赤ちゃんの行事・お祝い

もらってはお返ししての「出産祝い・内祝い」無限ループにモヤッ…「お返し文化」はなくなるべき?

贈答文化は昔からの日本の慣習でしたが、All About編集部が行った「出産内祝い」のアンケートでは「もらって返しての無限ループで煩わしい」「もう内祝いという文化は廃れるべき」などという声が寄せられました。「お返し文化」は時代とともに変わるべきなのでしょうか。

中山 みゆき

執筆者:中山 みゆき

冠婚葬祭ガイド

日本は昔からの慣習として贈答を交わす機会が多く行われてきました。しかしAll About編集部が行った「出産内祝い」についてのアンケートでは、「もう内祝いという文化は廃れるべき!」「もらって返しての無限ループで終わることがなく煩わしい」などという声も寄せられました。

考えれば考えるほどややこしい「お返し文化」ですが、時代とともに変わるべきなのでしょうか。残すべきなのでしょうか。
 

昔と違ってきている現代の「内祝い」、本来の意味や由来は?

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内祝いの「内」とは「家」のこと。自分の家のお祝い事のときに慶びをおすそ分けするという意味。現代はお祝いをいただいた方に対してのお返しと考えるようになっています

まずは内祝いの由来や本来の意味を確認しておきましょう。「内」とは「家」のこと。自分の家のお祝い事のときに慶びをお裾分けするという意味で、いただいていなくても周囲の人に品物を贈っていたそうです。

その中でも出産の内祝いに関しては、昔は赤ちゃんが生まれたご報告とあいさつを兼ねて、お世話になった人を家に招いてお披露目のお祝いをしたり、お宮参りをすませた帰りにお赤飯や紅白のお餅を親類や近所に配っていました。

当時の生活スタイルは、赤ちゃんが生まれるとご近所さんたちも含め周囲の人間を巻き込んで子どもを育てたのでしょうね。そう考えると、お祝いをいただかなくても周囲の人に品物を贈ることは、これからも何かあればよろしくというあいさつ代わりだと納得できます。核家族化が進んだ今では考えられないかもしれませんが、ともに喜び、ともに祝うという習慣です。

そういった内祝いが、時代とともに考え方が変わっていき、現代はお祝いをいただいた方に対してのお返しと考えるようになってきました。もちろん住む地域によっては、お菓子やお赤飯を持参して、ご近所やこれからお世話になる方へ贈るという風習も残っているかもしれません。
 

出産内祝いの負担を減らすためにできることは?

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出産前にお返しの贈り先の住所整理をしておく、品物リストを作っておくなどしておくと負担が減らせる

また寄せられたアンケートの中には「出産の内祝いを産後2、3カ月くらいの時期に送らないといけないのは少ししんどい」「出産直後は眠る時間もほとんどないような中、手配するのは大変」という声もありました。

中にはパパが積極的に協力してくれるケースもありますが、出産したばかりのママが準備してお返しすることが多いのが現状のようです。

そこでご提案があります。出産から産後100日まではイベントが目白押し。出産後は赤ちゃんの世話だけでも忙しい上、母体の体調もまだ回復していません。だからこそ妊娠中に内祝いのカタログをチェックしたり、お返しの贈り先の住所整理をしておくのはいかがでしょうか。また里帰り中に自宅にお祝いが届いていたら、贈りもれのないよう品物リストを作ってしっかりとチェックする手もあります。

また品物を返す内祝いだけでない方法もあるでしょう。母子ともに落ち着いたころを見計らってホームパーティを開き、親しいママ仲間をご招待し、幸せのお福分けとして赤ちゃんのお披露目を兼ねての内祝いもよいかもしれません。
 

「半返し」が基本のお返し文化、現代事情は?

お祝いを頂いた相手へのお返しは、昔から「半返し」が基本とされてきました。例えば現金や品物を頂いたなら、その半分相当になる品物をお返しとしてもらった相手へ贈るという慣習であり、儀礼とされてきたのです。

しかし「物入りで大変なときだからこそ、何かに役立てて欲しい」「困ったときは皆で助け合いましょう」と贈ったはずが、反対にお返しによる金銭を負担させてしまうという、本末転倒な話にもなってしまいかねません。

寄せられたアンケートにも「せっかくのお祝いなのに、お返しがあると双方にとって負担だしお金と時間の無駄」、また「職場の人が多かったので、結局いただいたお祝いに対し半返し以上でお返しをすることになった」という声などもありました。

しかしだからといって「お返しをしない」という選択は、今の日本の慣習では「非常識」と捉えられても致し方ないともいえます。親しい間柄でこそ成り立つものなので、相手との関係、ケースバイケースで考えてみることが大切です。
 

お返し文化はなくなるべきなのか

日本は昔からの慣習として、慶事や弔事、行事や記念日、お中元やお歳暮などにおいて贈答を交わす機会が多く行われてきました。その際のお返し文化「内祝い」の本来の意味を正しく理解すると現代事情とは少し違うことがわかります。

そもそも「贈答」の「贈」は贈る、「答」はお返しの意味があります。古くからこの「贈答」の慣習を大切にしてきた日本人の間で、無駄だからという理由でそうやすやすと廃止することは難しいでしょう。慣習を受け継ぎながらも、現代ならではの方法を考えていくのがよいのではないでしょうか。

例えば親しい間柄でこそ成り立つものとして、結婚や出産が同時期でお互い様のような立場なら、お互いに欲しいものを選んで「お返しなしのお祝い」を贈ることもできるでしょう。特に甘えることができる家族や親しい友人には、気遣いをする必要はありません。

「お祝いなのにお返しがあると双方にとって負担」という考え方も否定できません。忙しい現代では無駄なことはできるだけなくすのは正解かもしれません。しかし完全になくしてしまうのは、今までの贈答の歴史も否定してしまうことになってしまいます。

古くからの慣習にはマナーもたくさんあり、考えれば考えるほど日本のお返し文化は「煩わしい」と思われてしまうのも理解できます。しかし筆者はマナーの専門家として、お返し文化は廃れるものではないと思います。それは日本人の「おもてなしの心」からくるものだからです。日本人が古来培ってきた人間性は簡単には変えられないのではないでしょうか。

とはいえ良いところを残しつつ、無駄なものは省略していくのも今後必要になってくるかと思います。完全になくすのではなく、昔ながらの人との繋がりを大切にしつつ、時代に合わせて変えていくのも一つの方法だと思います。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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