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「よその子がうらやましい」と子どもを比べてしまう親
子どもが生まれたときは「のびのび育てたい」「元気に育ってさえくれれば」と思われる親御さんが多いでしょう。しかし成長するとともに、同年代の子と比べて一喜一憂することはないでしょうか。「お隣の子は数字が100まで読めるのに、うちの子は10までしか言えない」「お友だちはスイミングスクールでクロールを練習している。それなのにわが子はまだ水に顔をつけるのがやっと」
――このように比べることは、子どもが小学校へ入学して点数などで評価が付くようになれば、さらに増してくるでしょう。ですがこれらは、子どもの健やかな成長にネガティブな影響を与えます。
親が周りの子と比較することの悪影響
子ども自身が頑張っている友達を見て目標にし、励みにすることは良いことでしょう。しかし、親が子どもを他の子と比べることは、多くのデメリットがあります。もしわが子の方が劣っていると感じた場合、落ちこんだり焦ったり、ときにはイライラすることもあるでしょう。こういった親の感情は子どもの健やかな成長を妨げます。親が落ち込んでいるのは「ボクのせい」「ワタシができないから」と子どもが自分自身を責めることもあるかもしれません。また、親がイライラしてしまい、子どもを怒鳴りつけることにもつながるでしょう。
反対に、わが子の方が優れていると感じる場合もあるでしょう。親は嬉しくて子どもを褒めたりするためネガティブな影響がないように感じますが、実はこの場合もデメリットがあります。
「すごい! クラスで一番ね」「お兄ちゃんより、よくできるね」などといった褒め言葉をかけると、それにより子どもは自信を持ち、意欲が高まることもあるでしょう。しかしこれからの自信や意欲はとても不安定でかえって危険なこともあるのです。
優劣を比べられて得る自信や意欲が危惧される理由
子どもは大好きなお母さんやお父さんに褒められたいと思うでしょう。しかしいつも周りと比べて褒められていると、他の子がうまくいったり成功することを素直に喜べなくなります。ときには妬ましく思ったり、兄弟や友達と良好な関係を築く妨げになることも考えられます。そうするとどんな手段を使っても、優位に立とうとする気持ちも生じてくるでしょう。例えば、テストで不正をしてでもクラスで一番になりたいと思ったり、本当は弟が片付けたおもちゃを自分がやったとウソを言うことも考えられるでしょう。
人と比べられて得た自信は、比べるフィールドが変わればもろく崩れやすいものです。例えば、勉強やスポーツがクラスで一番であっても、学年、全国と比べる対象を広げればその順位は下がっていきます。比べて優位に立つ自信は揺らぎ、崩れ落ちることが多いのです。
子どもはその褒められた能力を自分の価値だと思い込みます。その評価が下がると「自分はダメな人間なんだ」という気持ちになり、自分自身の評価も下がり意欲が低下して自暴自棄になることがあります。
子どもの頃、周りと比べて優位に立つことを褒められて自信を持っていても、成長すれば必ず社会は広がります。そうなったときその自信は崩れ落ち、無気力な人生を送るという事態もありえるでしょう。
子どものありのままを認めるために親が心がけること
私たちは「ある」部分より「ない」部分が気になるものです。例えば、丸いドーナツでも、欠けているとその箇所にまず目がいきます。色鉛筆でも一本足りないとその色が気になるものです。子どもを見るときもこれとよく似ていて「できているところ」より「できていないところ」に目がいきがちです。しかしそうではなく、子どもの性格や個性の良いところやできているところに目を向けてください。またできていないところも、視点を変えればポジティブなことに見えてくることもあります。
例えば、行動や作業の遅い子どもは、何事にも丁寧に取り組める子とも考えられるでしょう。直ぐにふざける子どもは、明るく周りを楽しくするムードメーカー的存在かもしれません。頑固な子は信念をしっかりもっている子ともいえるでしょう。
また、片づけることが苦手でも洗濯物を干すのをよく手伝ってくれる。算数の計算が遅くても毎日花の水やりは忘れたことがないなど、子どもの良いところに目を向けましょう。そうすることで子どものありのままを認めていけるようになり、周りのことが徐々に気にならなくなるでしょう。
親自身も自分の子育てを比べないこと
子どもを比べないためにもう一つの大切なことは、親自身が周りと比べないことです。例えば、他の誰かの子育てと比べて、自分はきちんと子どもを育てられていないのではと悩んだり、隣家の人は仕事も家事も子育ても順調にこなしているのに自分はどれも中途半端でダメな母親……などと不安や悩みを抱えないことです。
そのようなときは親の自分自身に対しても、できていないことより、できているところに目を向けましょう。例えば「子どもに怒鳴って怒ってしまった」と後悔したときは「今日は子どもの話をいつもより10分長く聴いた」、「洗濯ができなかった」と落ち込んだときは「夕食をとても美味しく作ることができた」など、できたことや自分の気持ちが前向きになることに目を向けましょう。
ときには今まで頑張ってきた自分に労いの言葉をかけるのも良いでしょう。そうすることにより、自分自身を認めていける感覚が育まれ、人と比べる目線も減っていくでしょう。
私たちは気づかない間に、子どもや自分を周りと比べることがあります。しかし比べることにより得る自信は、優越感であったり、慢心になりがちです。それらは人生を歩んでいく上で生きづらさを感じる要因になるでしょう。
周りと比べることなく、過去の本人と照らし合わせて成長した様子や努力した過程に目をやり、ありのままの姿を認め、子どもの健やかな成長を見守り自分らしく生きていきたいものですね。
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