お金の悩みを解決!マネープランクリニック/シングルマザー・シングルファザーの方のお金悩み相談

44歳、離婚し貯蓄は現在500万円。養育費もない中で子ども2人の教育費をどう準備する?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、2人のお子さんをひとり親として育てる44歳の会社員女性。離婚後、貯蓄等を失い、養育費もない中、貯蓄ができないことや資産運用でも悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 保険料の家計負担を取り除くことから始める

ご相談文、拝見いたしました。いろいろご苦労がある中、大変頑張られていると思います。ご相談は、貯蓄がなかなかできず、教育資金が準備できるかどうかですが、ポイントは保険です。これを見直すことで、教育資金の準備は可能と考えます。
 
毎月の保険料は8万8000円。確かに、ほとんどが掛け捨てではないので、貯蓄と考えていいかもしれません。Happy Lifeさんも「資産運用を兼ねて」が加入理由だとしています。
 
しかし、保険をそのように活用できるのは、余裕資金を保険料に回すことができている場合です。現在は明らかに、保険料の支払いが家計をきびしくしています。家計収支は1万円の黒字ですが、第1子の児童扶養手当と児童育成手当は、18歳になった年度末で支給が終わります。さらに、ボーナスが不確定で収入として計算できないこと、現在受給されている公益財団の給付型奨学金も、毎年申請が必要であれば、必ず翌年も受給できる保証はないことになります。つまりは現状、家計赤字に陥るリスクを絶えず抱えていることになります。
 
具体的な見直しですが、本人加入の保険のうち、米ドル建一時払い終身保険と、現在持病があるということで、医療保険、がん保険もともにこのまま継続加入でいいと思います。
 
問題は変額保険です。まず、払込終了が80歳はあまりに長過ぎます。中途解約を前提に加入されているとしても、毎月およそ4万4000円、年間52万円を保険という流動性のほぼない(自由に出し入れできない)商品に預けること自体、現在の家計収支や資産内容から考えて、適正ではありません。払済保険にしてください。昨年加入ですから、保障および解約返戻金はわずかですが、支払った保険料は無駄にはなりません。
 
変額個人年金保険も、70歳まで支払うという点が、気になります。おそらく支払期間は26年間ですから、保険料の支払総額は600万円。実際に手にする年金は当然それ以上の額となりますが、元本だけでも十分まとまった資金です。さらに、ずっと賃貸住宅の可能性もありますから、家賃以外の固定支出は、とくに高齢になるほど減らしたいところ。そう考えれば、これも払済保険にして、保険料は貯蓄に回すべきだと思います。
 
さらに、お子さん2人が被保険者となっている変額保険も、同様に払済保険にしてください。昨年加入なので、中途解約しても、教育資金に充てるほどの額ではありません。せっかく用意されていた学資保険が、離婚で消滅してしまったことへの無念さもあるでしょう。しかし、先にも触れたように、今は流動性のない保険商品で増やすことを選択するより、効率はよくないと感じても、現金でコツコツ手持ち資金を増やすことを優先してほしいと思います。
 
また、第2子さんが加入しているこども共済も不要です。これは解約となります。
 

アドバイス2 給付奨学金の受給額が大きなポイント

次に、保険商品を見直したことで、Happy Lifeさんの死亡保障が不足します。保険期間10年、死亡保障1000万円の定期保険かそれに近い保障額の収入保障保険に加入してください。毎月の保険料は、定期保険で月2000円ほど。また、先に定期保険で死亡保障を確保し、その後で、変額保険を払済保険してください。
 
これで、毎月の保険料は6000円程度に収まります。したがって、毎月の支出は26万円、月9万2000円の黒字です。ただし、先に触れたように児童手当等はやがて支給が終わります。それを踏まえてざっと試算をしてみます。
 
まず、今後受け取る各種の公的手当の総額はざっと300万円。次に、奨学金は今後が不確定のため含めないとすれば、残る世帯収入は給与だけとなり月24万5000円。対して、支出は保険の見直しと、あと月3万円の教育費もここでは便宜上差し引いておきます。結果、収支は月1万5000円の黒字。第2子が大学卒業となるまでの12年間継続すれば、216万円。この間、ボーナスを考慮していませんが、それはほぼ全額不定期支出に充てるとし、12年間貯蓄は700万円とします。これに現預金500万円を加算すると1200万円となります。
 
この1200万円で教育資金が準備できるかどうかですが、大学の場合、私立文系でかかる学費は4年間で400万円。2人なら800万円。第1子の高校(公立高校)卒業までの授業料は無償、自己負担は教材費等とのこと。第2子の方の高校卒業まで同様の費用負担なら、現在の月3万円(一人なら半分の1万5000円)がそれまでの教育費の目安とすれば、そこまでの費用負担は150万円ほど。また、第2子の方が私立高校に進学した場合、加算額は150万~200万円でしょうか。それでも、ギリギリではありますが、1200万円で足りる計算になります。
 
さらに奨学金の支給が続けば、マネープラン的には余裕が生まれます。仮に、お子さん2人とも大学卒業まで月4万円の支給が受けられるなら、850万円ほど教育資金が増えます。半分でも400万円超ですから、家計的にはかなり大きいことであることは間違いありません。
 
また、給付型奨学金については、現在の世帯収入であれば、2020年度からスタートした国の奨学金制度(高等教育の修学金支援制度)の対象になるのではないでしょうか。
 

アドバイス3 定年68歳のメリットを活かしたい

最後に、お子さんたちが大学卒業後の、56歳以降について考えます。まず、この時点の手持ち資金について、お子さんの進路状況と奨学金の受給状況によってその額は大きく異なりますが、大学はともに私立文系、第2子は私立高校とし、奨学金は総額で今後400万円受給とすれば、手元に残る資金は500万円ほど。
 
また、このときの生活費ですが、お子さんがすでに独立しているとすれば、食費等が下がるはず。仮に月20万円とすれば、4万5000円の黒字ですから、年間54万円。また、Happy Lifeさんの場合、定年が68歳という点が、大きなメリットとなります。もちろん、ご自身の健康状態にもよりますが、その間の安定した給与収入と、加えて厚生年金に長く加入するわけですから、その分、公的年金の受給額も増えます。
 
68歳まで勤務した場合、12年間で648万円、貯蓄の上積みができます。これに手持ち資金500万円、退職金の300万円、前倒しの加算にはなりますが、一時払い終身保険の解約金300万円も合わせれば、1748万円。途中、ボーナス等でカバーしきれない不定期支出を考慮しても、68歳の定年時に1600万円程度は老後資金して用意できるのではないでしょうか。
 
この場では、公的年金の受給額の計算はできませんが、額面で月額13万~15万円と考えられます。この公的年金が、かかる生活費に対して、月5万円の不足なら30年間で1800万円、月3万円の不足で1080万円の老後資金が必要です。さらに老後の予備費も必要ですから、不足額は月3万円程度に抑えたいところ。
 
そうなると、やはりネックは家賃コストです。引っ越しにより家賃を下げるか、データによればご実家に移り住むことも可能とのこと。現状では、それができればマネープランとしてはもっとも望ましい形だと思います。
 
ちなみに、公的年金については、65歳以降も厚生年金に加入しながら働く場合、在職中の受給額については、一定の収入(現行では月47万円)を超えると減額される制度(在職老齢年金)があります。それでも、その間は給与と年金のダブル受給となり、68歳まで勤務すれば、年金はそのまま余裕資金として、老後資金に加算されます。額面で14万円なら手取り12万5000円前後でしょうか。これが3年間だと450万円。これは老後資金において大きなプラスです。
 

アドバイス4 大学卒業まで、運用リスクは取れない

あと、iDeCoと純金積立について。もっともきびしい状況を想定して、できるだけ現金で貯めるべきというのが、現状のポイントです。iDeCoは原則60歳以降でなくては引き出せません。したがって、拠出は一度中止して、第2子の大学費用の備えにめどが立った段階で再開されてはどうでしょうか。それでも最長で10年近く掛けられますから(60歳以降も継続して厚生年金加入の場合)、節税効果は十分得られます。
 
同様に、純金積立も教育資金のめどが立つまでは休止します。これは運用全般に言えますが、今は運用リスクを取ることはできません。
 
また今回、保険以外の見直しはあえて触れませんでした。食費はやや高めではありますが、他の支出は十分抑えていますので、トータルでは家計管理のできた家計となっています。それと、何から何まで節約では息が詰まります。しっかり貯蓄を確保した上で、必要に応じて支出もする、メリハリのある家計を目指してください。
 
ともあれ、再三、触れているように、進路内容や給付型奨学金の受給額等によって、マネープランは大きく変わります。試算もあくまで想定の上で行った結果であって、実際とは大きく異なることあります。

それでも、公的支援を十分活用しながら、現金を貯蓄していくことに資産づくりをシフトしていくことで、教育資金はもとより、老後資金の準備も可能です。お子さんへの負い目もあるようですが、悔いることも焦る必要もありません。お子さんたちとの日々も楽しみながら、コツコツ貯めていきましょう。
 

相談者「Happy Life」さんから寄せられた感想

このたびは大変丁寧なアドバイスをありがとうございました。何度も熟読させていただきました。これまで漠然と現状の把握と今後のマネープランをイメージして不安ばかりが募っていましたが、今回具体的に試算していただいたことにより、先生もおっしゃる通り完全に安心できる状態ではないものの、一つ一つしっかり整理して丁寧に貯蓄を積み重ねていけば、子どもたちにも必要な教育を受けさせてあげることが実現可能であることが分かり少し安心しました。また、自分の老後についても必要以上に不安に感じるべきではないと感じました。頂いたアドバイスを参考にできることから実行しつつ、子どもとの時間を大切に健康第一で日々楽しく過ごしたいと思います。
 
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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
  
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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