休み明け行き渋りする息子
集中力があり、宿題は早めに終わらせるタイプ。授業が退屈だからと「学校に行きたくない」という息子
今回はAll About編集部で募集した小学生の登校しぶりのエピソードの中から、「学校の授業が退屈で面倒くさい」という理由による行き渋りと、「もしかして仮病?」と思わせる体調不良によるものの事例を2つご紹介し、それぞれ対応策を見ていきたいと思います。
<目次>
事例1:欠席させたのは正解? 授業が退屈で学校に行きたくない息子
【事例】昨年の話ですが、夏休みが終わる2日前から息子が「もう学校に行きたくない」と言い出しました。宿題は全て終わっていたし、友だちと嫌なことがあったわけでもありません。登校しぶりの理由は「授業が退屈だから面倒くさい」というものでした。学校では先生が決めたことを決められた時間にするのが苦痛とのこと。
例えば「国語の授業が一番退屈。ただ文章を読んで書き取りをしているのがつまらない」と言います。今まで自分の気持ちをはっきり言うことがあまりなかったのでびっくりした反面、伝えてくれたことへの嬉しさもありました。
夏休み明けに3日ほど欠席しましたが、その後は学校に通いました。学校に行くのか行かないのかは子どもが決めることだと思い「行きたくなったら言ってね」という言葉をかけました。無理矢理行かせてもつらいだろうなと思って、子どもの気持ちを整えることを優先したつもりです。また先生が連絡帳に書いてくれた「待っているよ」というシンプルな言葉も良かったのではとも思っています。
大人でも会社を休みたくなるときがあるため、子どもも同じ。毎日頑張っているため休息も必要だと思います。その後も、自分から「行く」と決めて登校した日は清々しい表情で帰ってきます。休むことでまた元気に行けるのであればそれでいいと思っています。(相談者38歳 女性)
学校を休ませることにより、余計に行きづらくなるケースも……
お子さんは「先生が決めたことを決められた時間にするのが苦痛」とのこと。たしかに学校では時間割やカリキュラムという枠があり、授業内容によっては好みや得手不得手がきっとだれでもあるように思います。私たちは、自分が取り組んでいるタスクが簡単だと単調だなと感じやすく、少し刺激のある内容の方がモチベーションをもって取り組めるものです。このお子さんは夏休みの課題も通常の宿題も早めに終わらせるタイプとのことで、学習内容の平易さも「面倒」と感じてしまった理由なのかなと思いました。
無理やり「行きなさい」とは言ったことがなく、子どものリズムに任せているということですが、この子の場合はそれがうまく作用しているようですね。ただこのパターンを誰もがそのまま同じようにしても、うまくいかないということもあるでしょう。
不登校は一般的に「行きなさい」と言って行けるようになるものではないという点では共通していますが、学校に行けるようになるきっかけは子どもそれぞれで違うものです。行かない日が増えるにつれて授業に追いつけなくなったり、余計に行きづらくなったりすることもよくあるため、学校と連携をとって向き合っていくことが大切です。
事例2:もしかして仮病?午後になるとケロッとしてゲームをやる息子
お腹が痛いといって学校を休んだものの、午後は元気にゲーム
2021年の夏休み明け、小学1年生だった長男が突然「お腹が痛い、頭がクラクラする」と言い出しました。前日に少し元気がないとは私も思っていましたが、自分から身体の調子が悪いと言い出したのはこのときが初めてでした。2学期の始業式の日ではあったものの、親としてはすごく心配になり、学校を休ませて近所の小児クリニックに連れていきました。もしかしたらコロナに感染したのではないかという不安もよぎったのですが、熱は36.0℃と平熱で咳も出ていませんでした。
午後になると息子は具合が良くなったといってゲームをはじめてひと安心。ところが翌日の朝になるとまた身体がしんどいと訴えかけてきて、ここでようやく登校しぶりを起こしていることがわかりました。
息子には「仮病を使って学校に行きたくないんでしょ!」「学校に行くのがあなたの仕事よ!」など責めるような言葉をかけてしまっていました。仮病を使って学校に行きたくないようだと担任に報告をしたところ、息子がクラスの中でいじめにあっていないかなどを注意深く観察をすると言ってくださいました。幸いいじめを受けている様子もなく、単に息子自身が登校することを嫌がっていただけのようです。(相談者35歳 女性)
気持ちの揺れを言語化するのが難しく、親をだまそうという意図はない
結果的に「登校することを嫌がっていただけ」とのことで、その理由として体調不良を訴えたようですね。学校の先生も真摯に向き合ってくださり、事なきを得てなによりでした。子どもの行き渋りの理由は実にさまざまですが、このケースのように「もしかして仮病?」と思われる場合、親の心境はとくに複雑になりがちです。実際にこの方も病院に連れて行っていますが、子どもから体調が悪いと言われれば、当然ながら親は心配になります。一方で午後からケロッとしてゲームに興じている姿を見ると、「もしかして仮病?」という思いがよぎることに。
「心配させたのに、あれはウソだったのか」――こういう腹立たしさが出てくるのが他の行き渋りとは違う部分で、学校に行かないという問題とは別に「子どもがウソをついた」「親をだました」という悩みも生じてしまうのです。
ただ小さいうちは、自分の体の不調を明確に感じ取りそれを言語化するのは、まだ難しいものです。目の前に大きな壁(この子の場合は新学期の初日)を感じると、ドキドキしたり、腰が上がらなかったり、憂鬱になったりすることは大人でもありますが、そういう気持ちの揺れが子どもには体調不良のように感じられてしまうことはあるように思います。
つまり親をだまそうというような意図はなかったのではということです。
また今回のケースのような、朝は体調が悪いのに午後になると元気が出てくるという状況がもし続く場合、起立性調節障害という病気からくる症状の可能性もあります。学校に行く時間帯の不調ということで、「やる気がない」とか「仮病を使っている」と誤解されることも多い疾患なのですが、実際に自律神経の調節が乱れることで、朝はたちくらみやめまいで起きられないとか、起きてからしばらくは食欲が出ないというような不調が出てしまうのです(国立成育医療研究センター「子どもの心の診療に関する用語集」より)。もし「仮病かも」という状態が続く場合は、一度医師に相談するのもいい判断だと思います。
親が諦めてしまったら、子どもの力だけでは改善に向かいにくい
今回は2つの事例の登校渋りを扱いました。行き渋りにしても不登校にしても、その理由については本当にさまざまであり、必然的に対応策もその子それぞれ変わってくるため、一例として参考にしていただくのがいいでしょう。ただどんな場合でも共通していえることは、親が働きかけを諦めてしまったら、子どもの力だけでは改善には向かいにくいということです。
「子どもが行かない以上、どうにもできない」と感じている場合であっても家庭内の絆を強くしたり、親子のコミュニケーションを増やしたりという取り組みはできると思います。「安全基地としての家庭」を意識的に機能させることで、プレッシャーを緩和したり、勇気が湧いてきたりと一歩を踏み出すきっかけになることはよくあるため、できる働きかけをぜひ続けていってほしいと思います。
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