新型コロナ第7波の今、医療現場で起こっていること
新型コロナ第7波。限られた医療資源を、社会全体で適切に使う工夫が今求められています
多くの医療関係者は、麻疹、風疹、おたふくかぜ、水疱瘡の抗体価を検査し、自分がかからないよう、また、人に感染させないような状況を作っています。インフルエンザワクチンも毎年集団接種を受けますし、新型コロナウイルス感染症に対しても3回接種が行われてきました。
とはいえ、ワクチンを受けたから感染がゼロになるわけではありません。インフルエンザウイルスや新型コロナウイルス感染症のSARS-CoV-2ウイルスのように遺伝子変異によって感染力が変わってくるタイプの感染症に対しては、ワクチンの効果は続かず、低下していきます。現在、新型コロナウイルス感染症流行の第7波が社会で流行していますが、病院だけは例外ということはありません。同様のことが病院内でも起こっているのです。
医療従事者は普段から気をつけていますが、多くの人がどこで新型コロナウイルス感染症になったか解らない状況ですので、当然医療従事者も感染してしまうことがあります。私自身も新型コロナウイルス感染症の診察にあたっていますので、仕事中に感染する危険性も常にあるわけです。そして、感染した医療従事者が勤務するわけにはいきませんし、濃厚接触者になった場合は自分が無症状でも患者さんに感染させてしまうリスクがあるので、やはり勤務できなくなります。
すると、病院に勤務するスタッフが足りなくなります。感染症の大流行時、受診する患者さんの数が増える中で、通常の半分の医療従事者で対応しようとすると、どうなるでしょうか? 平時と同じような医療を提供することが難しい状況が、実際に全国あちこちの病院で起こっています。
限りある医療資源の考え方……重症者やハイリスクの人を守るために
新型コロナウイルス感染症の流行前や、感染者数が少ない時期であれば、ちょっとした体調不良でもスムーズに医療機関を受診できたかもしれません。しかし、例えば、医療従事者3人で1時間に10人診療している病院で、医療従事者が1人になってしまった場合、1時間に10人診療することは難しいです。待ち時間も増えます。第7波の中では、病院内の院内感染対策を徹底しながらの診療になりますので、通常の診療よりもさらに時間がかかります。本来であれば、体調不良で不安なときは、誰でもすぐに安心して病院を受診できるような医療体制が整っているのが望ましいことはもちろんです。しかし今、体調不良の程度を自己判断しなくてはならない状況が起きています。本当に病院を受診しなくては命にかかわるような深刻な症状の人や、リスクの高い持病を持つ人を社会全体で守っていく意識も必要な状況です。
例えば高熱は、持病のない人にとっても辛い症状でしょう。しかし発熱は病原体と戦うために免疫を高める防御機能です。高熱で辛い場合は、発熱の症状を抑えるための対症療法として、医療機関を受診しても解熱剤で様子を見ることになります。新型コロナウイルス感染症で重症化しないか、心配になることもあるかと思います。自分のことは自分でわかればよいのですが、体調が優れないと不安になることもあるかもしれません。
病院に行くべきかどうかは、持病の状態、食事や睡眠の状況、水分摂取の状況、呼吸の状態、新型コロナウイルス感染症が疑われる場合は経皮酸素濃度測定器(SpO2)の値などを総合的に見て、すぐに行くべきかどうかを判断することになります。
自分では判断が難しい「トリアージ」……救急医療相談などもうまく活用を
トリアージとは、重症度や治療緊急度に応じた「傷病者の振り分け」のことを言います。限られた医療状況で、治療にあたる優先度を考えなくてはならない災害医療などで行われます。本来、トリアージは医療関係者が行います。自分自身の状態を軽症か重症か、治療の優先度が高いかどうかを判断するのは難しいです。仮に実際には必要がない状況で救急車を呼んでしまった場合、その間に重症者の救急搬送ができないこともありえますので、辛い症状がある場合も判断に悩む方は少なくないかもしれません。
この解決法として、まず救急電話相談をするのが1つの方法です。♯7119にかけることで、救急車を呼ぶべきかを相談することができます。また、この救急電話相談の回線も限られていますので、感染症の流行時はできるだけ短時間で相談できるよう、要点をまとめて伝えられるとベストです。
- いつから、どのような症状なのか
- 呼吸は苦しくないか
- 周りに新型コロナウイルス感染症の感染者はいるか
- 食事は取れているか
- 水分は取れているか
- 睡眠は取れているか
- 基礎疾患の有無
- 計測器が家にあれば、体温、血圧、血中酸素濃度、1分間の心拍数(手首で1分間数えた数)、1分間の呼吸数(1分間息を吐いて吸った回数)
♯7119以外にも、その地域専用の救急電話相談を開設している自治体もあります。一か所だけでは繋がりにくくなるケースも想定し、備えとして複数の相談先を確認しておくのもよいかと思います。