家計・企業ともに金融資産残高は過去最高
四半期ごとに日本銀行が公表する「資金循環統計」によれば、2020年12月末に家計が保有する金融資産残高は1948兆円になりました。1年前と比較すると55兆円もの金融資産額が増えたことになります。比較可能な2005年以降では過去最高額になります。過去最高額になった背景は、昨秋以降に世界的に株価が上昇していることから株式や投資信託の評価額が上昇したこと。コロナ禍で外出が自粛されたことから消費が控えられたこと、政府が出した1人10万円の特別定額給付金が預金に回ったことなどが挙げられます。
企業が持つ金融資産も12月末時点で1275兆円となり、個人と同じく過去最高を更新しています。政府が用意した無担保・実質無利子の融資制度などを利用して金融機関から借入を増やしたこと、持続化給付金などの給付金により「現金・預金」が前年比で16.6%と大幅に増加したことがその要因と考えられています。
100兆円を超えたタンス預金
コロナ禍で収入減となっているにもかかわらず家計の金融資産残高は過去最高を更新しています。持っている人と待たざる人の差が顕著に開いた結果といえそうですが、その内訳を見ていくことにしましょう。金融資産全体の5割超を占める「現金・預金」は、前年と比較して4.8%増の1056兆円になりました。前年比で4%以上の増加率は3期連続で、前年比での増加は既に11年前後も連続しています。現金と預金を個別にみてもそれぞれ過去最高を更新しており、いわゆるタンス預金(現金)は101兆円となり初の100兆円超えとなっています。
タンス預金が100兆円超えになった背景は、コロナ禍で外出の自粛などでATM(現金自動預け払い機)の利用頻度を減らし、1回当たり多めに引き出したことが一因と考えられています。政府が出した1人10万円の特別定額給付金なども預金を大幅に増やした要因のようです。
株式等も前年比で残高を0.7%増やし198兆円になりました。コロナショックにより前年比で15.6%も減少させた2020年3月末と比較すると、四半期ごとに減少率は縮小し、4四半期ぶりの増加になりました。増加になったものの、金融資産残高全体に占める割合は10.2%に過ぎないことから、株価上昇による資産効果は一部に限られるようです。
投資信託は2四半期連続して残高を増やしており、前年比5.1%増の78兆円となりました。株価の上昇は国内だけでなく、世界同時株高となったことがその要因と考えられます。
保険の金融資産全体に占める割合は2割を下回る
債務証券、いわゆる「債券」の残高は、前年比で増加の状況が8四半期以上継続しています。前年比で2%増の26兆円になりました。増加が続いているものの、その残高の金融資産全体に占める割合は1.4%に過ぎません。金利が低い状況が続く限り、残高が大幅に増加するのは難しいといえそうです。日本人が好きな「保険・年金・定額保証」は、3四半期連続の増加が続き前年比で0.3%増の531兆円となっています。このうち保険は前年比0.3%増の376兆円です。増加は継続しているものの金融資産全体に占める割合は19.3%と20%を下回っています。
全体というマクロで見ると、家計の金融資産は2年連続過去最高を更新しましたが、実際は大幅に増やした家計と減らした家計があるようです。平均に近い約3.0%増の家計は少ないように感じられ、中間が少なく、多額の資産を保有している家計、あまり保有していない家計に2極化されているように思われてなりません。
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