モデルナワクチンの副反応の傾向は?「モデルナアーム」の報告も
モデルナワクチン接種後の副反応は? 経過や副反応の出方には個人差があります(※画像はイメージ)
接種後の副反応の出方や経過には個人差がありますが、一例としてモデルナワクチンの2回目接種を完了した方から寄せられた体験談をもとに、経過を見てみましょう。
モデルナワクチン接種体験談……1回目接種後の副反応と経過
以下、40歳女性のモデルナ製ワクチン接種体験談です。大きな病歴はなく、アレルギーはごく軽い花粉症のみ。軽度の咳喘息を治療中とのことです。■1回目接種後の副反応と経過(体験談より)
まず接種時は、拍子抜けするほど痛みが少なく驚きました。実は接種前日に頭痛と軽い鼻水症状があり、接種3日前に行った献血の血液検査結果でも白血球の数値だけ少し高めだったため、接種を受けられないかもしれないと思っていたのですが、予診の上、問題なく接種を受けることができました。
接種後しばらくは何も変化がありませんでしたが、2時間ほど経過してから徐々に接種した腕に痛みが出始めました。接種部位から肩にかけて軽い内出血のような痛みになり、4時間後には肩より上には腕を挙げにくい状態に。我慢できないほどではないものの、着替えや洗顔などの日常動作がつらい他、安静にしていると鈍痛が気になって寝付けなかったため、1日目は痛み止めを服用して就寝しました。
2日目は、腕の痛みは日常生活に支障がないくらいに軽減。しかし昼にかけて鎖骨から首のリンパ節に痛みが起こり始めました。特に鎖骨のくぼみの部分にはひどい内出血をしているような痛みがあり、丸2日間ほど続きました。
4日目になるとリンパ節の痛みも軽くなってきましたが、なぜか腰痛が始まりました。ワクチンの副反応なのか、腕や首などの痛みを庇って無意識に負担をかけてしまったのかわかりませんが、夜にはぎっくり腰のときのような歩き方しかできず、日常生活はここが一番大変でした。
6日目には諸々の副反応が治まり、ほぼ普段通りの体調に戻りました。全体を通し発熱などもなく、仕事に支障が出るほどの不調はありませんでしたが、腰痛がひどかったときは在宅勤務でなければ難しかったかもしれません。1週間ほど倦怠感もありましたが、梅雨時のお天気のせいか判別が難しい程度のものでした。
■1回目接種の副反応・経過について、医師としての所感
ワクチンは体調がベストな状態で接種することが望ましいですが、延期するとなかなか接種できない可能性がある状況では、発熱がない多少の風邪であれば接種を行うことが多いです。接種前に白血球の上昇がみられたとのことですが、白血球数は日によって異なります。軽い風邪の影響もあったかもしれませんが、多少の増減であればワクチン接種や効果にも支障はないでしょう。
接種後の腕の痛みは多く報告されていますが、筋肉注射である以上、ある程度の筋肉痛は起こるものです。初日の夜だけ痛み止めを服用したとのことですが、日常生活に支障がある場合は、症状がつらい期間、痛み止めを使用しても良いでしょう。
リンパ節の痛みもワクチンの副反応として報告があります。ワクチンによる免疫細胞の教育が進むため、正常な免疫反応が起こっている結果といえますが、日常生活に支障がある場合は、腕の痛みと同様、我慢せずに痛み止めを使用しても良かったかと思います。
また、ぎっくり腰のような腰痛症状ですが、これは免疫細胞が活性化したことによるサイトカインの影響で、関節痛や腰痛が起こってくることがあるため、その症状ではないかと思われます。特に腰痛などの持病がある場合は、ワクチンだけでなく梅雨時などの気圧の変化を受けて症状が出る場合もありますので、判別は難しいところです。このような痛みに対しても、つらい場合は痛み止めで様子をみると良いでしょう。
モデルナワクチン接種体験談……2回目接種後の副反応と経過
■2回目接種後の副反応と経過(体験談より)1回目と同じく、接種時や接種直後は痛みなどもなくスムーズでしたが、3時間ほどしてから軽い腕の痛みが始まりました。1回目は発熱はありませんでしたが、5時間ほど経過してから微熱が出始め、夜には39.5℃の高熱に。
2日目も朝から39℃以上の高熱だったため、ワクチン休暇を取得。日中も39℃前後の高熱が続きましたが、腕の痛みや頭痛などの症状はなかったため、半日は解熱鎮痛剤なども飲まず、ひたすら寝て安静に過ごしました。24時間が経過するころに37℃台に。夕方から育児や家事に対応する必要があったため、このタイミングで解熱鎮痛薬を飲んだところ、一気に36℃前半の平熱まで解熱。丸一日高熱で寝ていたにもかかわらず、倦怠感や不快な症状も残らず、突然すっきりと普段通りの体調に戻りました。
4日目に、接種部位周辺がうっすらと赤くなる症状が出ましたが、痛みやかゆみもなく、半日ほどで自然におさまりました。2回目の方が副反応が重いことが多いと聞いていたので心配していましたが、私の場合は1回目の方が寝込むほどではない副反応がずるずると続いてつらかったです。
■2回目接種の副反応の経過について、医師としての所感
ワクチン接種後の発熱の報告は、1回目よりも2回目に多く、特に若い女性ほど頻度が高いことが報告されています。一般的に男性より女性の方が免疫機能が高いといわれているため、その影響もあるのかもしれません。
どの副反応も正常な免疫反応の結果として起きているものですので、高熱でも安静にしていれば大丈夫で、ゆっくり体を休められるなら、解熱剤なしで過ごしてもよいでしょう。ただ風邪でつらい時に解熱剤を使用するのと同様、高熱で我慢できないようなきつさがあるときには使用しても良いでしょう。ただし、高熱や頭痛が心配だからと予防的に解熱剤を使用するのは控えましょう。
モデルナアームといった症状も報告されていますが、接種部位に痛みや腫れが出た場合は冷やしてみるのもよいでしょう。つらいかゆみがある場合は、抗ヒスタミン剤の外用薬や内服で対処することもできます。
2回目はワクチンの効果増強のために接種するため、これまでのデータからも2回目接種後の方が副反応が起きやすい傾向があることがわかっていますが、免疫反応には個人差があります。今回体験談を寄せられた方のように、2回目の方が副反応のつらさが短期間で済んだと感じるケースもあり、一概には言えません。多くの人に起こるような副反応が全く出なかったという方もいますので、まずは過剰に心配せず、リラックスして接種を受けるのが良いかと思います。
ワクチン接種後の有害事象の考え方……個人差の他、身体も仕組みも理解を
個人差はありますが、ワクチン接種後の副反応の程度や経過は大体わかってきています。一方で新型コロナウイルスに感染すると、軽症でも長期の後遺症が残ったり、重症化するリスクもあります。嗅覚・味覚障害や肺機能障害はなかなか完治しにくく、現時点では治療方法がないという問題もあります。治療法のないウイルス感染症に対抗する方法は、やはりワクチンしかありません。ワクチンによるメリット・デメリットを天秤にかけ、自己防衛と社会防衛になる方法を選ぶことが大切です。一方で、ワクチン接種後の有害事象として報告されているものが不安という声もあるでしょう。「有害事象」とは、副反応とは認められていない因果関係が不明なものも含め、ワクチン接種後に起こったあらゆるよくない事象です。例えばワクチン接種後に、交通事故にあったり食中毒になったりした場合も、「ワクチン接種後の有害事象」として報告されます。
また、今回接種体験談を寄せられた方の場合、ワクチン接種「前」の1年間で、蕁麻疹が1カ月近く続き皮膚科を受診した経験、また、月経が5日ほど早まった月経不順が一度だけあったそうです。いずれもそれまでにはなかった不調で、原因不明のまま改善したそうですが、もしこれらの不調がワクチン接種「後」のタイミングで起こっていたら、ワクチン以外に原因が考えられないからワクチンの影響だと考えていただろうと話していました。
毎日変わらず健康と感じていても、身体の中では日々多くの変化が起こっています。身体には常にさまざまな病原体が侵入しようとしてきますし、それを免疫細胞が防御することで、恒常性が保たれています。初期に防御している間は、症状は出ません。ワクチン接種後の副反応や経過など、さまざまな報告や体験談などを見ながら、冷静に正しく判断されるのがよいかと思います。