予防接種・ワクチン

ワクチンの有効率とは?有効率・効果の正しい考え方

【医師が解説】新型コロナウイルスに対するワクチンの接種が日本国内でも始まっています。報道も多くされているため、「ワクチンの有効率」という言葉を聞く機会が多いのではないでしょうか?「ワクチンの有効率」の考え方を知り、正しい知識を持ちましょう。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

「新型コロナワクチンの有効率が高い」の意味は?

ワクチンの有効率とは?有効率の正しい考え方と計算法

ワクチンの有効率とは?

現在話題になっている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のワクチンについて、「有効率が90%以上ある」と報じられています。有効率が高いと注目される一方、有効率が何かを正しく理解できている方は少ないかもしれません。有効率とは何か、具体的な効果について解説します。
 

「ワクチンの有効率」とは……インフルエンザワクチンを例に

「有効率」と一言で言っても、何に対しての有効性を示しているのか、その対象も重要です。一般的にワクチンの有効性を評価するためには、以下の3つの方法があります。

■免疫原性の有効率
ワクチンをした人の血清中の抗体レベルが、感染や発症を防ぐレベルに達した人の割合を見るもの。麻疹や風疹ワクチンの効果を見る時に使われています。

■臨床試験での有効率
ワクチンをした人としていない人との発症率の差を比較するもの。新型コロナウイルスワクチン(COVID-19)での効果を見る時に使われています。

■実社会での有効率
ワクチンが普及して多くの人がワクチンをした後で、感染症が実際にどれだけ減少したかを評価するもの。肺炎球菌ワクチン、Hibワクチンでの効果を見る時に使われています。

多くの人が毎年受けているインフルエンザワクチンを例に挙げると、小児における有効率は25~60%、成人では50~60%と報告されています。これはワクチンを接種した人のうち60%がインフルエンザを発病するという意味ではありません。インフルエンザワクチンをしていない人の発病率を「1」としたときに、ワクチンを接種した人の発病率が「0.4」であった場合、「有効率60%」となります。
 

有効率95%は「100人中95人に効く」ではない?考え方と計算法

COVID-19ワクチンの有効率は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の「感染」ではなく、COVID-19感染症の「発症」を指標としています。つまりワクチンによって感染が防げたかどうかは測定されていません。そして、ワクチンの「有効率95%」は、「100人中95人に効く、つまり、ワクチンした人の95人はかからないが、5人はかかる」というわけでも、「ワクチンをした人の95人に有効で、5人には効果がなかった」というわけでもありません。ワクチンをしていない人の発症率よりもワクチンをした人の発症率が0.05倍、つまり20分の1であったということです。この場合、感染はしているが発症していない人は、「有効」の中に入ってしまう可能性があります。

仮のモデルとして、ワクチンをしていない人の発病率が20%、した人の発病率が1%とすると、ワクチンをしていない人の発病率に対するワクチンをしている人の発病率は1%/20%=0.05、ワクチンによって相対的に減少した発病率は1-0.05=0.95、有効率はワクチンによって相対的に減少した発病率×100で95%となります。
 

ワクチンの有効率の考え方、メリット・デメリットの総合的な判断を

有効率については何をもって効果があるとするかによって変わってきます。インフルエンザワクチンは発症を防ぐ点ではそう高くありませんが、合併症を減らす効果が見られます。こうした有効率を考え方は確率の問題でもあります。例えば、95%の有効率であっても60%の有効率であっても、無効であった人にとって効果は0%であり、有効であった人にとって100%であるわけです。効果とコスト、副反応を総合的に判断した方が良いでしょう。
 

発症・重症化リスクを抑えるワクチン…集団免疫による収束への期待 

ワクチンの効果だけを考えると、現時点では新型コロナウイルスワクチンの効果は非常に高いと言えます。発症を抑えてくれることは、同時に重症化のリスクも防いでくれることになります(ただし、重症化に対する有効性については例数が少ないため、まだ解析中です)。新型コロナウイルス感染症は発症前から感染させる可能性があり、さらに無症状でも感染させる可能性があるため、収束のためには集団免疫を獲得していくしかありません。一人でも多くの人がワクチン接種を受け、集団免疫を作ることで、新型コロナウイルス感染症は収束に向かうことが期待されています。
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