「トレパク」の意味は?
ネットで嫌われる「トレパク」とは?(画像出典:いらすとや)
なお、「トレース」は元の絵に重ねてなぞることで、「模写」はお手本を見ながら真似して描くことという違いがあります。
トレースも模写もそれだけでは問題はなく、たとえば絵の練習のために模写やトレースをするのはまったく問題ありません。むしろ、絵の技術を学ぶときに、先人の模写やトレースをするのは当たり前のことです。
YOASOBIイラストレーターのトレパクが炎上
トレースしていても、著作権者から許諾を得た上でなら問題はありません。また、トレースを明らかにした上で参考にした元の作品を示していれば、まず問題になりません。一方で、トレースであることを隠して自分の作品と偽っていたり、販売するなどして利益を得ている場合は、バッシングされ、著作権および肖像権などの侵害に当たる可能性もあります。
たとえば最近では、YOASOBIのキービジュアルを担当したイラストレーターの古塔つみさんの「トレパク」が問題になりました。古塔つみさんは、既存の写真などをトレースした絵を販売、利益を得ていたことが問題視され、炎上しました。
イラストレーター・古塔つみさんの公式Instagram(@cotoh_tsumi)より
その結果、古塔さんの刊行済みの作品集は出荷停止、コラボTシャツも返品、オンライン注文のキャンセルを受け付けるなど、販売商品にも大きな影響が出ました。
その他にも、古塔さんがアパレルブランド「ANARC」のTシャツやパーカーに提供したイラストも、大友克洋さんの漫画『AKIRA』に登場する主人公金田のバイクのデザインとそっくりと指摘されるなど、トレパクを疑われる事例が多く見つかる状態となっています。
炎上が広がった結果、古塔さんはTwitterアカウントを削除しています。
ネットで元ネタ、トレースの検証は容易
古塔さんの場合、写真とそっくりなイラストが多く見つかりましたが、写真も著作物です。写真を元にトレースしてイラストとする行為は、やはり著作権侵害に当たるのです。写真を見ながらでなければ描けないという人も多いですが、その場合は、自分で写真を撮影し、それを見ながら描けば問題ありません。そのようにあらかじめ資料を撮影し、それを見ながら作画をしている画家や漫画家も多いようです。
トレパクはネット上で嫌われています。ずるい、裏切られたと感じる人は多く、アーティストなどが一度疑われると、そのイメージが付きまとうことになります。
ネットが普及した今の時代では、過去の作品などもすべて検証対象となります。画像検索で元ネタを見つけたり、画像を重ねたり反転させて検証することも簡単です。疑いがあれば、検証するまとめサイトが作られたり、SNSで拡散されて騒ぎが大きくなります。
モチーフや構図、タッチなど、既存の作品と偶然似てしまうことはいくらでもあります。まったくオリジナルの作品はありえず、多かれ少なかれ、既存の別の作品の影響を受けているものです。それ故、パクリか、偶然似ただけかを判断するのは難しいこともあります。
しかしこの場合、画像を重ねることでしわまでぴったり重なったり、あまりにトレースを疑われる事例が多かったため、意図的なものと判断され、批判の声が強くなりました。また、そのような作品を販売して利益を得ていたことも、非難される要因となりました。
トレパクは名前や評判を傷つける行為
トレパクを疑われたアーティストは、これまでにもいくらでもいます。中には、著名で大活躍している人も多数います。ネットが発達する前の時代に、トレパクと言われた人もいます。今の時代に炎上するか否かを分けるポイントは、悪質と判断されるかどうかです。過去の作品はすべてオリジナルで似ているのは一枚だけだったり、トレースせざるを得ないような同情すべき要因があったりすれば、話は違ったかもしれません。つまり悪質ではないと判断された場合は、炎上にはつながらなかったかもしれないのです。偶然似てしまった場合などは、このような炎上は恐れすぎることはないでしょう。
トレパクも、有名でないときには周囲にそれと分からないこともあります。実際、トレパクだけで成功することはできず、そこには必ず自分の才能や努力があるはずです。しかし、成功後にトレパクがわかってしまうことで、名前や評判に傷が付き、台無しになってしまうことがあるのです。著名になったり活躍の場に広がった時に、自分の足を引っ張ることを考えると、決して手を出さないほうがいいでしょう。
トレパクを疑われた後も、復活して、実力で活躍し続けている人もいます。汚名を払拭するのは少々大変かもしれませんが、踏ん張って才能を発揮していただきたいと思います。
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