高齢者二人以上世帯はそもそも家賃を負担していない
まずは表をご覧ください。総務省「家計調査(2021年)」から、二人以上の世帯のうち無職世帯の収入と主な支出の内訳をまとめたものです。高齢者世帯に限定はしていませんが、世帯主の平均年齢が70歳を超えているので、多くは高齢者世帯と考えられます。世帯の住居を「持家」「民営借家」「公営借家」に分けて載せているので、家賃負担の有無による支出の違いも確認できます。 無職二人以上世帯の1カ月あたりの平均実収入は24万4175円で、そのうちの19万2012円が公的年金となっています。実支出が26万1813円であることから、毎月1万7638円の赤字になっています。無職二人以上世帯では持家率が90.8%にもなります。平均74.7歳の世帯ではほとんどが家を所有しているので、家賃を払う必要がありません。ちなみに、持家の土地家屋借金返済は3776円なので、多くの世帯では住宅ローンを既に払い終わっていると考えられます。若い頃から計画的に準備してきたことで、老後の生活では家賃もローンも払わずに済むようになったのではないでしょうか。
持家率が90.8%なので、借家の割合は民営借家と公営借家を合わせても9.2%しかありません。持家と借家で世帯主の年齢に大きな差はありませんが、実収入では大きな差があります。民営借家の実収入は19万7316円で持家に比べて5万2532円少なく、公的年金に限れば7万929円も差があります。
公営借家の実収入は17万8372円で民営借家よりさらに少ないですが、公的年金は13万5781円で民営借家より8504円多くなっています。公的年金の給付額は、年金保険料の納付実績や標準報酬額に連動しているので、持家世帯の方が公的年金が多いのは、借家世帯に比べて高所得だった可能性が高く、所得が高いのに借家暮らしをしている世帯は意外と少ないかもしれません。
実支出は持家が26万7463円、民営借家が21万8420円、公営借家が19万2481円で、いずれも実収入をわずかながら上回っていますが、収支のバランスはそれなりに取れています。
家賃(地代を含む)は民営借家で4万4112円、公営借家で2万6832円なので、実支出に占める割合は20.2%と13.9%になります。家賃が家計の負担になっているのでしょうが、食料や光熱・水道等、あらゆる支出を抑えることで、何とか帳尻を合わせているように見受けられます。逆に考えれば、持家の世帯が、借家の世帯と同程度に支出を抑えられれば、毎月かなりの貯蓄ができそうです。
単身の公営借家世帯の消費支出、家賃以外は月10万円しか使っていない
単身世帯についても、1カ月あたりの支出内訳を確認してみましょう。統計内容の違いから二人以上世帯の表とは前提条件や調査項目が違います。単身世帯においても高齢者だけの集計ではなく、特に民営借家は年齢が45.6歳で持家や公営借家と比べて20歳程度若くなっています。また無職世帯に限定していないので、勤労者世帯も含まれます。 単身世帯の持家率は56.1%なので、半分弱の世帯が民営借家か公営借家に住んでいます。消費支出(実支出から非消費支出を除いた支出)は持家が14万3875円、民営借家が17万9795円、公営借家が12万4352円で、民営借家の世帯が最も多く支出をしていますが、年齢が40代で若いことから、勤労による収入があり消費意欲も比較的旺盛なのでしょう。民営借家は家賃(地代を含む)が5万1472円で公営借家の2倍以上も支出していますが、これも年齢による違いが大きいと考えられます。公営借家の家賃は2万3006円で消費支出に占める割合は18.5%になります。二人以上世帯の場合は15.2%なので、単身世帯のほうが家賃の負担が大きいことがわかります。
老後に年金から家賃を払って生活していくのは大変なので、老後になる前に、準備しておきたい
老後はお金の心配をせずに好きなことをしていたい
持家率をみてわかる通り、多くの世帯は家を所有しているので家賃負担がありません。このことから、老後も暮らしていける家を持つことが老後の生活を成り立たせる有効な手段の一つといえます。また、二人以上世帯の方をみると、持家世帯の方が公的年金の受給額が多いことから、公的年金を増やすための努力をすることも手段の一つとなります。そして、単身世帯より二人以上世帯の方が支出に占める家賃の割合は低いので、一緒に住む人がいると収支は多少楽になります。50代くらいからは、自分の将来(老後)について考える時間を積極的に作っていくようにしましょう!
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