転職する時に考えたい、自分が得られるメリットより大切なもの
■仕事の選び方は「どのようなスタンスで社会と関わっていくか」転職のメリットを考える時、新卒の就活の話が参考になる。新卒の就活では、企業で内定をもらった後も8月、9月に行われる公務員試験を受け続ける学生がいる。これは、特に地方出身の学生によく見られる傾向である。
地方から東京にある大学に出てきて、本社が東京にある大企業相手に就活をし、内定をもらったが、地元の市役所や町役場で働くことも視野に入れ、最終的にどうすればいいか迷っている学生がいる。
その際によく聞くのは、公務員が安定した職業だということ、そしていずれ地元に帰りたいと思っていることである。ゆえに公務員試験を受け、都心の企業で刺激的な就職をするべきか、地元で安定した仕事に就くべきか、天秤にかけているのだ。
気持ちはわからなくはない。誰しも安定した仕事がしたいものであるし、地方出身者の中には、どのタイミングで地元に戻るべきか、考える人がいても不思議なことではないからだ。
一方、企業は自社の利益を最優先する存在であり、公務員は公共サービスを提供して社会の土台を作る存在である。どちらも社会を支える大切な存在であるが、社会との関わり方は大きく異なる。
企業で働く場合でも社会を良くしていく仕事はできるが、赤字事業のまま継続することはできない。どんなにやりがいがあり、社会的な意義のある仕事でも、一企業には限界があることも多いのだ。
つまり、企業で働くことと公務員として働くことを天秤にかけている就活生は、自分はどのようなスタンスで社会と関わっていくかを考える視点(使命感や志と言ってもいい)が抜けており、あくまでも、高い年収か、都会の刺激か、クビにならない安定性かなど、自分が得られるメリットを比較しているのである。
■今一度確認したい、転職後の会社や社会への貢献意欲の強さ
ある程度職業経験を積んだ人が転職をする場合でも、気をつけなければ、転職時に自分が得られるメリットだけに目が向いてしまうことがある。待遇や評価は大切だが、それはパフォーマンスが高ければ得られるものであり、転職しただけで得られるものではない。
仮に転職で給料が上がり、肩書が良くなった人でも、それは一瞬のことであり、転職後の長い時間をかけて、自らの会社への貢献度を証明しなければ、転職で得られた待遇や高評価もすぐに失ってしまうかもしれない。
転職をするときに大切なことは、自分の会社や社会への貢献度を上げられる環境を得られるかどうか。そこを最優先に確認した上で、自らの得られるメリットも考えるというのが、正しい順番である。
転職には失敗がつきものであるが、失敗している人の多くは、転職後に職場からの評価が上がらず、転職した際に得た信頼を喪失している。転職で自分のメリットを得たら、それを正当化できるよう、早期に会社への貢献度を証明しなければならないことから、転職は楽ではないのである。
転職活動で内定まで得たにもかかわらず、最終的に転職を思いとどまる人がいるが、その中には、新天地で活躍することに対して最後まで自信が持てず、一歩を踏み出せなかった人も多いのである。ひとつの会社に勤めあげた人の中にも、過去に転職未遂を経験した人は多い。
どちらにしても、転職とは大きな決断が求められるものであり、前述した「転職するので家売ります!」といって転職していったエンジニアの例は、転職後の会社や社会への貢献意欲の強さなどを確認するにあたり、良き教訓となる話ではないだろうか。