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バカでも入れる? 偏差値35未満「Fラン大学」が定員割れの進む「大学全入時代」に増えた実態と今後

「Fラン大学」ってご存じでしょうか。大手予備校が受験偏差値を設定できない(ボーダーフリー)大学として呼んだことが始まりのFラン大学。最近では、誰でも入れるおバカな大学という意味も込められていますが、その実態はどうなのでしょうか?

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

偏差値35未満? 誰でも入れるおバカな大学「Fラン大学」とは

おバカでも入れるFラン大学!偏差値が極端に低く、中学校の英語から復習するところもあるなど大学教育もままならないその実態とは?

Fラン大学は偏差値が極端に低く、大学教育もままならないという……その実態とは?

「Fラン大学」とは偏差値が35未満と極端に低く、合否判定の目安となるボーダーラインが設定できない大学の総称です。もっと広い意味では、基礎学力が十分ではない学生が多いせいで、大学教育がままならない大学のことを指します。中には、中学英語から復習しないと授業が成り立たない大学もあるほどです。

Fラン大学の背景には、少子化が関係しています。1990年代に約200万人だった18歳人口は、120万人弱まで減少しました。そんな中、90年代は30%前後だった大学進学率が、直近では約55%にまで上昇しています。

つまり、少子化が進んでいるものの、大学生の数自体はそれほど減っていないということです。さらには、この間、国は大学の数をどんどん増やしたため、次第に定員を満たせない大学が増えてきました。

こうして、大学志願者より大学定員の方が上回る、いわゆる「大学全入時代」を迎えました。Fラン大学は、このように大学の定員を満たせないことが背景にあります。
 

「大学全入時代」へ突入し、ゾンビのように生き残るFラン大学

大学全入時代を迎えると、経営破綻する大学が続出するのではないかと懸念されていましたが、今のところそのような実態は見られません。つぶれると思われた大学が、なぜかゾンビのように生き残っているのです。

その大きな理由が入試形態の多様化です。中でも、私立大学を中心に推薦型入試で入学者を確保する大学が出てきたことがあるでしょう。

これまでの大学入試では、受験教育と揶揄されるように知識偏重になっていたことが問題視されました。この問題に対して、文科省は「過度に学力検査に重点を置かないように、人物重視のAO入試や推薦入試を取り入れる」ことで解決を図ろうとしたのです。

ところがねらいとは裏腹に、学力検査を一切課さずに入学を許可する大学が出てきました。経営上の理由で、学生の質にこだわっている余裕がないためです。この結果、基礎学力が十分でない学生が入ってくる大学が増えてしまったというわけです。

もう少し詳しく説明すると、学力検査で合否が決まった一般入試に対して、推薦入試は高校での定期テストの成績(平均評定値)でほぼ合否が決まりました。このため、一般入試で合格するだけの実力(偏差値)がない生徒でも、そこそこの評定値を持っていれば推薦入試で合格を勝ち取ることが可能だったのです。
模試では「E判定」なのに、推薦なら受かるというねじれ現象が……

模試では「E判定」なのに、推薦なら受かるというねじれ現象が……

実際、模試では「E判定」なのに、推薦入試では合格するという“ねじれ現象”が数多く見られました。個別の大学名は伏せますが、全国レベルで名の知れた難関と呼ばれる大学でも、その傾向は見て取れます。このような大学では、受験偏差値から2.5~5.0ポイントを引いた値が、実際に入学してくる学生の学力(入学者の偏差値)という衝撃の事実もあるほどです。

このように、私立大学の中には推薦入試で募集定員の半分近くを埋めてしまい、残りの半分を一般入試で競わせることにより、見かけ上の偏差値を保っているという学校が少なくありません。これは、受験偏差値という大学のブランドも維持しながら、毎年一定数の学生を確保できるという、まるで錬金術のような仕組みとしていまだに続けられています。
 

Fラン大学に「ザル入試」として悪用もされたAO入試

一般入試を受ける実力も推薦入試を受ける平均評定値もない生徒が、AO入試を使ってほぼ無試験で大学に合格できたケースも問題視されました。

AO入試といえば、率先して導入した慶應義塾大学のように、学力も意欲も高い生徒が入学する新しい形の入試と思われていました。しかし、それはあくまでも偏差値の高い大学での話です。

そうでない大学、特にFランと呼ばれる大学では、一般入試や推薦入試で受からない生徒の“抜け道”としてAO入試が悪用されていたのです。

「浪人させるくらいならAO入試で受かる大学に合格させた方がいいだろう」という進路指導をしていた高校も少なからず存在しました。高校側にしてみれば、大学合格実績にもなるし、受験生の側も「浪人するくらいなら」ということで、お互い利害が一致したということです。

このように、当初は過度に学力検査に偏ってはいけないという理念が、「学力検査なし」で入学を許してしまうザル入試として悪用されてしまったというわけです。
 

「入試」から「選抜」で大学受験は変わるのか?

このように大学側と高校・受験生側の事情から、Fラン大学であってもそこそこ定員を満たせてしまうという実態がありました。しかし、学力検査が全くないことで、基礎学力が不十分なのに大学に合格するという実態を放置するわけにはいきません。そこで、入試改革が行われたのです。

こうして、2021年度より入試の名称も変わりました。
  • 総合型選抜(旧AO入試)
  • 学校推薦型選抜(旧指定校推薦、公募推薦)
  • 一般選抜(旧一般入試)
入試と呼ばず「選抜」という名称が付けられているのには、それなりに理由があります。

実際、ここ数年、以前はほぼ100%に近かったAO入試(現総合型選抜)の合格率が、最近では10~30%程度まで絞られているところがほとんどです。今後、学校推薦型選抜でも学力検査を課すところは増えていくでしょう。

大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」に変わったことは、広く報道されてよく知られるようになりました。その裏で、いわゆる推薦型の入試も、基礎的な学力を身につけているかどうかを見極める「選抜」へと変わろうとしているのです。
 

Fラン大学の生徒は“おバカ”ばっかなの?

ここまで、Fラン大学が存在する背景について紹介してきました。では、実際、Fラン大学には価値がないのでしょうか。

これは地域によっても大学によっても実態が異なるので一概には言えません。例えば、地方の場合、国公立大学以外に私立大学が数えるほどしかないところもあります。そのような地域では、大学で学ぶこと自体が非常に価値がある場合もあります。また、今、看護課程の多くは大学へ移行しています。将来看護師になる学生が、大学で医師、理学療法士、社会福祉士といった他職種と連携することを学べるのは大学ならではのはずです。

一方で、危ないFラン大学もあります。以前のAOや推薦入試のように、「受ければ受かる」ような大学なら赤信号です。また、見かけ上はFランでない大学でも、受験偏差値≠入学者の偏差値と考えると、基礎学力が不十分な学生が多い大学は、もはや大学としての存在意義から疑ってみる必要があります。カリキュラムが高校や専門学校でも学べることだったり、取れる資格も高校や専門学校と変わりのないものだったりした場合、黄色信号といえます。

何が何でも大学へから、必要ならば大学へという発想の転換が必要なのです。

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