なぜ韓国に画像データを置いていたのか
では、なぜLINEは画像データを韓国に置いていたのか。LINEの舛田淳CSMOは「画像や動画のデータはテキストのメッセージに比べてサイズが大きい」とした上で「日本だけではなく、アジア圏、中東、ロシアに向けて、データの遅延が小さくなる場所を探した。セキュリティが担保され、人材がいる。コスト面も条件だった」という。
LINEはかつてロシアや中東でも人気のメッセンジャーだった。これらの地域でも、快適に画像や動画のデータをやりとりできる場所として、韓国が候補に挙がったようだ。また、LINEの親会社が、韓国NAVER社だったことから韓国のデータセンターが選ばれたとのことだ。
韓国で保管しているデータは、日本のデータセンターに統一する
可能性としてはLINEだけではない
現在、LINEだけがメディアなどで問題視されているが、立地、技術、コスト面でデータセンターの場所として韓国が選ばれたとするならば、LINE以外のSNSや個人情報を扱うWebサービスも韓国のデータセンターを利用していることも考えられる。アメリカ企業のSNSも、イメージとしてはアメリカのデータセンターを採用していると考えられるが、アジアや中東向けのデータに関しては韓国で保存されている可能性もゼロではなさそうだ。
今回を契機に、LINE以外のSNSやWebサービスも「個人情報はどこのデータセンターを使っているか」といった情報開示が必要になってくるかもしれない。
今回、騒動が大きくなったのは、日本において、LINEのユーザーは8600万人以上いるという点があるだろう。スマホを持つユーザーの大半がLINEをインストールして使っている。そのため、政府や地方自治体などが公式アカウントを設け、住民に向けて情報発信をしている。
やはり、政府や地方自治体としては、扱うデータや個人情報が、中国に筒抜けになっていては、LINEの活用に二の足を踏んでしまうのは仕方ない。
LINEでは政府や自治体向けのLINE公式アカウントのデータアクセスに関しては、完全に日本国内に制限するとしている。データの保管場所についても2021年8月までに国内に移転する。
一部の自治体では、コロナワクチン接種の予約をLINEで受け付けているところもあるが、予約システムに関するデータは国内のデータセンターのみに保管し、国内からのみアクセスできるとしている。
LINEとしては個人情報などに関して、すでに国内への移管を計画していたようだが、今回の騒動が起きたことで、計画を前倒しで進めていくようだ。
LINEは無料のメッセンジャーから、ゲームや音楽、決済や金融、広告など事業範囲を大幅に拡大。2021年3月からはYahoo!を傘下に持つZホールディングスと経営統合している。
これまで急ピッチで成長してきたLINEであるが、個人情報保護という点においては、先延ばしし、ややおざなりになっていたのかもしれない。
LINEは国内のIT企業の中でも、もはやユーザーの生活に根ざした社会インフラと言える。この騒動で、ユーザーには不信感が広がってしまったが、これを契機にしっかりと個人情報保護を徹底してもらいたいものだ。