料理道具の「ヘラ」とは? スパチュラなど、様々な呼び名がある!
スクレーパー、スパチュラ、ターナーなど、似ているのに違う呼び名がいろいろとあって戸惑う声も聞かれますが、ここでは大きくくくって「ヘラ(漢字なら「箆」)」と呼びます。ヘラとは、平たい板状のものに握りやすい柄が付いた道具の総称。調理器具、工具、お掃除道具に裁縫道具など、さまざまな用途があり世界中で今も進化中。家事分野だけでも種類は無数にあります。
身近な暮らしの道具は、掘れば掘るほど広くて深くて楽しめる世界。そこで今回は、家事の「ヘラ活(※ヘラを色々と使い愛でる活動!?を指す、筆者の造語)」を地道に続ける筆者が、ヘラを使った渋滞気味の家事の交通整理についてお届けします。
呼び名の謎を解決! 用途で違ういろいろなヘラの呼び名
ヘラ類の呼び名は、用途や素材、和と洋とくくり方でいろいろ。専門器具から万能器具まで用途はさまざまで、素材も木や竹、金属から新素材まで常に進化中です。中には、ほぼ同種なのに人気のキーワードだからこっちの名前を付けたなんて思われるものも混在しています。ここでは主に、混乱気味のカタカナ名の商品からスッキリさせましょう。
【スパチュラ】 このごろ目にすることが多い商品名「スパチュラ(英語:spatula)」は、調理器具ならクリームなど、工具なら粘土やパテなどを「塗る」作業を得意とし、また「混ぜる」「炒める」作業にも向くヘラです。中には「すくう」まで網羅したものもあります。
調理でおなじみの用途別のヘラには、しゃもじ、バターナイフ、パレットナイフ、フライ返し、ケーキカッターがあり、ターナーとビーター以外ほとんどはスパチュラといってもいいほど。
【ターナー、バタービーター】 調理器具の「ターナー(英語:turner)」と「バタービーター(英語:butter beater)」は、ざっくりいうと「フライ返し」。「ひっくり返す」のが得意で、ヘラ状の部分に少し傾斜がかかっている道具です。
バタービーターは、洋菓子づくりのときにバターをつぶして滑らかにするための器具ですが、先端が斜めの形状で「ひっくり返す」のも得意。ステンレスが主流でしたが、硬質なナイロン製などの素材が進化中。ちなみにお好み焼きやもんじゃ焼きのヘラ(コテ)はターナーの仲間です。
【スクレーパー】
お掃除分野でよく見かける「スクレーパー(英語:scraper)」は、「こする」「はがす」が得意なヘラ。家事では、食べ残しを集めるもの、窓掃除、結露取り用などがおなじみですが、工具としても昔から活躍しています。
シリコン?シリコーン? 素材別ヘラの呼び名
用途で商品名が記されたヘラには、「木」「ゴム」など素材名をつけたもの、また今は「シリコーンゴム」を使ったものが増えています。主な特徴を挙げてみます。【木べら】
硬くて力を入れやすく、他のものに傷をつけにくいのが特徴。用途に合わせて加工しやすいため大昔から使われてきました。手に持ったときの感触が優しく感じます。
【金属ヘラ】
今はステンレスが多く、ヘラに使われる素材では一番硬い部類のため、力を加える作業などが得意。耐熱温度が気になりません。なお、テフロン加工品はもちろん、金属にも傷をつけやすいため、通常のお料理なら金属ヘラ以外の方が扱いやすいでしょう。
【プラスチック、ナイロン】
どちらも主に石油を原料とする合成樹脂で作られたもの。低価格なものもつくりやすく、しなり方などを微調整できるため鍋を傷つけにくくなっています。耐熱温度や肌触りなども加工しやすい素材のため、家事グッズの原料として広く使われています。ナイロンは鍋肌へのすべり具合を向上させるためにコーティングされることも。耐熱温度が低いものや、ヘラと柄で素材が違うこともあるため商品説明は要チェックです。
【シリコーンゴム(シリコン)】
最近の一番人気。性能もデザインもハイスピードで進化を続けている注目の素材。正確には「シリコーンゴム製」です。「シリコン」はケイ素(Si)の別称で泥や岩石によく含まれ、シリコーンはシリコンを液状やゴム状などに精製した素材、シリコーンのうちのゴム状のものが「シリコーンゴム」。天然ゴムのように柔らかくしなるのが特徴で、鍋などを傷つけません。なお、天然のシリコンは耐熱温度がマイナス100~300度ですが、シリコーンゴムになると耐熱温度が「200度まで」などと低くなっているものも多いため、商品説明のチェックをお忘れなく。よく耳にするお悩みは、臭いの吸着や色移りです。
自分のこだわりのものを選ぶ、ヘラ活!
このように種類も豊富なヘラは、選び方のポイントも人によりさまざまです。筆者の場合、炒めるヘラには先端まで硬くてフライパンの端々までざざっと力強く料理を集められる木ベラを愛用し、ソースなど柔らかいものを混ぜるスパチュラはシリコーン製、ターナーは鍋やフライパンのヘリからすべり込んでしっかり返せる大きめのものを探しています。
ただ、申し訳ないことに優秀かどうかにかかわらず、買っても使わなくなってしまうというヘラも。そうならないためにも、自分のこだわりのものを選ぶにはいくつかチェックポイントがあります。
●ポイント1:持ちやすさ
ヘラですから、握りやすさはとても大切。ソースを混ぜるなど力を入れない動きで使うなら細身の棒でもよく、ゴロゴロした食材を混ぜたり炒めたりするならがっちり握れるタイプを。わが家では夫が炒め物を担当することが多いため、持ち手が太めでガッチリしたものを選んでいます。
●ポイント2:混ぜるときの反り具合 ヘラのしなやかさも大切です。お料理によっては、先まで硬くて曲がらない方がよいときもあれば、ほどよく反ってくれた方が混ぜやすいことも。その望みを叶えてくれる素材は、今ならナイロンやシリコーンゴムです。反り具合は実際に試さないとわからないものですが、今は商品のウェブのコメントを参考にしたりするのもよいでしょう。
●ポイント3:耐熱温度
以前、炒め物をした直後のフライパンにヘラを置きっぱなしにしていたら、柄が溶けるという悲劇に見舞われたことがあります。そんな事態を避けるためにも耐熱温度はチェックしておきましょう。
耐熱温度は素材というより加工によって結果が違うため、商品説明を必ず見ます。ヘラ先と柄の部分で耐熱温度が違うものも多くなっています。油を使った炒め物ではフライパンや内側の温度が200度を超えることもしばしば。炒め物をあまりしないならよいですが、自分の暮らしに合ったものを選べたらいいですね。
●ポイント4:色
自分の好きな色を選んで気分をあげるのは大切なこと。しかしわが家には、持ち手までシリコーンで覆われたちょっとお高めで真っ白なスパチュラが眠っています。これがベストとよく使う人もいらっしゃいますが、筆者の場合、色移りの心配から別のを使ううちに休眠へ。 なおシリコーンゴムは、使用後すぐに中性洗剤で洗い流せば基本的に大丈夫。色が気になるときは酸素系液体漂白剤を使います。ただ、トマトソースやカレーなどの色鮮やかなソースをよく作るなら、濃い色を選んだほうが心置きなく使えそうな気がしています。
ムダなく最大限に活用する、ヘラ活!
自分のこだわりに合わせて選んだヘラはどれも愛着があり、愛でて使い切るところまで毎日の家事の「ヘラ活」は続きます。ムダなく始末できる、今のイチオシ汚れ落としヘラたち。上は本来ホタテを開く道具、ふだんは焦げ取り。真ん中は本来の使い方で長年愛用している瓶缶スクレーパー。下はダイソーの300円のスパチュラで、鍋やフライパンの中身を残さず取り出してくれて、現在わが家の最優秀選手。
ヘラには本当にたくさんの種類があり、最近はどのヘラも人気の「スパチュラ」と名付けられているなど、選ぶのが楽なようなひと苦労のような状況。そんなときは、目的が限定されている場合を除き、“とりあえず使ってみる”というのもいいかなと思っています。
素材の流行りが数年で変わる昨今、ヘラからは目が離せません。
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