生命保険

コロナの影響は? 2020年度の42社の生命保険会社の業績。契約件数は?

生命保険会社の2020年度の決算内容が各社から発表されました。2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響が大きく表れていますが、保険会社によっては好業績もあります。今回は生命保険各社の契約件数に着目してみました。

松浦 建二

執筆者:松浦 建二

医療保険ガイド

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2020年度は、保険会社の顔ぶれに変化はありませんでしたが、2021年度に入って4月1日付でソニーライフ・ウィズ生命がソニー生命に吸収合併されました。

また、朝日生命が設立準備をしていた新会社が2021年4月になないろ生命として開業し、10月から生命保険販売の開始を予定しています。今回の決算内容は2020年度(2020年4月~2021年3月)のもので、例年遅くても6月初旬には各社出そろいますが、この原稿を書いた2021年6月25日現在、FWD富士生命がまだ発表していません。そのため、記事ではFWD富士生命を除いた41社の決算内容になっています。
 

個人保険の新契約件数は25社が前年比マイナス

最初は生命保険会社全社の個人保険の新契約件数を、件数が多い順に並べています。各社の決算内容をそのまま載せているので、件数の単位に千件と件が混在しています。「-」は件数がありません。新型コロナウイルス感染症の影響を確認できるよう、2019年度の新契約件数と2019年度比、さらに新型コロナウイルス感染症が全く影響していない2018年度の数字も載せておきます。
個人保険,新契約件数

個人保険の新契約件数の推移

2020年度の新契約件数が最も多いのは日本生命で、1年間で379万6千件の新契約がありました。1日あたり1万件強のものすごい数ですが、前年度に比べて92万件(19.5%)も減っています。2番目に多いのは第一生命の324万2000件で、前年度に比べて138万件(29.9%)も減っています。日本生命と第一生命だけでなく営業社員が対面で保険募集することが多い保険会社では、新型コロナウイルス感染症によって対面が難しくなったことで、このような結果になったと考えられます。全社(FWD富士生命を除く)の新契約件数を単純合計すると約1678万件で、前年度に比べて約380万件減っています。

新契約件数を割合でみて最も大きく減らしたのはかんぽ生命で、前年度に比べて80.6%も減っています。かんぽ生命は2019年度も前年度比で37.7%減っており、2年前と比べると実に約93%も減っています。かんぽ生命は不適正な保険募集により積極的な営業活動を自粛していることが大きく影響しています。

新型コロナウイルス感染症による影響は非常に大きいですが、新契約件数を増やしている保険会社もたくさんあります。メディケア生命は医療保険の新商品の評判が良く、太陽生命はコロナ保険が話題となり、SBI生命やライフネット生命は対面しないネット中心の営業スタイルが追い風となっています。
 

個人年金保険の新契約件数は6社でシェア90%

次は個人年金保険の新契約件数を契約件数が多い順に並べています。個人年金保険は新契約が全くない保険会社も多く、数字が入っていない保険会社は表に載せていません。
個人年金保険,新契約件数

個人年金保険の新契約件数の推移

個人年金保険の新契約件数が1万件以上ある生命保険会社は、わずか9社しかありません。個人年金保険の新契約件数は超低金利の影響で大きく減っており、この1年間でも業界全体で約27%も減っています。このまま縮小が続くと、個人年金保険は特別な人が加入する保険となってしまい、個人年金保険料の所得控除がなくなってしまわないか心配です。

個人年金保険の新契約件数が最も多いのは日本生命の20万2000件、2番目に多いのはソニー生命の12万7000件となっています。全社を単純合計すると約67万件で、そのうちマニュライフ生命までの6社で占める割合は90%にもなり、前年の87%からさらに寡占化が進行しています。
 

個人保険の保有契約件数はコロナでも29社が前年比プラス

今度は個人保険の保有契約件数について、件数の多い順に表にしてみました。新契約は1年間の新規の契約ですが、保有契約は新契約の積み重ねで、現在有効な契約の総数といえます。
個人保険,保有契約件数

個人保険の保有契約件数の推移

個人保険の保有契約件数で最も多かったのも日本生命で、前年度より2.1%増えて2971万4000件となっています。3000万件の大台が見えてきました。2番目はアフラック(2380万4000件)、3番目は第一生命(2027万4000件)で前年と同じ顔ぶれです。

保有契約件数では新契約のような大幅な減少はなく、新型コロナウイルス感染症の影響はあっても前年比マイナスは11社しかありません。逆にメディケア生命やネオファースト生命、はなさく生命等の新しい保険会社では大幅な増加も見られます。

保有契約件数を単純に合計(FWD富士生命を除く)すると約1億8866万件になり、前年度に比べて約260万件増えています。保有契約件数の多い10社のシェアは約74%で、前年とほとんど変わりはありません。人口は減っているのに保険契約件数が増加しているのは、それだけ不安な時代なのかもしれません。
 

個人年金保険の保有契約件数が前年比プラスなのはわずか9社

最後に、個人年金保険の保有契約件数を多い順に表にしました。
個人年金保険,保有契約件数

個人年金保険の保有契約件数の推移

個人年金保険の保有契約件数でも日本生命が最も多く、413万7000件(前年度比1.2%増)となっています。2番目は住友生命(318万3000件)、3番目は明治安田生命(235万8000件)で、前年度と変わりありません。個人保険と個人年金保険の新契約件数・保有契約件数の全てで日本生命が最多となっており、特に急激な変化があまりない保有契約件数では、しばらく日本生命の定位置となりそうです。

個人年金保険の保有契約件数を単純に合計(FWD富士生命を除く)すると約2077万件になり、今年度も前年度に比べて減っています(45万件減)。老後への備えとして一定の役割を果たしている個人年金保険ですが、低金利が続く限りこの傾向は続くのかもしれません。


2019年度の終わり頃から新型コロナウイルス感染症が広がり、生命保険業界は大きく影響を受けています。対面を回避して生命保険へ加入する方法を増やす等の努力を各社でしていますが、コロナ前の件数に戻るにはもう少し時間がかかりそうです。

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