人暮らし
●エピソード
ふらっと立ち寄った喫茶店。落ち着いた雰囲気で、照明も暗め。入店前にスマホで喫煙可能なことも調べてあり、各席には灰皿もありました。
しかし、そこに似合わない子連れのお客(母親2組、各々の子ども1人)が入ってきたのです。どう考えても大人向けの喫茶店でしたが、子どもたちはそんなことはお構いなし。薄暗い雰囲気も興奮のもととなったのか、ソファーの上に土足で上がり、飛び跳ねまくる。店内を駆け回り、騒がしくしています。片方の親は注意を促していますが、言ってるだけでママ友話に夢中。とうとうはしゃぎすぎた子が、机に頭をぶつけて泣き出してしまいました。
他にもう1人いたサラリーマン風のお客は、もう少しゆっくりしていきたかったような雰囲気でしたが、コーヒーをグイッと一気に飲んでそそくさと帰ってしまいました。店員もやんわり子どもを注意していましたが、効果なし。机にぶつかったときは、即座にとんでいっていました。
せっかくの落ち着いたお店の雰囲気をこわすことになるため、子連れのお客は入る店をもう少し考えてほしいなと思います。
場所選びに配慮できない家庭は、マナー違反も起こしやすい
落ち着いた雰囲気の喫茶店で起きたこちらの出来事は、明らかに場所選びがふさわしくなかった事例です。仮にたまたま通りかかって入店したのであっても、入り口に入った段階で大人向けの雰囲気だということに、気付く人は気付くはずです。気付いたのに「自分たちは大丈夫だろう」とそのまま入店したにせよ、そもそも気付かなかったにせよ、こういう場面で配慮に欠ける親は、やはりしつけの場面でもルーズなことが多い印象です。自分中心の考えが強かったり、他者目線を気にしなかったりすれば、外食時に子どものマナー違反を気に留めない行動につながりやすいのでしょう。かしこまったお店で子どもがお行儀よくすごすのは難しいことだと思いますが、「子どもなのだから仕方ない」と半ばあきらめていたり、「子どもとはこういうものだ」と親が許容し、それをそこに居合わせた人たちにも許容させようとするのは、明らかに間違いです。
一部のマナーを気にしない人たちが、この事例のようにお店の雰囲気を乱してしまう。これが「子連れお断り」のお店を増やしてしまうことにつながります。一番気の毒なのは、マナーを守って飲食しているのに、子連れだからという理由で断られてしまうご家庭です。子連れといっても実際は各家庭で違うのに、対応としてはひとくくりにされてしまうわけです。
事例2:子連れウェルカムなお店や個室のある飲食店しか選びません
●投稿者プロフィール相談者:41歳男性(東京都)
家族構成:妻(42歳)、長女(12歳)
●エピソード
もう子どもも大きくなったたため、今はそこまで気を付けてはいないのですが、子どもが小さいときはできるだけ、ファミリーレストランなど子連れが前提になっている飲食店以外には連れて行ったことがありません。PTA活動などの打ち上げで居酒屋などに行くときも、個室など一緒に参加している人の子どもたちが周りの人に迷惑にならないように配慮していたつもりです。個室の居酒屋でも子どもが寝る時間の前には帰るようにしていました。
他人の子どもの行儀などは見ると腹が立つため、逆に見ないようにしていますが、同じ子連れの親には、そういった周りへの配慮をお願いしたいです。「子連れお断り」の方針の飲食店を見かけることがありますが、その業態や客層によると思うので、お店の判断で全然よいですし、お断りされることで残念な思いをしたことはありません。
我が家はこのお店を利用していいか、という検討が大切
場所選びをしっかりしているご家庭は、親側がきちんと子連れであることに配慮して、しっかり自制しているということが伝わってくる事例です。ここまで外食先へのリスペクトができるご両親であれば、お子さんへの家庭教育もしっかりされていたであろうことがうかがえます。大人であれば、「ちょっとおしゃれなレストランに行きたい」とか、「もっと雰囲気のいいお店で食事をしたい」という欲はあるものです。でも、自分が行きたいからという理由で行ってしまうと、1つ目の事例のようなことになりかねません。
子連れで外食する場合は、その欲はいったん横に置き、「我が家はそこで大丈夫か」という検討が大切です。そしてどうしても行きたいお店であれば、大人同士で行くセッティングをするなどの工夫が適切でしょう。
事例3:マナー違反の子連れには、やむなく退店いただくことも
●相談者プロフィール相談者:38歳男性(東京都・飲食関係者)
●エピソード
「子連れお断り」は飲食店にとっても損害です。しかしそれ以上に問題なのは、品位にかける行動をする子連れの方々が増えれば増えるほど、その対策として、やむなくお断りにしなければならないお店が増えていくことです。
子どもですから泣いたりしてしまうのは仕方ない、というのはわかっています。問題は、品位にかける人のせいで、マナーを守ってお食事される方々までお断りしなければならない。その方々の子育て中のリフレッシュの場が一つ削られることになる、ということです。このような悲しいことがこれ以上増えないためにも、お客さまには最低限のマナーを守って利用していただきたく思います。
以前、そこを履き違えた子連れのお客さまがいました。子どもが店内を走り回っているのに親御さんは注意せず、危うく他のお客さまに怪我をさせそうになってしまったのです。食事の途中でしたが、他の利用者の方々が気持ちよく食事をされる場を守るために、お代も頂かずご退店いただきました。
このような品位のない方にそのよう処置をとったり、「子連れお断り」という手段をとることについては、仕方ないことと感じます。 特に、接待やデートなど静かな場所を利用したい方々のための店舗は当然のこと。いわゆるファミリーレストランとは利用目的が違う場所です。水着で買い物をしに行く人なんていない、義務教育機関で飲酒をしないなど、誰が聞いても当たり前のこれらと同じで、要はTPOをわきまえて飲食店選びをすることが、子連れであっても大人としての最低限のマナーであると思います。
本当に届けたい人に「子連れお断り」のメッセージは響きにくい
誰が聞いても当たり前のこと、要はTPOをわきまえて飲食店選びをすることが、大人としての最低限のマナーでしょう。しかし、筆者が育児支援をしていて難しいと感じるのは、本当に届けたい人にはそのメッセージが響きにくいことが多いということです。子連れでの外食は場所を選ぶことが大切というメッセージも、真摯に捉えてくださる方はもともとご自身でも実践されている方だと思いますので、その方々を窮屈にさせたくありません。一方で実際に聞いてもらいたい方は、このようなメッセージにはあまり関心がないことが多いものです。これがアドバイスを一方向で送る難しさなのです。
そのため子連れでの外食は、一部のマナー違反が子育てファミリー全体にも影響を及ぼしうることも、ぜひ知ってもらいたいものです。
今回のような喫茶店に入るか否かは、間違いなく大人が判断しているはずですから、入店する前にそれぞれのお店の利用目的を考えることはとても大事なことです。お店でハチャメチャな行動をしてしまうことが、自分たちの行動範囲を結果的に狭めることになりうることを気にかけてほしいと切に思います。
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