ですがそもそも、Apple Watchだけで通話や通信ができることをよく知らない人もいるかと思いますので、改めてその仕組みについて説明しておきましょう。
なぜApple Watchだけで通信ができるのか
実はApple Watchは2017年発売の「Apple Watch Series 3」以降、「GPSモデル」と「GPS+Cellularモデル」の2種類が提供されています。このうちGPSモデルは、従来通りiPhoneとBluetoothで接続して利用するタイプのもので、近くにiPhoneがなければ通話や通信はできません。ですがGPS+Cellularモデルは、組み込み型のSIM「eSIM」を内蔵しており、Apple Watch単体で携帯電話ネットワークに接続し、通話や通信が可能なのです。 それゆえGPS+Cellularモデルであれば、自宅にiPhoneを置いたまま、Apple Watchだけを持って外出しても、電話をかけたり受けたり、メッセージを確認したり、音楽をストリーミング再生したり、Suicaにチャージしたり……と、通信が必要なサービスを一通り利用できる訳です。
Apple Watchでの通信に必要なサービスは大きく2つ
ですがGPS+Cellularモデルだけで通信をするためには、それに対応した携帯電話会社のサービスを契約する必要があります。そのサービスは大きく2つ存在し、1つはiPhoneの電話番号をApple Watchと共有するサービスです。NTTドコモの「ワンナンバーサービス」(月額550円)やKDDIのauブランドが提供する「ナンバーシェア」(月額385円)、ソフトバンクの「Apple Watchモバイル通信サービス」(月額385円)がそれに相当します。いずれも安価な料金で利用できますが、1台のiPhoneの電話番号を共有する仕組みなので、1台のApple Watchでしか通信できないという制約もあります。
Apple WatchのGPS+Cellularモデルで通信するには、iPhoneと電話番号を共有する「ワンナンバーサービス」などの契約が必要になる
スマートフォンの利用が難しい子供やお年寄りなどにApple Watchを使ってもらうことを意識したサービスといえ、電話番号の共有とは異なり複数台のApple Watchを通信可能にできる点が大きな違いとなります。
参考記事:Apple Watchを子どもやシニアに見守りにも活用できる「ファミリー共有設定」とは そしてファミリー共有設定に対応したサービスは、2021年4月時点ではKDDIのauブランドが提供する「ウォッチナンバー」のみ。料金は「ピタットプラン 4G LTE」(新auピタットプランN)と同じで、各種割引を適用しない場合、1台当たり月額3465円からとなります。
ファミリー共有設定を利用するには、KDDIのauブランドが提供する「ウォッチナンバー」を契約する必要がある
メインブランド以外に乗り換えると大幅な制約が
ここまで見れば分かる通り、現在のところApple Watch単体で通信可能にするサービスは、携帯大手3社のメインブランドでしか提供されていないのです。それゆえahamoなどのオンライン専用プランだけでなく、「ワイモバイル」や「UQ mobile」などのサブブランドでも利用できませんし、もちろん楽天モバイルやMVNOなど他社を契約している人も利用できないのです。なのでメインブランドでApple Watch向け通信サービスを利用している人が、低価格のサービスに移行してもApple Watchを使い続けたいのであれば、Apple Watch単体で通信することを諦め、GPSモデルと同様の使い方をするしかなく、GPS+Cellularモデルを購入したメリットが大幅に薄れてしまうのです。
ただ唯一、auのウォッチナンバー利用者がiPhoneの回線をpovoに移行した場合は、例外的にウォッチナンバーを継続して利用することが可能です。しかしながらウォッチナンバーの月額料金はpovoの月額料金(2728円)より高いので、「子供にApple Watchを持たせている」などファミリー共有設定を有効活用している人でなければメリットが薄いことに注意が必要です。
そうしたことから、現在Apple WatchのGPS+Cellularモデルを利用している人は、オンライン専用プランなどに乗り換える際は慎重な判断が必要だということを、よく覚えておく必要があるでしょう。
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