ホテル業界が販売価格を引き上げたいもう1つのワケ
なお、コロナ禍で大きな環境の変化を迎えてきたホテル業界では、一部、業界全体として販売価格を引き上げようという声が出てきている。宿泊業の賃金は一般的に低水準といわれているが、そのような問題を解決していくためにも必要という一面からは確かだ。もちろん高く売りたいのはホテルに限らず、ではあるが、無論、市場が決めるものであることはホテルの料金も同様。インバウンド活況時にホテル不足が叫ばれる中で非常識な料金設定をしたホテル、東京オリンピックに際してとんでもない値上げをしたホテルなど……忘れられない記憶として残っているが、半面、コロナ禍で販売価格が低調というのもまさしく市場をあらわしている。安いことは良いことという一側面だけにフォーカスするのは総体的には正しくないが、旅行者がより安さを追求することは当然。各種予約サイトの盛況もそれを示している。
価格の引き上げについて、業界団体等が具体的な値上げ(額)を施設らへ要請するなどは不正競争防止法から問題となるものの、そもそも日本ならではのホテル業界の環境を見るに、全体としての引き上げ傾向への移行は一筋縄でいかない部分があることは確かだ。あっちが上げればこっちは下げる。ただし、いずれにせよ消費者の立場としては、キャンペーンをきっかけとし実質的な値上げという動きは念頭に置く必要があるだろう。
9月以降に延期となった全国旅行支援であるが、県民割の継続なども勘案しつつ、ホテルによってはそれをカバーしようとすべく魅力的なプランの打ち出しも見られる。行く行かないは別として、キャンペーン開始前と開始後のお気に入りホテルの料金設定を定点観測的にチェックしておくと興味深い結果を得られるかもしれない。
参考
※1:国土交通省 観光庁公式サイト(https://www.mlit.go.jp/kankocho/news06_000560.html)