Suchmos、King Gnu、藤井風の共通点は?
「どこにいたの 探してたよ 連れてって 連れてって」……爽快感あふれるフレーズで大ヒットの藤井風「きらり」。Honda「VEZEL」のCMソングとして書き下ろされた曲です。このほかにもHondaのCMといえばSuchmos「STAY TUNE」、King Gnu「小さな惑星」、Friday Night Plans「HONDA」などハイセンスで先進的な楽曲を積極的に使用することで知られており、特にSuchmosはHondaのCMがきっかけで国民的人気アーティストにのし上がったといっても過言ではありません。
CMソングは令和に再注目のシェアコンテンツ
CMソングは「持ち運び、シェアできるもの」。YouTubeやTikTokの動画やテレビCMを視聴した体験自体は可視化しづらいですが、音楽、それも短いCMソングなら口ずさむことができますし、インパクトのあるセリフやダンスを友達とシェア(共有)したり、店頭で思い出すことができます。昨今はYouTubeの5秒広告やTikTokなど「3秒でインパクトを残す」時代となり、CMの15秒(あるいは30秒のロングバージョン)はむしろ丁度良い長さだと感じる人も増えているようで、15秒にクリエイターのこだわりと技術が結集した芸術作品も数多く生まれているのです。
そもそもなぜ「15秒」?
昭和~平成の時代より、CMソングから数々の大ヒットナンバーが誕生しています。そもそもCMはなぜ15秒が主流なのでしょうか? 高度経済成長で消費が急速に拡大した1960年以降に、30秒より短くキャッチーに要点を伝えられる15秒が定着したという説が有力ですが、人間の脳の記憶を司る海馬が情報分別のために記憶できる限界が15秒程度という説もあります。
J-POPのサビの一番旨味となる部分がおよそ15秒程度という説は、「CMでの起用を意識して15秒程度に収めるようになっていった」という説もあり、卵が先か鶏が先かという話になりそうです。
いずれにしても、冒頭に挙げたSuchmosや藤井風以外にも、最近だと竹原ピストルの「よー、そこの若いの」(住友生命)や、TikTokのCMソング「Myra」で注目を集めたTani Yuukiなど、「一度聴いて覚えられるフレーズ」×「圧倒的な歌唱力」×「インパクトある映像作品」の三乗がヒットの法則となっています。
「寄り添う」安心感と心地よい韻を踏む歌唱が特徴のTani Yuuki。「キュンです」「うっせぇわ」のようなフレーズのインパクトとは対極にありますが、オーガニックな音楽=身にまとう音楽=おしゃれとして、女性TikTokerにカバーされたり、Instagramのリールで使われたりといった波及も見せています。
令和の「視覚疲れ」に一石投じるCMソング…企業イメージ向上にも
かつて「ストレス」「癒し」が一大ブームとなった1998年には、坂本龍一のピアノ曲「energy flow」が三共「リゲインEB錠」のCMソングとして社会現象を巻き起こしました。あれから四半世紀が経過した2020年代は、スマホやSNSの普及で視覚疲れが指摘されています。
画面を積極的に見ていない、ながら見(どころかつけてるだけ)の人に訴える点でも、「能動」でなく「受動」(受け身)の人にまで届けることができるのはやはり音ということで、CMソングに再び注目が集まっているようです。
秀逸な音楽を使ってハイセンスなCMを作ることは、企業・製品のブランドイメージの向上にも寄与しています。大塚製薬「ポカリスエット」もその典型例。2021年4月公開「でも君が見えた」篇では、うねる廊下を駆けるダイナミックな映像が、CGを使わずに制作されていると話題になりましたが、同時にCMソングも注目されました。
CMソングはネクストブレイクアーティストの宝庫!
ポカリスエットといえば、「ポカリスエットゼリー」の2016年公開CM「青い夢」篇で、当時デビュー間もない新人アーティスト・高井息吹を起用し「この歌声は誰?」と話題になりました。
著名なアーティストや往年のヒット曲のリバイバルで注目させるCMも多い一方、楽曲使用料を抑えつつ「名より実」でインパクトのある若手アーティストを積極的に登用するCMも日々量産されています。
あなたが何気なく聴いて口ずさんでいるCMソングの中にも、次世代をリードするトップアーティストの卵が眠っているかもしれませんね。
【参考】
※1:藤井風 公式HP(https://fujiikaze.com/music/%e3%81%8d%e3%82%89%e3%82%8a/)
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