間違った敬語の中には、もはや間違った使い方が一般的になったものもあります。「間違った使い方をしたら絶対にダメ」というわけではありませんが、知らないと恥ずかしい誤用もあります。この機会に間違いやすい敬語について確認してみませんか?
「最近、敬語が乱れている」は、昔からある現象
敬語が乱れているといわれているのは昔から
参考:図解で見る「国語に関する世論調査」
「最近、敬語が乱れている」というのはよく耳にするフレーズですが、敬語は本当に「最近」乱れてきたものなのでしょうか。国会図書館で過去の文献を調べてみたところ、1966年に出版された本にも「最近、敬語が乱れている」という一文がありました(「正しい敬語:あなたは言葉で評価される」大石初太郎著)。「最近の若者は……」というフレーズが昔から使われていたように、言葉の乱れと感じられるものは昔から存在しているのでしょう。
言葉の乱れが全て悪いわけではありませんし、言葉の変遷に近いものもあります。例えば「敷居が高い」という表現は、本来「不義理をしてしまって行きにくい」という意味の言葉でした。しかし「高級過ぎて行きにくい」という意味で使われることが一般的になり、遂には広辞苑にも「高級過ぎて行きにくい」という意味が追記されました。
敬語でも間違った使い方が一般的になり、現在は使用しても問題ないとされているものがあります。例えば「とんでもございません」という言い回しには、みなさんも馴染みがあると思います。「とんでもない」という言葉は、それだけで1つの形容詞です。その一部だけを変える「とんでもございません」は誤用とされてきました。しかし文化審議会の指針で問題がないと発表されて以降市民権を得ています。
今、もし皆さんが間違った敬語の使い方をしていたとしても、それは将来、一般的になるかも知れません。恥ずかしく思い過ぎる必要はありませんし、間違って使っている人に厳しく指摘するのも避けたほうがよいでしょう。
とはいえ、このような前提でも、「あれ?」と思われてしまうような敬語を使ってしまうのは恥ずかしいと感じる人は多いと思います。間違って使われることが多い敬語と正しい使い方を見ておきましょう。
あなたは気になる? 文化庁の調査対象になった「言い方が気になる敬語」
間違い敬語が気にならない人もいる
1)「先生は講義がお上手ですね」 気にならない 67.6%
正しい伝え方例:「先生の講義は素晴らしいですね」
2)「就職はもうお決まりになったのですか」 気にならない 59.5%
正しい伝え方例:「就職はもうお決まりになりましたか」
3)「誠に申し訳なく、深く反省させていただきます」 気にならない 51%
正しい伝え方例:「誠に申し訳ございません。深く反省しております」
4)「規則でそうなってございます」 気にならない 18.5%
正しい伝え方例:「規則でそうなっております」
5)「昼食はもう頂かれましたか」 気にならない 32.5%
正しい伝え方例:「昼食はもう召し上がりましたか」
6)「お客様が参られています」 気にならない 22.6%
正しい伝え方例:「お客様がお見えになりました」
7)「お歩きやすい靴をご用意ください」 気にならない 22%
正しい伝え方例:「歩きやすい靴をご用意ください」
8)「こちらで待たれてください」 気にならない 18.7%
正しい伝え方例:「こちらでお待ちください」
皆さんはどの言い方が気になったでしょうか。続いて、一般的に間違いやすいと言われる敬語についても見ておきましょう。
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