感染症

新型コロナウイルス変異株の危険性…感染力を増したN501Yが拡大

【医師が解説】新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るっています。日本でも、イギリスで発見されたN501Yと呼ばれる変異株が増加しており、大阪、京都、兵庫ではほぼイギリス株に置き換わっていると推定されています。今回は従来のウイルスとの違いや、危険性を解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

新型コロナウイルス変異株……インドで猛威を振るう「L452R」「E484Q」

新型コロナウイルス変異株の危険性……従来とは別物と考えるべき理由

日本国内でも新型コロナウイルス変異株の感染が拡大しています。危険性と今摂るべき対策は?

2021年よりインドで流行拡大している新型コロナウイルスはインド株といわれ、「L452R」と「E484Q」の2つが従来の新型コロナウイルスから変異したとみられています。「L452R」は、日本人の免疫から逃れる可能性があり、感染力が増加している恐れがあります。「E484Q」は、南アフリカやブラジルで観測されているように、ワクチンの有効性が低いと思われるウイルスです。こちらも感染拡大する可能性が高いと思われます。
 

日本における新型コロナ変異株の感染拡大状況……N501Yの増加が顕著

日本では、イギリスで発見されたN501Yと呼ばれる変異株が増加しております。変異株の名称はどれもややこしく思われるかもしれませんが、何がどのように変異したものかが示されています。少し専門的になりますが、「N501Y」を例にすると、新型コロナウイルスの表面にあるS蛋白と呼ばれる蛋白の501番目が「N(アスパラギン)」から「Y(チロシン)」に変異したということです。N501Yはより人の細胞に結合しやすく変異しているため、イギリスの報告によると、感染力が1.7倍に強まったとされています。日本でも従来よりも1.32倍の感染力を持つとされています。

他のウイルスの変異と同様、新型コロナウイルスもより感染しやすい株に置き換わっていきますので、徐々にこのイギリス株による感染が拡大しているのが現状です。4月30日での東京都の調査では、検査した389人のうち239人(61%)が変異株と確認されました。大阪、京都、兵庫では、ほぼイギリス株に置き換わっていると推定されています。
 

そもそも変異株とは?「変異種」という言い方は誤り

少し前は「新型コロナウイルスの変異種」という誤った言い方がされていましたが、「変異種」とは、全く別のウイルスに変異した場合を指します。同じウイルスで、遺伝子の変化によって一部の性質が変わった場合は、ウイルスの名称は変わらず「変異株」と呼びます。

ウイルスは増えていくときに遺伝子を複製していきますが、複製の過程で、遺伝子の読み違い、組換えなどのミスが起こることで、作られるタンパク質が変化し、少し変化したウイルスが生まれていきます。つまり、ウイルスが増える過程で変異が起こっていきますので、感染拡大している状況であれば新たな変異株が生まれていくのは自然に起こりうる現象です。コロナウイルスは2週間ごとに変異する可能性があるとされています。
 

感染力の強い変異株ほど拡大傾向……既存のコロナ感染者も再感染の可能性も

当然ですが、変異しても感染力が弱い変異株は徐々に減っていきますし、感染力の強い変異株は拡大していきます。生物学的にいえば、変異株はあくまで同じウイルスです。毎年流行していたインフルエンザも変異を繰り返していますが、別のウイルスではありません。しかし、変異することでそれまでの人の免疫を逃れることになり、より感染が拡大することになりますので、ウイルスとの闘いが続くことになります。新型コロナウイルスにすでに感染して回復した方も、一度かかったから大丈夫と考えるのではなく、別のウイルスと考えて対策を取るべきともいえます。
 

変異株拡大の中、過信は禁物。一人一人がより徹底した対策を

人類史上、常に人は病原性をもつウイルスとの闘いを行ってきました。ワクチンの開発や治療薬の開発によって感染症は徐々に減ってきましたが、人類が唯一勝利したのは天然痘のみです。まだまだいろんなウイルスに感染する可能性があります。

感染症は残念ながら人から人に感染して広がっていきますが、人から人への感染経路さえ判っていれば、正しく対策することは可能です。そのため、今、求められているのは一人一人の感染対策です。

感染症の大流行はある意味で災害ともいえます。政府の対応を批判する声もありますが、批判しても感染症が収まることはなく、自分で自分の身を守る必要があります。感染症への対応で医療機関の対応の限界を超えてしまうと、感染症以外の病気でもスムーズに医療機関を受診することができなくなります。自分や家族が病気になっても家で耐えるしかない状況が起こりうるのです。自分は大丈夫という過信は禁物です。一人一人が積極的に対策を徹底することが、感染拡大の抑制につながります。
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