子供の教育

合格の切り札!入試の「過去問題集」の残念な取り組み方法TOP10【指導歴28年の元塾講師が解説】

合格に最も欠かせないアイテムである入試の「過去問題集」。今回は入試の過去問でやりがちな残念な取り組み方法をランキング形式で紹介するとともに、合格につながる秘訣を解説していきます。

西村 創

執筆者:西村 創

学習塾・個別指導塾ガイド

入試の「過去問題集」は合格に最も欠かせないアイテムです。でも、そんな過去問に残念なやり方で取り組んでしまう受験生は多いもの。

そこで受験指導歴28年の筆者が、入試の過去問でやりがちな残念な取り組み方法をランキング形式で紹介するとともに、合格につながる秘訣を解説していきます。
 

第10位:塾でやる過去問を“自宅で先に”やる

秋から多くの塾が授業時間を使って「入試過去問演習」をやる機会が増えてきます。時間を計って生徒に入試問題を解かせ、解説をして、点数を計測して記録していくのです。

講師たちは、その時期に何点くらい取れていればその学校の入試に合格できるかを、長年にわたって蓄積してきた入試演習結果のデータと照らし合わせて、今年の生徒の得点力を分析していきます。そして生徒一人ひとりの課題を浮き彫りにして、これから入試までに残された期間のなかで、その課題をクリアしていく授業計画を調整していくのです。

それなのに塾の授業でやる予定の過去問を家で先にやってしまうと、毎年同じ時期に生徒に解かせることで点数の経年比較ができたものが、できなくなってしまいます。自宅で入試演習をする際は、その学校のその年度の過去問を自宅で解いていいかを塾に確認しておくといいでしょう。
 

第9位:「最新年度」の過去問からやる

最新年度、つまり今春の入試問題は、当然、来春の入試の出題傾向に最も近いものです。ですから最新年度分は、これから入試問題に慣れていき、本番直前期に解いて合格最低点との差を確認して、合格可能性を判断するために取っておきたいのです。

それなのにまだ入試問題慣れしていない段階で解いてしまったら、最新年度の過去問を使う、一番信ぴょう性の高い合否判断をする機会を失ってしまいます。志望度の低い学校でない限り、過去問は一番古い年度から取り組むことをおすすめします。
 

第8位:「記述の採点」を講師に頼らず生徒自身でやる

記述問題の採点は難しく、お子さん自身ですると適当にマルバツや点数をつけてしまいがちです。しかし記述問題の配点は高いため、適当に採点すると合格最低点に対してあとどれくらい点数を取れるようになればいいかを正確に把握することができないんですね。

採点は、塾の講師に頼んでしてもらうのがいいでしょう。ただし、塾の講師にいきなり採点してもらうのではなくて、まずお子さん自身に自分の書いた記述と模範回答を見直させて、配点のうち何点もらえるかを予想させましょう。その上で講師が採点した点数と見比べるようにすれば、だんだん採点の精度が上がっていくのです。

また講師に頼んだ場合でも、塾の方針や講師のタイプによっては、マルバツをつけるだけでその記述のどこが何点になって、どこがダメで、どうすれば点がもらえたのか、今後似たような形式で問われたらどういうところに注意すれば点数が入るのかなどを丁寧に教えてくれないことがあります。その場合は、受験直前期だけでも個別指導塾や、添削をしてくれる家庭教師を検討するのもいいと思います。
 

第7位:実は非効率! 過去問で「満点」を取れるように復習する

過去問を、満点が取れるように復習するのは非効率的です。入試は満点を取らせないように作られています。ですから、合格者最低点より少し高めの点数を安定して取れるようになればいいのです。難問を解けるようにがんばるくらいなら、基本的な問題なのにできなかった問題、あともうちょっとで解けた問題などを復習することに時間をかけましょう。

もちろん、満点を取れる可能性が見込める公立高校の入試問題、都立高校の共通問題、高得点を取れば学費免除の特待生を狙うのであれば、満点をめざしていいですよ。
 

第6位:急がば回れ! 過去問ばかり解く

過去問は、解いていくと意外とおもしろさを感じるものです。解き終わったらすぐに結果が出ますからね。ただひたすら授業で先生の話を聞くよりも、力試しをして、点数が出て、あと何点取ればその学校に合格するかわかるのは楽しいものです。

それで、とにかくどんどん過去問ばかり解いてしまう子がいます。でも、過去問は不合格者を出すためのふるいにかけるテストですから、応用問題、発展問題の割合が多いんですね。まだ基礎が固まっていないうちに過去問を解くのは、勉強というよりただの「確認作業」です。確認作業で得点力は上がりません。

過去問で5割程度の得点を取れなければ、過去問を中心に解いていくよりも、基礎固めをし直した方が合格に近づきます。「急がば回れ」ですよ。
 

第5位:点数、解いた回数など過去問の「記録」を残さない

過去問は解いて点数を出して、その点数が合格最低点とどれくらい開きがあるかを確認し、課題を浮き彫りにするのも大きな役割です。日をおいて、また別の年度の問題を解いて、点数を出して、その点数が合格最低点とどれくらい開きがあるかを確認します。そして前にやった年度の得点と合格最低点との開きが縮まったか、むしろ広がったかを把握することで、入試までに残された期間でいつまでに何をどうやるか、合格のための計画を立てることができるのです。

そこで、過去問を解いた記録を一覧で記入できるようなノートを一冊作って、解くごとに、解いた日づけ、学校名、年度、科目、点数、合格最低点、解くのが何回目か、そして備考として「時間が足りなかった」「ケアレスミスが多かった」「記述が全然できなかった」などメモを残しておきましょう。

目標との差、その推移を把握することが、合格へのスタートラインです。
 

第4位:“具体”の問題を「抽象化」せず、具体のまま復習する

“具体”のまま復習するというのはどういうことかというと、できなかった問題の解き方を確認して解けるようになって、それで終わりにしてしまうことです。本当の復習は、できなかった問題の解き方を確認して、解けるようになってからが始まりです。

本当の復習とは、目の前の問題を解けるようになったら、そもそもこの問題はどんなことを試す問題で、この問題はどんな問題のパターンに分類されるかを理解すること。目の前の具体の問題を「抽象化」し、一段上のレベルで理解することで、次に似たような問題、いわゆる類題が出されたときに対応可能になるのです。

復習してもできるようにならない子は、その問題が解けるようになったら、それで満足してしまいます。しかし過去問の問題が、当日の入試で全く同じかたちで出題されることはないでしょう。だとしたら、目の前の問題を材料にして、その問題に似た傾向、同じパターンの問題を解けるようにしておくのが、合格につながる復習というものです。

ちなみにこの、具体のまま解決して終わりにしない、問題が発生したときにその問題を俯瞰して捉えて、もう同じ次元の問題を発生させないというのは、大人になってからも役立つ考え方ですよね。
 

第3位:時間を測らずにやる

入試は制限時間との勝負です。限られた時間のなかで要領良く解く必要があり、その要領をつかむトレーニングが、時間を測って過去問に取り組むことなんです。要領良く解くためのトレーニングとは、「時間配分の効率化」と「問題を解く順番の目安をつけること」です。

入試問題は、昨年度までとがらっと出題傾向が変わることは稀です。だから過去問を使って、どの問題にどれくらいの時間を使い、どういう順番で解くのがいちばん点数を取りやすいかをシミュレーションしておくのです。

タイマーを用意して、残り時間を確認しながら問題を解いていく必要がありますが、集中しすぎると時間を確認するのを忘れてしまうことがあります。そこで、キッチンタイマーを3個ほど用意しましょう。制限時間が50分であれば、25分、47分、50分にセットすれば、節目の時間にアラームが鳴り、自分の解くペースと残り時間を把握することができます。時間感覚が身についてきたら、だんだんタイマーの数を減らしていけばいいのです。

さらに、制限時間を過ぎた後も、すべての問題を解き切るまで続けて、過ぎて解いた答えは「青ペン」で解答用紙に書き込んでいきましょう。後から採点するときに、制限時間内に解いた点数と、時間無制限で解いた青字の答えを別々に計算した点数を出すと、次に過去問に取り組むときの戦略を立てやすくなります。
 

第2位:漢字だけ、計算だけ……過去問を部分的に解く

国語は漢字の読み書きの問題だけ、算数は最初の計算問題だけやってみた、というつまみ食いのような取り組みは最悪です。部分的に問題を解くだけでは、合格点との差がどれくらいなのかがわからなくて、何をいつまでにどれくらいできるようにすればいいのか、計画を立てられませんからね。

過去問の取り組みでは、時間を測って、すべての問題を解き切って、点数を出したいのです。それも、できれば全科目通して解きたいものです。1科目だけ解いて、2科目目はまた次の日に解くとなると、点数は取れやすくなってしまいます。入試本番では、10分、20分の休憩をとりつつ、全科目連続して解くことになります。3科目目、4科目目と解き進めると、集中力が削られた状態で解くことになるので、ケアレスミスをしやすくなり、当然、点数も出づらくなります。

だから過去問を解く際は、本番の入試にできるだけ近い状態で取り組むと、より信ぴょう性が高い合否判断が可能になります。徹底するなら、土日など学校がない日に、朝から本番と同じ試験時間で解くと、さらに本番に近い点数になりますし、本番の訓練になります。

ただし、復習は別です。これまで解いた各年度の問題の中から、たとえば計算問題だけ、論説文だけ、生物分野だけ、地理分野だけ、国語の論説文の傍線部の理由を答えさせる問題だけ、などを拾って見直すことで、その問題特有の解き方パターンを把握しやすくなります。
 

第1位:解き直しをしない

過去問は、解いて、採点して、解説を読みながら復習して終わり……ではありません。そこからが始まりです。

志望度の高い学校の過去問は一度解いて復習したら、数日後に2回目、また数日後に3回目とくり返し解いて、合格最低点プラス10点を目指しましょう。問題の解き方は、もう飽きるほど完全にマスターしているという状態をめざしたいものです。

答えを覚えていてもいいんです。解き直しで試したいのは、どんな答えだったかという知識だけでなく、「解き方」を理解しているかです。「なぜ、その答えになるのか」ということを理解しているかを試すために解き直しをくり返す必要があるのです。

特に第一志望校の年度の新しい過去問については、最低3回は解いて、時間配分、問題を解く順序、問題の解き方を熟知して、その学校の入試問題の“専門家”をめざしましょう。そうすれば、模試の合格判定がたとえ不利な結果だとしても、その学校の入試問題では合格点を取ることが不可能ではなくなるでしょう。

今回は、入試過去問の残念な取り組みを紹介しました。過去問を効果的に活用して、行きたいあの学校への合格を手にしてもらえたらと思います。

 
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