日本脳炎・おたふく風邪のワクチンが品薄に? 予防接種が延期になる子どもも

赤ちゃん・子どもの予防接種

子どもの健康を守るために大切なワクチン。もしスケジュール通りに接種できなかったら……

乳幼児期はさまざまな予防接種を受けるため、スケジュール管理に頑張られている親御さんも多いことと思います。そのような中、日本脳炎とおたふく風邪のワクチンが品薄と報道されています。子どものワクチン不足の原因と、再開のめどはいつ頃なのか、またそれまでに周りの大人がすべきことを解説します。
 

ワクチン不足の原因は? 新型コロナウイルスワクチン開発とは無関係

新型コロナウイルスのワクチン開発が影響しているのではないかと考える方もいるようですが、今回のワクチン不足は新型コロナとは全く無関係です。

新型コロナウイルスワクチンは現在、海外からの輸入品が使用されています。日本で承認されているものは、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカで製造されているワクチンです。これに対して、おたふく風邪ワクチンは武田薬品工業と第一三共で製造され、日本脳炎ワクチンは阪大微生物病研究会とKMバイオロジクスで製造されています。

ちなみに、日本で新型コロナのワクチン開発をしている企業としては、ジョンソン・エンド・ジョンソンのウイルスベクターワクチンをヤンセンファーマが治験を実施しています。また、武田薬品工業は、米ノババックスが開発した組換えタンパクワクチンを国内で生産・供給することになっており、現在治験中です。アンジェスがDNAワクチン、塩野義製薬は組換えタンパクワクチンの開発し、KMバイオロジクスと第一三共も治験中です。アストラゼネカは日本の国内で製造する方針を立て、ワクチン原液をJCRファーマが製造を担当し、第一三共、第一三共バイオテック、MeijiSeikaファルマ、KMバイオロジクスが国内での製剤化や流通を担うことになっています。

新型コロナウイルスワクチンは、まだ日本脳炎ワクチンやおたふく風邪ワクチンを製造している国内工場で製造する段階ではないので、今回のワクチン不足はあくまでワクチンの製造工場の問題と考えられます。
 

日本脳炎・おたふく風邪はそもそもどのような病気か……症状・危険性

■日本脳炎の特徴・症状
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスによって起こる感染症で、コガタアカイエカに刺されることで感染します。ウイルスに感染しても日本脳炎を発病するのは、100~1,000人に1人程度であり、多くは無症状です。高齢者に多く、学童期でも見られます。感染から発病までの潜伏期間は、6~16日。主な症状として、数日間の高い発熱、頭痛、悪心、嘔吐、眩暈などが挙げられます。

発病率は低いといえども、発病後の死亡率は20~40%で、幼少児や老人では死亡の危険性が大きいです。特効薬はなく、てんかんや麻痺、精神発達遅延、精神障害などの後遺症は45~70%見られます。さらに詳しくは「日本脳炎の感染経路・症状・予防・後遺症」をご覧ください。

■おたふく風邪の特徴・症状
おたふく風邪はムンプスウイルスによって起こる感染症で、感染から発病までの潜伏期間は2~3週間(平均18日前後)です。症状は、発熱、片側あるいは両側の耳下腺、唾液腺の腫れなどがあり、1~2週間で良くなります。

4歳が最も多く発症し、4歳以下が約半数を占めます。最も多い合併症は髄膜炎で、その他髄膜脳炎、睾丸炎、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合があります。感染しても症状が現れない不顕性感染は、30~35%に見られます。合併症としての無菌性髄膜炎は症状の明らかな例の約10%に見られています。思春期以降では、男性で約20~30%に睾丸炎、女性では約7%に卵巣炎を合併するとされていて、おたふく風邪による難聴は約1000人に1人発症すると言われています。治療方法や特効薬はなく、自然に治る可能性がかなり少ないです。さらに詳しくは「おたふく風邪(流行性耳下腺炎)の症状・写真・治療法  」をご覧ください。
 

日本脳炎・おたふく風邪ワクチンを受けるべき年齢

日本脳炎ワクチンは、4回接種する必要があります。初回は生後6カ月から可能ですが、推奨される年齢は、3歳~4歳の期間に6~28日までの間隔をおいて2回、追加接種は2回目の接種を行ってから概ね1年を経過した時期に1回の接種を行います。2期接種は9歳~10歳までの期間に1回の接種を行います。

おたふく風邪ワクチンは、定期接種ではありませんが、1~2歳に1回、6~7歳に1回接種の2回接種が望ましいとされています。
 

ワクチン再開の時期は? 再供給の目途・見通し

武田薬品工業が販売しているおたふく風邪ワクチンは、山口県で製造されています。今回問題になったのは、ワクチンの製造工場内で、設備を無菌化するために使用しているエアフィルターに不備があったことで、このために製造したワクチンを廃棄することになってしまいました。そのため、再度供給可能になるのは10月末とのことです。

阪大微生物研究所が製造している日本脳炎ワクチンは、香川県の工場内で2020年11月から12月で原液の製造工程で不純物が発生したという理由で、製造が中止となっています。供給可能になるのは2021年12月になるようです。
 

該当年齢にもかかわらずワクチンが受けられない場合、親にできること

日本脳炎ウイルスに感染しても発症するのは100人から1000人ですが、発症すると治療法がなく、後遺症を残す可能性が高いです。おたふく風邪は、流行すると無症状で感染する不顕性感染がありますので、集団生活で流行しているときには注意が必要です。そのため、本来ワクチン接種ができる状態ならば、接種をしておくことが大切な病気です。

しかし現在のように特殊な事情でワクチン接種が受けられない場合は、病気に対して少しでも対策を行うしかありません。日本脳炎は蚊が媒介になるので、特に夏場は注意する必要があります。虫除けスプレーなどで蚊に刺されないようにしましょう。おたふく風邪は、流行時期になるべく集団生活を控えることも1つの有効な予防策です。
 

ワクチン接種はできるタイミングですることが大切

今回のワクチン不足は工場の製造工程での不備があったためですが、ワクチンの安定供給は非常に重要なことです。

今回のようなアクシデントではなく、ワクチンを打たない人が増えてワクチンの供給が今よりも少なくなるようなことが起こると、製薬メーカーは生産を控えることになります。これにより、再びその感染症が深刻な被害を出し始めても、すぐには安定供給できない状況も起こり得ます。推奨されているワクチンをしっかりと受けていくことで、続く代の子どもたちにも安定した接種が行われます。ワクチン忌避などの誤った情報に惑わされずに、正しい知識をもってワクチンを受け、子どもたちの健康を守っていくことが大切です。

また、1社1工場でのワクチン生産では、何かあった時に今回のように安定供給ができない事態に陥ってしまいます。国は国民の健康を守ることが義務でもあるわけですから、ワクチンは国策として、しっかり開発、製造していくように望みたいところです。確かにワクチンの副反応の問題はゼロではありません。しかし、感染症を減らし、社会全体を守っていくためには、集団免疫をつけていくしかありません。国としてはワクチン不足が起こらない体制を作っていくこと、個々人はワクチン接種ができる時に適切に接種していくことが大切です。
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