60歳以上の「シニア世代」の生きがいとは?
シニア世代について、はっきりした年齢の定義はありません。現役で働いている55歳以上をシニア世代という説もあれば、WHO(世界保健機関)では65歳以上をシニアといっています。が、おおむね60歳以上をシニア世代、70歳以上をシルバー世代と呼ぶようです。シニア世代はどんなことにお金を使うと、生きがいを感じる?
内閣府の「高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査(令和3年度)」の「現在どの程度、生きがい(喜びや楽しみ)を感じているか」という問いでは、60~64歳の男性71.6%、女性85.2%、65歳~69歳の男性79.5%、女性77.8%と大半の人が十分に、あるいは多少なりとも生きがいを感じているという結果が出ています。
高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査(cao.go.jp)
60代の友人・知人に「生きがいを感じるお金の使い方」を聞いてみました!
シニア世代は独身、配偶者と二人暮らし、親との二世帯、子どもとの二世帯あるいは三世帯、四世帯の大家族で暮らす人、孫がいる人、いない人、いろいろな境遇の人がいます。そこでシニア世代である筆者の友人・知人に、生きがいを感じるお金の使い方について聞いてみました。●アナタが生きがいを感じるお金の使い方って?
◆自分のため編
・家事労働を少なくするための家電(例えばロボット掃除機、洗濯乾燥機、食洗機等)の購入
・長時間家で過ごすようになったので、できるだけ快適に過ごせるようにリフォームする
・好きな仕事を続けていくための自己投資(書籍購入や定期的な美容院代)
・押し活で自分が好きなスターのグッズを買いそろえ、全国ツアーにも行く
・サブスクリプションを利用して、映画、音楽、読書を存分に楽しむ
・健康を維持するため、食事やスポーツクラブにお金をかける
・歯の健康のため、定期的に歯科医のチェックを受ける
・趣味の教室に通ったり、仲間と旅行したりする
◆人のため編
・離れて住む子どもや孫に、定期的に宅配便を送る
・近くに住む子どもや孫に、料理を手作りして届ける
・友人や家族との外食、大切な人へのプレゼント
・孫への誕生日やクリスマスのプレゼント
・子どもが家を買う援助をする
・孫の教育費の援助をする※
このようにさまざまな意見が出ましたが、「自分には遺す人がいないので、物は買わずにできるだけ処分するようにしている。でも自分が成長していることを実感したくて習い事にはお金をかけている。例えばピアノやダンスを子どもの頃からやっていたとして、老化には勝てないけど、60歳から始めたら、61歳、62歳、63歳……と上達していく、それが楽しみ」という意見は心に残りました。
※ちなみに家を買う援助や孫の教育費の援助には、下記非課税制度が使えます。
・「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」等のあらまし/国税庁より
・祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度のあらまし/国税庁より
シニア世代の筆者の場合は、嫁いだ娘のためにエレクトーン購入の援助をすることにしました
また私ごとになりますが、嫁いだ娘が最近エレクトーンという趣味をみつけ、楽器をレンタルし、エレクトーン教室にも通い出しました。子どもの頃、ピアノを習わせていましたが、自分から習いたいというのは初めてなので、かなり本気のようです。娘は給与からの天引き預金、つみたてNISAなどで資産形成を始めたところで、貯まったお金でエレクトーンを買おうとしていました。しかし、せっかくお金が貯まってきたのにエレクトーンを買うことで振り出しに戻るのはもったいないと思い、私は夫と話し合い、娘のエレクトーン購入の援助をすることにしました。
娘は、新しく届いたエレクトーンと、楽譜の読み込みができるiPadを駆使していろいろな楽器音で「弾き放題」を楽しんでいるようです。娘の幸せそうな様子を見て、親の方も幸せな気持ちになります。
まとめ
生きがいを感じるお金の使い方というのは、お金を使ったあと幸せな気持ちになる使い方ではないでしょうか。また、人は与えられるより与える方が幸せ(「与えるは受けるより幸福なり」/出典:『新約聖書』使徒言行録20章35節)といいます。
シニア世代は体力も記憶力も若い人にはかないません。シニア世代の良い点は、繰り上げれば60歳から、通常は65歳から年金がもらえるようになり、働かなくても安定的な収入が得られる点でしょうか。そしてリタイアしたり、働き方を緩くすれば使える時間も増えます。
しかし時間は無限にあるわけではありません。特に自分の親と過ごす時間はそれほど多くはないでしょう。遠方に住んでいればなおさらです。
シニア世代は子どもの教育費がかからなくなり、住宅ローン等も終わっていれば、自分のためにお金が使える世代です。親と過ごす時間、家族や友人と過ごす時間の一瞬一瞬を大事にしながら、幸せな思い出をたくさん作っていきたいものです。
監修・文/辻村洋子(CFP(R)認定者・1級FP技能士)
損保会社を定年退職後、ファイナンシャルプランナーに。「お金は人生を豊かにするためのもの」をモットーに、セカンドライフを充実させたい人への家計改善、老後資金の準備、遺言・相続などに関する相談を得意としている。お金の寿命をのばす専門家として相談者の不安や悩み相談を受けている。
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