実在の人物がモデルの役を、自由にのびのび演じられる喜び
――役作りとして、松尾さんのご家族に会ってお話を聞いたりする機会はあったのでしょうか?仲野
ご家族にはお会いしていないのですが、松尾さんとはクランクイン前に一度、食事に行きました。松尾さんは「自由に演じてほしい」と言ってくださったので、脚本を読み込んで役作りをし、井上監督とも相談しながら、“松尾諭”ではなく、役名の“松戸諭”として魅力的なキャラクターになるように意識しながら、自由に演じさせていただきました。
伊藤
私は、クランクイン直後くらいに、松尾さんのご自宅に伺って、ご家族にお会いする機会をいただきました。奥様は、とても可愛らしくてさっぱりした感じの素敵な方です。でも結の役は、脚本にしっかり描かれているので、奥様を演じるというより、雰囲気を参考にさせていただくという感じですね。
奥様は松尾さんのことが大好きで、恋人みたいな夫婦関係を築かれていたんです。その姿が素敵だなと思ったので、おふたりの関係性の軸をぶらさずに演じれば、きっとうまくいくと思いました。 ――妻役を伊藤さんが演じることについて、奥様と何かお話しされていましたか?
伊藤
「奥様が見たら、どう思うだろう」ということは考えていたので、お会いしたときに、お伺いしました。そしたら、奥様は「まっつん(松尾さん)が、この小説を書いてくれたことが最高のギフトで、自分の中では完結しているから、純粋にドラマとして楽しめると思う。沙莉ちゃんは自由に演じてください」と言ってくださったんです。だから安心して撮影に臨むことができました。
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