そのように検索することで流行が分かったり、同じ趣味関心の仲間を募ったりもできる一方で、闇取引などに悪用されたり、最近では主義主張表明などにも使われている。Twitterのハッシュタグ利用の今について見ていきたい。
Twitterのハッシュタグは情報検索や仲間募集だけでなく、危険な使い方もされている
精子ドナーを求める個人間取引利用も
Twitterで、何と精子取引が急増している。Twitterで「#精子ドナー」「#精子提供」などのハッシュタグで検索すると、精子を提供するという男性からの投稿が多数見つかる状態だ。不妊カップルの間で、妻側とだけでも血がつながった子どもがほしいと第三者の精子で行う人工授精(AID)を希望する例は多い。ところがそもそも年単位での待ちが必要な中、コロナ禍で無期延期になるなどしており、業を煮やした人たちの間でSNSを通じた個人間取引が行われているのだ。
ボランティアとして精子を提供している人もいる一方、中には明らかに性行為を目的としたらしいユーザーもおり、「国立大卒イケメンです」などという自己紹介も信用できるか怪しいものだ。実際、過去にSNSで知り合い精子を提供した男性が、国籍を偽った上既婚という事実を隠していたとして訴えられた例もある。このような取引に対しては現在、法による規制などがない状態であり、思わぬトラブルに発展する可能性もありそうだ。
Twitterではライブなどのチケットをゆずる行為も多く行われているが、そもそも使えないチケットだったり、支払ったのにチケットが送られてこないなどのトラブルも多発している。個人間取引はリスクが高く、相手を見極めることの難しさが課題となっている。
闇取引や闇バイト募集に使われるハッシュタグ
闇バイトや闇取引なども、TwitterなどのSNSでハッシュタグを通じて募集、取引されている。「#闇バイト」「#裏バイト」「#高収入」「#受け出し」などのハッシュタグ付きで、受け子や出し子などを募集している投稿は多い。受け子とは振り込め詐欺などの特殊詐欺で、被害者から直接金品を受け取る役割を指す。出し子はATMを使って金銭を引き出す際に防犯カメラに映る等、それぞれ逮捕されるリスクが高くなっている。最近は警察署などのアカウントが直接投稿者に違法性を言及、募集を停止させる例が目立つようになった。
「#闇バイト」などとTwitterで検索すると多数の求人が出てくる
連絡先として無料通信アプリ「テレグラム」のIDを掲載していることも多い。テレグラムは暗号化技術を使うことで通信内容を保護し、消去後の復元が困難なアプリだ。それ故、暴力団関係者や特殊詐欺グループなど犯罪に関する連絡手段として利用されることが多くなっている。
このような投稿の問題点は、そもそもの違法性だけでなく、「#高収入」や「#高額バイト」などの犯罪等とは無関係なハッシュタグや、「#鬼滅の刃」などの人気ハッシュタグをつけていることも多い点だ。このようなハッシュタグを利用することで、収入が減って生活が苦しいとか、高収入に興味があるだけの一般人が投稿を見るきっかけとなってしまっている。興味半分で連絡をした人が犯罪に巻き込まれる可能性もあるというわけだ。
潜在的被害者や一般人が知るきっかけにも
一方で、ハッシュタグは主義主張を広める使われ方もされている。例えば2020年5月には「#検察庁法改正案に抗議します」が500万以上のツイートに使われた。芸能人等も多く参加して話題となったので、覚えている人も多いだろう。他にも、「#国民投票法改正案に抗議します」「#種苗法改正に反対します」など、多くの政治的ハッシュタグがトレンド入りしている。
これは「Twitterデモ」とも呼ばれている。直接集まらずとも、自分の意見や考えを表明できるオンライン上のデモともいうべき使い方だ。
セクシャルハラスメントや性的暴行の被害を訴える「#MeToo」、職場での女性のハイヒール強制に抗議する「#KuToo」などのハッシュタグは、実名で投稿されたものも多かった。これまで沈黙されていたことを公言することで、被害をなくそうという運動だ。
このようなハッシュタグを使った意見表明は、意見を広く分かりやすく伝えることに効果的であり、実際にメディアなどで多く取り上げられ、その結果、実社会において改善されたことも多い。
フェミニズム運動は、これまではごく一部の人のものだった。しかし、ハッシュタグ化してSNSの中で使われることで、これまで意識していなかった潜在的な被害者に届いたり、それまで関心を持たなかった一般人に知るきっかけを与える効果につながっている。
これまで述べてきたように、ハッシュタグには、問題点が分かりやすくなったり、話題になったり、これまでリーチできなかった層にリーチできるなどのメリットがあり、そのような建設的な使い方も目立つようになってきた。
一方で、興味がなかった一般人が犯罪投稿などに接するきっかけとなる危険性にもつながっている。正しく使えば良いものだが、悪用されることも少なくないので、利用には注意が必要だ。今後も新しい使い方がされる可能性があるハッシュタグには、今後も注目していきたい。
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