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5月にクラス替え!? 小学校入学後の「仮クラス」とは?やり方やメリット・デメリット

小学校に入学した後の1年生のクラス分けを「仮クラス」にする学校があります。仮クラスとは、入学時のクラス分けを仮のものとして一定期間を過ごした後、正式なクラス編成を行うというやり方です。具体的な方法やメリット・デメリットを紹介します。

鈴木 邦明

執筆者:鈴木 邦明

子育て・教育ガイド

5月の正式クラス前に編成される「仮クラス」とは?

小学校入学時の仮クラス

小学校入学時の仮クラスには「小1プロブレム」が関係している

近年「小1プロブレム」という問題が指摘されています。小1プロブレムとは、入学後の子ども達が、幼稚園・保育園と小学校との違いにうまく適応できず、学級でトラブルなどを発生させてしまうことです。1年生は“学び方を学ぶ”時期でもあり、その期間の過ごし方が後の学校生活全般の質に大きな影響を与えます。

そこで一部の学校において取り組まれているのが「仮クラス」です。仮クラスとは、入学時のクラス分けを仮のものとして一定期間を過ごした後、改めて正式なクラス編成を行うものです。4月の1カ月間を経て、5月の連休明けから正式なクラスでスタートするケースが多くなっています。仮クラスの間、1年生の担任は1日や2日毎に入れ替わりそれぞれのクラスを順に担当していきます。

全国での実施状況は調査されていないためはっきりしませんが、ごく一部の学校でしか導入されていない状況です。例えば、横浜市の小学校では、約350校のうち十数校で導入されているようです。仮クラスという学級編成のやり方は、学校評議員などの意見を聞きながら、学校長が実施するかどうかを決めることになります。実施している学校が少ないのは、そのメリットは理解できるものの、2回のクラス編成に伴う事務作業の煩雑さを考え、見送っているところが多いのが実際でしょう。
 

仮クラスの編成は「誕生月」や「地域」をもとに行われる

小学校入学時の仮クラス

小学校入学時の仮クラスは「誕生月」「住んでいる地域」をもとに組まれるのが一般的

仮クラスの分け方は、誕生月や住んでいる地域をもとに行われるのが一般的です。

■誕生月別の場合
誕生月別で3クラスにする場合、具体的には「4月~7月生まれ」「8月~11月生まれ」「12月~3月生まれ」と分けることになります。

日本の学校制度では、4月~3月までの1年を単位として学年を区切っています。小学校1年生の場合、4月生まれの子の月齢は4月時点で「72カ月」と、3月生まれの子の「61カ月」に対して1.18倍となっています。これが高校3年生であれば、4月生まれの生徒の月齢は「204カ月」と、3月生まれの生徒の「193カ月」に対して1.05倍であり、あまり大きな差がないことになります。

小学校に入学する頃の子どもの成長は著しく、集団における月齢差が学校の学びの質を低下させる原因になることも起こりえます。通常のクラス分けをした場合、4月~6月生まれの子の方が、入学直後ほど、様々な場面で活躍しやすいのが実際です。しかし、誕生月別の仮クラスを組むことにより、1月~3月生まれの子に対して小学校に慣れるための期間に発達段階に応じた対応がとることができ、クラスの中で消極的になってしまうデメリットを減らすことに繋がるのです。

■地域別の場合
地域別で仮クラスを組むことにより、近所に住んでいる子と知り合いになることができます。小学校入学前は、それぞれの家庭の状況により、異なった幼稚園・保育園に通っているため、近くに住んでいても知り合いでないこともありえます。地域別で仮のクラスを組むことは、そういった子どもや親同士を繋げるという意味合いがあります。

幼保小連携に関する研究では「子どもは小学校入学時、登下校に関して強い不安を感じている」といわれており、地域別で仮のクラスを組むことはとても理に適っているのです。
 

子どもや親にとっての仮クラスのメリット・デメリット

子どもや親にとっての仮クラスのメリットは、本クラスが決定した後、1年生の5月~3月という多くの時間を、ある程度落ち着いた集団で過ごせる可能性が高くなるということです。1年生は様々なことで苦労したり、登校しぶりなどの不適応を起こしやすい時期です。仮クラスを経て改めてクラス編成をすることにより、このような不適応が起こる可能性が低くなります。

その他のメリットとしては、誕生月別で編成された場合、仮クラスの間、発達状況に応じた対応を受けられることがあげられます。また、仮クラスと本クラスとで多くの友達と関わることができる良さなどもあるでしょう。

一方、デメリットとしては、4月に築いた人間関係がリセットされ、仲良くなった友達と1カ月でクラスが離ればなれになってしまう可能性があるということです。また、変化が苦手な子どもにとっては、苦労する機会が増えることにもなるでしょう。
 

学校にとっての仮クラスのメリット・デメリット

通常、1年生のクラス編成は、幼稚園・保育園の関係者から情報を聞いたりした上で行われますが、2年生~6年生までのクラス編成と比べると圧倒的に情報量が少なく、色々な面での偏りが出たりクラスが荒れてしまう可能性が高くなっているのです。それに対し、しっかりと子どもの様子を見極めてから正式にクラス編成できるというというのは、学校にとっての仮クラスの大きなメリットです。

またその他、1年生の各担任が学年全体の子どもを知ることができるという良さもあります。一定期間で各担任が全クラスを見ていくことになるため、全ての子どもと接することができるのです。

一方、デメリットとしては、編成作業に伴う手間が増えることです。本クラスの調整に多くの時間を要することもあります。また、仮クラスで授業を実施する場合、教師が一定の間隔で入れ替わるため、通常クラスにはない学習内容の進度の調整が必要になります。
小学校入学時の仮クラス

小学校入学時の仮クラスにはメリット・デメリットがある

このように小学校入学時の仮クラスには良い点から課題まで様々ありますが、私はメリットの方が多いと感じています。現在、コロナの流行などもあり、学校のあり方や取り組みが問われています。学校現場は現状維持の意識が高く、新しいことに積極的に取り組むところは多くありませんが、仮クラスのやり方も今後、多くの学校に広がっていくと良いのではと思います。

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