ヘルスケアベンチャー大賞受賞者の活動報告(後編)

2021年6月25日(金)~27日(日)国立京都国際会館で開催された「第21回日本抗加齢医学会総会」において、日本抗加齢医学会イノベーション委員会による「イノベーション委員会シンポジウム」が開催された。シンポジウムでは過去2回のヘルスケアベンチャー大賞受賞者による講演も行われ、受賞後のトピックなどをはじめ、現在の取り組みや展望について報告がなされた。

研究開発の成果が結実!
機能性ショートペプチドが化粧品材料に採用

第 1 回ヘルスケアベンチャー大賞 大賞受賞
「ペプチドがサポートする未来」
受賞者:橋弥 尚孝(アンチエイジングペプタイド株式会社、カルナ・メドサロン)

橋弥 尚孝氏(アンチエイジングペプタイド株式会社、カルナ・メドサロン)

橋弥 尚孝氏(アンチエイジングペプタイド株式会社、カルナ・メドサロン)

 

『機能性ショートペプチドによる化粧品材料の開発』で第1回ヘルスケアベンチャー大賞を受賞したアンチエイジングペプタイド株式会社の橋弥 尚孝氏は、まず同社が起業するきっかけとなった新規配列のペプチド「AG30」について説明。

「AG30の機能解析を進めていくと血管新生作用、抗菌作用、線維芽細胞への作用、免疫応答作用など多彩な機能を有していることがわかった。当初は創傷治療薬開発を目指した取り組みを開始したが、この機能を切り分けることで薬品や消毒液、化粧品など他分野へ応用できないかと、配列を改変した“AG30改変体”の作製に取り組んだ」と語った。
 

講演の様子

講演の様子

 

改変体の作製にかかるコストについては、「アミノ酸配列を短くし、機能をある程度特化していくことで商品としての流動性も高まり、顕著なコストダウンが可能となった」と説明。徐々に配列を短くし検証を行っていくと、配列を改変することで抗菌活性や線維芽細胞活性化作用の活性バランスが変わることがわかり、それぞれの機能を高めたペプチド作成が可能になったという。

「そこで、創傷治癒目的から化粧品としての利用可能性を探る事に目標転換し、さらに短いペプチドにして線維芽細胞活性化作用が残ったペプチド“OSK-9”を作製した」(橋弥氏)

OSK-9はヒアルロン酸やコラーゲンの産生増加作用も有しており、大手化粧品会社のエイジングケア商品シリーズに採用され、高評価を得ているという。
「科学的裏付けのある高機能素材を化粧品会社の新製品に提供できたことが大きな価値である」と橋弥氏は語った。

同社が成功を収めたポイントについては、「大学の優れた技術シーズの存在(AG301の発見)があってこそ。そしてこれを「START(大学発新産業創出プログラム)」に採択していただけた。事業化を進めることでOSK-9の安全性や有効性も明らかにすることができた」と語った。また、大学とのライセンス契約の折衝、OEM先や販売先(代理店)との折衝などバリューチェーンの構築も重要であったという。

今後の取組としては、大阪大学と共同研究を実施し新たな機能性ペプチドの開発を目指し、販売先の拡大、医薬品としての用途研究、パイプラインの拡充などを考えていると語った。
 

目の動きで認知機能評価!
iPadアプリ配信開始など新しいトピックも

第 1 回ヘルスケアベンチャー大賞 学会賞受賞
「アイトラッキング式簡易認知機能評価法の開発
~基盤技術研究からベンチャー企業・社会実装まで~」
受賞者:武田 朱公(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学、大阪府立病院機構大阪精神医療センター こころの科学リサーチセンター)

武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学、大阪府立病院機構大阪精神医療センター こころの科学リサーチセンター)

武田 朱公氏(大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学、大阪府立病院機構大阪精神医療センター こころの科学リサーチセンター)

 

『スマート端末の顔認証機能を利用した認知機能の簡易スクリーニング法開発』で第1回ヘルスケアベンチャー大賞 学会賞を受賞した大阪大学の武田 朱公氏は、高齢化に伴う認知症患者の急増が社会に負担を強いている現状をあらためて説明。世界の認知症患者は2050年に1億3000万人を超えるといわれ、日本では65歳以上の5人に2人が認知症かその予備軍といわれる。

認知症問題解決の最大のカギは「早期発見」だ。早期発見→早期介入(生活習慣の改善・予防)により、認知症の発症は大幅に減らすことができることが明らかになってきているが、実際のところは発見が遅れていることが多いという。

「従来の一般的な認知機能検査は医師との問診形式で15分~20分ほどのテストだが、早期発見しようと思った場合、比較的健康な方にこの検査を行うと、緊張や焦りなどで心理的ストレスも大きく、それが結果にも影響してくる。認知症診断の最大のボトルネックはこの最初の検査ではないか。もっと低ストレスで、短時間で、人的労力も必要とせず、高コストではなく簡便に認知機能をスコア化できないかと考えた」(武田氏)

そこで武田氏が開発したのが「視線検出技術を利用した簡易認知機能評価法」だった。認知機能を評価するタスク映像を見て、その目の動きを検出し記録。視線データ解析に基づいた認知機能スコアリングを行うものだ。

「従来の認知機能検査と比較しても非常に相関性の高い認知機能スコアが短時間(2分50秒)で得られるようになった」(武田氏)

 
講演の様子

講演の様子

 

この取り組みは「START(大学発新産業創出プログラム)」に採択され、汎用性の高いスマート端末でも使えるようにすべく、iPadアプリの開発が行われた。iPadのカメラの深度センサと顔認証技術を利用したアイトラッキングアプリである。その後、大阪大学発のベンチャーとして株式会社アイ・ブレインサイエンスが設立され、2020年9月にアプリ「MIRUDAKE」の配信が開始されている。

「iPadを使って短時間に簡単に高精度の認知機能評価が得られるため、医療機関や製薬会社の治験、住民健診や老人ホーム、介護施設、健保、運転免許センター、バスやタクシーの事業会社でも利活用できる」(武田氏)

現在この「アイトラッキング式認知機能評価法」は、アプリとして配信される「MIRUDAKE」と、医療機器承認を目指し、プログラムの治験が始まっている「認知機能スコアリングアプリ」がある。さらに検出精度の向上とAIの搭載などを目的とした第二世代アプリも開発段階にあるという。

今後の展望について武田氏は、「2020年には文部科学省の『科学技術への顕著な貢献2020』にて業績が評価され選出されるといったトピックもあった。引き続き医療機器プログラムの開発を続け、世界初の“認知機能をスコア化する”医療機器ソフトを目指していきたい。また、認知機能検査の国際標準化を目指した海外展開も考えている」と語った。
 

第3回ヘルスケアベンチャー大賞 アイデア募集中!

応募締切:2021年8月6日(金)まで
開催概要はこちらから

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