子供の病気

赤ちゃんの耳のきこえは大丈夫?新生児の聴覚検査のメリット・注意点

【小児科医が解説】先天性難聴は早期発見・早期療養が大切です。赤ちゃんの耳がちゃんときこえているかは、新生児聴覚スクリーニング検査で知ることができます。今後、全ての新生児が聴覚検査を受けられる体制が整っていくことが決まりました。新生児聴覚検査のメリット・注意点について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

全ての新生児が聴覚検査を受けられる体制づくりへ

先天性難聴を調べる新生児の聴覚検査

先天性難聴は早期発見が大切。新生児の聴覚検査のメリットと注意点とは?

昨年12月、全ての新生児が聴覚検査を受けられる体制整備を目指していくことを、厚生労働省が公表しました。新生児への聴覚検査の目的は、難聴の早期発見です。医療機関によってはこれまでも既に行われてきた検査ですが、自治体によって公費負担に差があるため、検査を受ける機会が持ちにくい新生児がいることが課題とされていました。

私が勤務する病院では既に実施していますが、今回は新生児の聴覚検査でわかること、メリット・デメリットについて解説します。
 

新生児の聴覚検査の現状……10人に1人程度が未検査か

厚生労働省の新生児聴覚検査の実施状況等についての調査によると、2019年度において検査状況が判明している中では、90.8%は新生児聴覚検査を受けていました。これに対して、検査を受けていなかったのは2.7%、受けたか不明が6.5%です。

つまり、約1割の新生児が聴覚検査を受けていない、受けたかどうか不明と言うことになります。

新生児聴覚検査を受けていない場合、難聴があっても気づかれないまま成長していくことになります。難聴のまま成長していくと言語発達の遅れが生じうる他、声をうまく出せないことから、学習やコミュニケーションの障害が起こってくる可能性が懸念されます。
 

新生児の聴覚検査のメリット……難聴の早期発見で言葉も獲得可能に

難聴の中でも重症な「先天性両側性難聴」は、約1000人に1人の割合でみられるとされています。音声によって言語能力を獲得する、つまり言葉の意味を知っていくのは、年齢が高くなるほど困難になると考えられています。

生後1カ月までに聴覚検査、3カ月までに確定診断、6カ月までに補聴開始する方が良いとされています。

日本の報告では、新生児聴覚検査によって生後6か月以内に療育を開始できる確率が20.21倍になり、早期に療養を開始した子どもが良好な日本語でのコミュニケーション能力を獲得する確率が3.23倍に上がるとされています(※1)。つまり、早期発見することで言葉を話すことができるようになるということになります。
 

新生児の聴覚検査のデメリット・注意点

新生児に行う聴覚検査も、身体に負担があるものではありませんので、デメリットはないかと思います。一方で、知識として知っておくべき注意点はあります。

聴覚検査で「実際にきこえているかどうか」を調べる場合、本来であれば大人が受けるような、鳴らされた音がきこえたかどうかを本人が知らせる形の検査が望ましいです。しかし新生児の聴力検査は、本人に確認をすることができないため、音を聞かせて脳波検査(ABR)を行って判定します。あくまで「スクリーニング検査」です。感度の良い検査ですが、それでも約1%は「擬陽性」が出ます。つまり、検査で難聴が疑われても、実際には問題がないケースです。

また、新生児以降に進行する難聴の場合は発見されない可能性があります。その後にきこえの面で不安に感じることがあった場合、新生児聴覚検査では異常がなかったからと安心せず、適切に受診することが大切です。
 

子どもの聴覚を守るために、早めの新生児聴覚検査を

新生児の聴覚検査は、通常生後3日までに実施します。要精密検査であった場合は生後2週間までに確認検査を行うことがあります。最初の検査も確認検査もABRという方法ですが、機械が異なります。また、耳鼻科で聴力に影響する鼻や耳の中を診察する必要があります。新生児の聴覚検査で要精密検査になった場合、専門の耳鼻科受診をすすめられることもあります。

まだきこえるかどうか自分でわからない新生児に対して、検査を急ぐ必要はないのではないかと思う方もいるかもしれません。

しかし、難聴があった場合、早期発見することができれば、早い段階で対応することができます。例えば、先天性サイトメガロウイルス感染症は難聴が起こしますが、サイトメガロウイルス感染症に対する治療を行えば、難聴の程度を軽くできるケースもあります。早期発見・早期療養が基本です。

■参考
※1 Kasai N, et al : Effects of early identification and intervention on language development in Japanese children with prelingual severe to profound hearing impairment. Ann Otol Rhinol Laryngol Suppl 2012 ; 202 : 16―20)
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