アドバイス1 家計収支の現状維持が最優先
ハラスメントが横行する職場で、給与とボーナスともに減額。ただし、スイミーさんも言われているとおり、この時期の転職は難しいでしょう。もちろん、転職活動は継続すべきでしょうが、現実的にしばらくは今の職場で耐えるしかありません。少なくとも、転職の予定のないままの退職は今後を考えると、リスク大です。そういう状況で、今、スイミーさんが家計で意識すべきは現状維持となります。無理に節約をしない代わりに、支出も増やさない。ここが今後のマネープランのポイントになります。
現在、毎月3万円の貯蓄(一部つみたてNISA)なので、年間36万円。ただし、これまでボーナスから支払っていた固定資産税と団信の保険料がそれだけでは足りない可能性があり、そこは貯蓄を取り崩すことになるとのことですから、実質平均30万円として、定年までの15年間で450万円。
ただし、5年後は養老保険の積立分を貯蓄に回すため、保険料8500円の10年分で102万円。さらに養老保険の満期金200万円、今ある貯蓄と合わせて、60歳の時点で手持ち資金は800万円弱といったところ(投資商品は元本のみを計上、退職金は考慮せず)。
この試算はあくまで現在の職場で定年まで働いた場合で、今後転職され、収入アップとなれば、貯蓄額はもっと増える可能性があります。しかし、きびしい試算を選ぶとすれば、これが用意できる老後資金のひとつの目安となります。
アドバイス2 健康最優先だが60歳以降も働きたい
60歳以降も働かれるということですが、それはスイミーさんのキャッシュフローから考えても必須と言えます。希望されている「月15万円」が可能であれば、固定資産税等の支払いも加えると、貯蓄=老後資金からの取り崩しは年間30万円程度。それでも65歳までに150万円。その後、公的年金受給となりますが、収入がそれだけなら、取り崩しのペースは倍程度には増えるでしょう。その時点で老後資金は10年程度しか持ちません。65歳以降も働くことができれば資金的余裕も生まれますが、持病があるため、無理は禁物。収入のために健康を害しては元も子もありません。
アドバイス3 売却、賃貸どちらにしても慎重に判断を
老後のマネープランがきびしい要因は、支払いが75歳まで続く住宅ローンです。スイミーさんも、住み続けて完済することは考えず、60歳のときに売却、もしくは賃貸に出すと考えているとのこと。しかし、それが本当に有効かどうか。少なくとも、そこはあまり楽観視せず、慎重に判断すべきだと思います。60歳時のローン残高がおそらく1100万円ほど。15年後の不動産価格は不透明ですし、売却には手数料等のコスト(目安として売却額の5%ほど)が発生します。そう考えると、売却後にローンが残る可能性も否定できません。一方、賃貸は「賃料10万円は下回らない」とするなら、住宅コストが賃料でまかなえて、多少なりとも家賃収入が期待できるわけですから、その点では有効かもしれません。しかし、家賃収入をどれだけの期間、維持できるかという別の懸念もあります。
もちろん、思った以上に高く売却できる、あるいは家賃収入が得られるかもしれません。ともあれ、普段から不動産情報をチェックし、より有益な方法をより良い時期に選択してください。場合によっては多少前倒しで決断する必要があるかもしれません。
また、どちらにしても、新たな住居の確保が必要ですが、スイミーさんは実家に移り住むことができる。これは大きな強みです。将来的には多少なりとも修繕、リフォームが必要でしょうし、相続するなら固定資産税も発生しますが、それでも新たに借りるよりは割安だと言えます。
もうひとつ、懸念があるとすれば、猫でしょうか。スイミーさんの生活に猫が不可欠だということは、ご相談文からも十分伝わります。しかし、これ以上、数が増えてしまうことは避けるべきでしょう。その分コストが膨らみ、スイミーさんの生活費を圧迫しかねません。今後も保護したい猫と出会うかもしれませんが、そこは十分に考慮して欲しいところです。
相談者「スイミー」さんから寄せられた感想
アドバイス大変参考になりました。今の勤務先に勤めながら転職活動をしていこうと思います。また、60歳時点での具体的な手持ち資金の額は大変参考になりました。猫については管理規約で飼える頭数が決まっていますので、これ以上増やすことはありません。きめ細やかなアドバイス大変嬉しかったです。ありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
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