「職業」としてのYouTuberは、親として背中を押してあげにくい面もあると思います。しかし、実は、「教育」の面から考えるとYouTubeの動画制作は、社会に出たときに役立つスキルを身に付けることができる素晴らしい教材であるともいえるのです。
YouTubeの動画制作を通して身につく、AIに負けないためのスキル
YouTube動画制作は社会に出たときに役立つスキルを身につける機会にも
また、「0から1を生み出す」ような発想力を育てていくことも、AIに負けない人材になるためには必要なことです。YouTube動画を制作することは、このような「主体性」や「発想力」を磨くのに、役立つのではないでしょうか。
そして動画完成までには、大まかにいえば「企画・撮影・編集」この3つの工程が必要になりますが、何よりも「企画(計画)」が大切です。
企画段階であらゆることを想定して周到に準備をしておかなければ、例えば、編集段階で撮影した動画素材が足らないことに気付いて、撮り直しをする必要が出てくるなど手間が増えることもあるでしょう。また、最悪、思ったような動画が撮れず「お蔵入り」になってしまうこともあるでしょう。
こういった経験を通して、子どもたちは普段の生活では感じにくい「計画の重要性」に気付くきっかけになると思います。
受験でも今後求められていく「表現力」を磨く機会にも
子どもがYouTube動画を制作するのであれば、ただ自分が作りたい動画を作るだけでなく、ぜひ「目標」を持ってもらいたいと思います。例えば「1カ月で再生回数100回」など、目標達成が明確に判断できる数値目標が良いでしょう。なぜ、そういった目標を掲げてほしいかというと、子どもたちが将来社会に出たときには、「自分のやりたいことをやる」という視点よりも「自分のやっていることが、社会にどう役立っているのか」という視点を持つことが大切だからです。
再生回数が伸びる動画を作るためには、自分がどんな動画を作りたいのかということだけでなく、動画を見る側の人が、「何に関心があるのか」「どういったタイトルやサムネイルであれば、見たくなるのか」などを考えることが必要になってきます。こういった「相手を考える力」というのも、子どもが普段の生活では強く意識することがないことだと思います。
近年、受験において、プレゼンテーションを課す学校が増えてきました。また、SNSなどを通じて、誰でも世の中に気軽に情報を発信できる時代になってきたりと、昔よりも「自分の考えを表現するスキル」が求められるようになってきました。このような状況を鑑みると、子どものうちから「表現力」を磨いておくのは、とても良いことだと思います。そういった意味でも、動画制作はとてもよい教材になるのではないでしょうか。
だが、やはり厳しい職業YouTuberの現実
では、そもそもYouTubeで食べていけるものでしょうか。もし、みなさんが、子どもに対して「職業YouTuber」の夢をあきらめるよう説得したかったとしても、みなさん自身が情報を持っていなければ、説得のしようがありません。「YouTuberは職業として成り立たない」「不安定なYouTuberではなく、安定した収入のある公務員になってほしい」など、何となくの職業観だけで、子どもに大人の意見を押し付けてしまっていませんか?
では、実際のところYouTuberはどうなのかというと、ご想像の通り「楽して稼げる」職業ではありません。そもそも、収益化するためには、現状、チャンネル登録者数1000人かつ1年間の総再生時間が4000時間以上という基準を超える必要があります。9割の方がここで挫折をするそうです。
また、その基準を超えたとしても、YouTubeだけで食べていくのは至難の業です。例えば、4万人程度の登録者数で1カ月の総再生時間が35000時間であったとしても、月に15万~20万円程度だそうです(諸条件によって異なるようなので、あくまで一例です)。しかも、動画をアップし続けないと、再生回数はすぐに減ってしまいますし、もちろん1本の動画を作るために何時間もの時間と労力を費やすことになります。「お金を稼ぐ」という観点からみると、YouTuberは中々厳しい世界と言えるでしょう。
それでも、チャレンジさせてあげることが大切
まずはチャレンジさせてあげることが大切
実際に子ども自身が再生数などの目標を立てて「YouTube動画制作」に挑戦し、その困難さを実感した上で、「楽しさ < 苦労」であれば、自然と将来の夢が「YouTuber」から別のものに変わっていくでしょうし、逆に「楽しさ > 苦労」と感じるようであれば、YouTuberでなくとも、クリエイティブな仕事に向いているのかもしれませんよ。