お金の悩みを解決!マネープランクリニック/マイホーム購入・住宅ローンで悩むファミリー世帯

32歳、貯金1200万円。住宅ローンの借入額1億円、第2子を躊躇しています……(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、金融機関で正社員として働く32歳の主婦の方。第2子を希望しているが、住宅ローンの借入額が1億円をとと大きく、資金的に不安に感じているとのこと。また、貯蓄についても少ないのではと考えているとか。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 教育資金も早期リタイアも十分に実現できそう

先に結論から申し上げます。第2子について資金的には問題は見当たりません。住宅ローンを返済しながら、子育て費用も十分確保できます。
 
現在の貯蓄ペースですが、いただいたデータによれば、毎月財形貯蓄に8万円、普通預金に15万円前後、さらにボーナスから235万円ですから、年間511万円。これを18年間、さくらさんが役職定年となる50歳まで継続すると、およそ9200万円。
 
ただし途中、第2子出産のため、育児休暇を取得します。その期間や、その間の勤務先からの手当の有無は不明ですが、休暇を2年間取得し、収入は育児休業手当等の公的なものだけとすれば、ざっと600万~1000万円程度(手当支給の延長の有無による違い)を差し引くことになりますので、50歳で新たに上乗せされる貯蓄分は、少なく見積もって8200万円ほどとなります。
 
次に、教育費を考えます。言うまでもないですが、かかる教育費は進路によって大きく異なります。さくらさんは「子どもが希望するなら私立でも行かせるつもり」とのことですので、もっとも高額となる小学校からオール私立を想定して、2000万円(学校外教育費も含む)×2人=4000万円をひとつの目安とします。
 
ただし、先の試算で家計収支データにあるように教育費として月3万円計上しています。試算と重なっている期間は、その分を4000万円から差し引く必要がありますが、これは教育費以外の子育て費用やお子さんの成長によって自然と増える世帯の基本生活費によって相殺されるとします。したがって、一部前倒しで計上している部分はありますが、8200万円−4000万円=4200万円と、今ある貯蓄1200万円を加えた5400万円が、さくらさん50歳のときの手元に残る貯蓄額ということになります。
 

アドバイス2 教育費増や減収等は家計を抑える工夫で対処可能

次に50歳以降を考えます。

データにあるように、ご夫婦ともこの年齢で役職定年となったとします。その際、減収がどの程度になるかはわかりませんが、4割減とすれば、世帯収入は手取りで830万円ほど。一方、年間の生活コストは、教育費をゼロとして、その他の支出は50歳以降も変わらないとすれば、毎月の生活費は76万3000円、ボーナスからの支出は65万円ですから、計980万円。

したがって、年間で約150万円の赤字ですが、「夫婦の自由管理資金」としている月26万円のうち、実際に支出に回っているのは10万5000円(各13万円に対して、夫は2万5000円支出、妻は8万円支出)なので、実質の年間コストは約800万円となります。つまり、役職定年後もほぼ貯蓄を取り崩さず、生活費を収入でカバーできることになります。
 
そして、60歳で定年を迎え、ご希望どおり再就職はせず、リタイアをされるとします。5400万円(50歳のときの貯蓄がそのまま残っている状態)に2人分の退職金を加えた額が老後資金です。退職金は30年以上の先の話ですので、金額を想定するのは難しいですが、念のため少なく見積もって、手取り額で1人2000万円としました。だとすれば、60歳の時点で手持ち資金は9400万円。
 
60歳以降の生活費は、保険料の支払いが終了し、その他の生活費がそれ以前と変わらないなら、実質、年間720万円ほど。公的年金が支給となるまでの5年間で3600万円となり、これを9400万円から差し引いた5800万円が65歳の時点で手元に残るという試算結果となります。
 

アドバイス3 貯蓄の割合は高めるより、現状を維持していくことが大事

65歳以降は、住宅ローンの支払いがなくなりますので、その他の生活レベルがそれ以前と変わらないとしても、年間の生活コストは400万円近くまで下がります。一方、公的年金ですが、今後の収入の推移で額は異なってきますが、夫婦合わせて、現在の水準であれば、額面で月35万~40万円でしょうか。であれば、節約を意識しなくても、65歳以降は公的年金だけでほぼ生活できる可能性があるわけです。
 
つまり、手持ち資金5800万円はほぼ減らさず、老後生活を送れることになります。これだけの額があれば、不測の支出(住宅リフォーム・修繕費用、医療費・介護費用など)についても十分対応できるでしょう。それはすなわち、60歳で夫婦ともリタイアしても、老後資金は確保できていることを意味します。
 
さらに言えば、ここまでの試算は、昇給分を考慮していません。さくらさんが自身の「自由管理資金」から月5万円を積み立てられている定期預金、夫の自由管理資金の普通預金に残している分も、貯蓄分に含まれていません。加えて、外貨建ての終身保険についても、保険料から類推して、解約返戻金はまとまった額になるはず。そう考えれば、試算結果以上に老後資金には余裕があるはずです。
 
「貯蓄割合は少ないでしょうか」という質問については、ご夫婦の年収が手取りで1380万円、貯蓄が年間で511万円ですから、貯蓄率は37%。もちろん、生活を今より切り詰め、割合を高くすることも可能ですが、すでに金額として十分すぎる貯蓄ペースですから、心配は不要。個人的には、もっと支出を増やしてもいいのでは、と思うほどです。もちろん、試算よりも教育費がかかったり、退職金や公的年金額が少ないことも想定されます。そうなった場合は、必要に応じて、生活費を抑えるといった工夫で対処していけばいいですし、それができるだけの余裕が家計や収入にはあります。
 
多額のローンについても、世帯収入を考えれば、返済に無理はありません。ただし、それも、夫婦とも継続的に収入を得ることを前提としています。したがって、ご家族の健康に普段から留意され、家計管理を今までどおりされれば、希望されるライフプランは、無理せずとも実現可能と考えます。
 

相談者「さくら」さんから寄せられた感想

先生のアドバイスは以前から読んでおり、さまざまなリスク面を考慮しお答えいただいてとても安心しました。2人目を金銭面の不安なく検討できるというお言葉も力強く感じました。石橋を叩き過ぎる性格の夫婦ですので、後押しいただけたことに感謝しております。ありがとうございます。
 

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
  
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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