・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは
・各項目記入時の注意点
・A:源泉控除対象配偶者
・B:控除対象扶養親族(16歳以上・H18.1.1以前生まれ)
・C:障害者、寡婦、ひとり親、または勤労学生
・D:他の所得者が控除を受ける扶養親族等
・16歳未満の扶養親族
・令和4年分の扶養控除等(異動)申告書を提出する理由とは?
・まとめ
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」とは、その方が配偶者や子ども、親の面倒をみていることを申告し税金の軽減を受けるために提出する書類です。年末調整時には2021年分(令和3年分)の申告書を提出し、扶養親族に変化がなかったかを会社が確認した上で税額計算が行われます。
各項目記入時の注意点
国税庁のHPには以下の家族をモデルケースとした記載がありますので、これを参考に記入方法を解説していきます。本人:佐藤和夫/52歳/給与収入1095万円(所得900万円)のみ
妻:佐藤洋子/48歳/パート収入見込み額92万円(所得37万円)のみ
長男:佐藤守/22歳/海外在住
次男:佐藤茂/17歳/国内在住
3男:佐藤勝/15歳/国内在住
父:佐藤隆雄/79歳/年金収入140万円(所得30万円)のみ/身体障害3級
A:源泉控除対象配偶者
「源泉控除対象配偶者」とは給与の源泉徴収額計算の際、扶養人数に入れることのできる条件を満たしている配偶者のことを指します。平成29年までこの欄には「控除対象配偶者」と書かれており、給与(パート)収入が103万円以下の「配偶者控除」を受ける配偶者だけが対象でした。
しかしながら平成30年からは給与(パート)収入が150万円(所得95万円)までの「配偶者特別控除」を受けられる配偶者も、源泉徴収計算の際は扶養人数にカウントできることとなったため「源泉控除対象配偶者」という表現に改められています。
なお、この欄に記入できる配偶者は以下の2条件を満たす方のみですので注意してください。
・配偶者の所得95万円以下(パート収入のみなら150万円以下)
・本人(控除を受ける人)の所得が900万円以下(給与収入のみなら1095万円以下)
モデルケースでは、あなた(本人)の給与は1095万円(所得900万円)、洋子さんはパート収入見込み額92万円(所得37万円)のみです。要件を満たしているので上図のように記載します。
B:控除対象扶養親族(16歳以上・H18.1.1以前生まれ)
配偶者以外の扶養親族を記入する欄です。本年1月1日以降16歳以上で生計を共にしており、本年の所得が48万円以下の人が対象となります。またその親族が特定扶養親族(19歳以上23歳未満)や同居老親(70歳以上)にあたるかどうか、国内に居住している親族かどうか等を記入します。 モデルケースでは守さん、茂さん、父である隆雄さんが16歳以上ですのでそれぞれの名前と続柄を記載します。なお守さんは特定扶養親族(19歳以上23歳未満)にあたるためチェックを入れ、海外在住のため海外在住欄には〇を入れます。
また隆雄さんは70歳以上かつ直系尊属のため「同居老親等」欄にチェックを入れます。
C:障害者、寡婦、ひとり親、または勤労学生
本人や配偶者や扶養親族が障害者に該当する場合、本人が寡婦、ひとり親、勤労学生である場合など、特に税の軽減が必要な方の記入欄です。障害者に当たるかどうかの判断の際には「同一生計配偶者」や「扶養親族」の基準を満たしているかどうかに注意が必要です。
「同一生計配偶者」とは所得48万円以下(パート収入のみなら103万円以下)の配偶者のことであり、先ほどの「A:源泉控除対象配偶者」に記入する際の基準(所得95万円、パート収入のみなら150万円以下)とは異なりますので混同しないようにしてください。
ここでの「扶養親族」には16歳未満の親族も含まれます。これも先ほどの「B:控除対象扶養親族」に記入する際の基準とは異なりますのでご注意ください。
モデルケースでは隆雄さんが障害3級で「一般の障害者」にあたりますので、チェックを入れ詳細を右の欄に記載します。
なお今回のケースでは該当しませんが、令和2年より本人が「ひとり親(注1)」の場合も控除を受けられることとなっています。ご自身のみでお子様を育てておられる方はチェックを忘れないようにしましょう。
注1:所得500万円以下の方が対象、婚姻歴や性別は問わないが現在事実婚の方は対象外
D:他の所得者が控除を受ける扶養親族等
文字だけではよく分からないと思いますが、例えば夫婦共働きの家庭で子どもをそれぞれに分けて扶養に入れている場合、相方の扶養に入れている子どもの名前をここに記入する欄、と考えればよいかと思います。同じ子どもを夫婦が同時に控除に入れることはできないため、確認の欄だと思えばよいでしょう。
16歳未満の扶養親族
この欄は住民税に関しての項目です。「16歳未満の扶養控除」は廃止されているのに記入が必要な理由は、住民税には非課税限度額(これ以下の所得なら住民税は払わなくてよい基準額)があり、その算定の際は16歳未満の扶養親族の数も含めてカウントします。その限度額計算の際に必要なために申告書での記入が求められているのです。 モデルケースでは勝さんは15歳ですので「16歳未満の扶養親族」欄に記入しておきます。
令和4年分の扶養控除等(異動)申告書を提出する理由とは?
会社によっては「令和3年分」と共に「令和4年分」の扶養控除等(異動)申告書の提出を求められます。それでなくとも会社員やパート・アルバイトの方は年始に「令和4年分」の申告書を提出しなければなりません。その理由は国税HP(給与所得者の扶養控除等の申告)に以下の記述があるからです。
[提出時期]
その年の最初に給与の支払を受ける日の前日(中途就職の場合には、就職後最初の給与の支払を受ける日の前日)までに提出してください。
[備考欄:一部抜粋]
国内において給与の支給を受ける居住者は、源泉控除対象配偶者や扶養親族の有無にかかわらず原則としてこの申告を行わなければなりません。この申告を行わない場合は、月々(日々)の源泉徴収の際に受けることのできる諸控除が受けられず、また年末調整も行われないことになります。
会社により提出期限は違いますが、令和4年分の申告書も指定期限内に確実に提出することをお勧めします。
まとめ
いかがでしたでしょうか。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は特に専門用語が多く、全てを理解し記入することは難しい書類かと思います。しかしながら申告書の裏にある「申告についてのご注意」を参照に記載すれば一つ一つの言葉の意味は分からなくても間違うことの少ない書類でもありますので、期日までに忘れずに提出してください。