子どもの名前に使える漢字は限られている
子どもの名前に使える漢字は限られています。戸籍法50条によると、子どもの名前に用いる漢字は、「常用平易」でなくてはならないとされ、その漢字は法務省令によって「常用漢字表」と「人名漢字表」に掲げられています。平成以後に追加された漢字のうち、名前に多く使われるようになった字
- 1990年に追加された118字のうち「凌」「凜」「凪」「叶」「彪」「旺」「昴」「柊」「柚」「栞」「汰」「滉」「澪」「琳」「蒼」「蓮」「颯」「魁」の18字
- 1997年に追加された「琉」の1字
- 2004年に追加された493字体のうち「苺」「珀」「湊」「惺」「琥」「煌」「凛」の7字
人名用漢字追加の際に、名前に向く字かどうかは吟味されず、名前に向く字が追加されなかったり、不向きな字が大量に増やされたりもしていますが、追加された後に人気の出た興味深い例としては、次のようなものがあります。
歌やドラマの影響で人気の出た「澪」や「昴」
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「澪」……もとは小川のことだったが、日本では運河のことを指す
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「昴」……『昴(すばる)』という歌が大流行したことから、この字を名付けに使いたいと望む人が増えた
こうしたことから「澪」や「昴」の漢字を子どもの名前に使いたいと思う人が増え、1990年に澪や昴を含む118字が追加され、多く使われるようになりました。
名前に使える漢字として追加直後から大人気になった「蓮」と「凜」
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「蓮」……もとは男女の分からない名だったが、いまでは9割以上が男の子
「蓮」の字は、草と連から成り、根がつながったハスを意味します。
「凜」の字の成り立ちが不明ですが、倉庫と穀物を合わせたような絵で、寒いことを表わす字でした。のちに「ひきしまる」の意味になり、しめすへんの「凛」を使い「凛として」「勇気凛々」などの言葉になっています。
これらの字は、はじめは「蓮(れん)」「凜(りん)」といった漢字1文字の名前として男女両方に広まり、男女の分からない名づけでした。次第に男女が分かれ、今では「蓮」の9割以上が男の子で、「凜」は9割以上が女の子です。
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「凜」……「ノギヘンの凜」だけでなく「シメスヘンの凛」も2004年に追加され、名前に使えるようになった
1字だけ例外的に増やされた琉球の「琉」
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「琉」……追加された翌年から大人気の字となった
「琉」の字は、王(宝石)と㐬(通りぬけること)から成り立ち、なめらかな宝石を意味します。沖縄では日常的に使う字です。
那覇家裁は那覇市に出生届の受理を命じる決定をしました。その決定の5日前、ときの法務大臣は参院法務委員会で「どういう経緯で琉の字が人名用漢字からぬけ落ちたのか早急に結論を出したい」と答弁し、決定の7日後に「琉の一字を人名用漢字に追加する」と言いました。
人名用漢字は、「範囲を増やしてほしい」という社会的な要求が高まったとき、諮問機関の答申を経て追加されるのが普通ですが、このように法務大臣自らが個人の要望に大きく反応したのはまさに異例のことです。
琉の字はその翌年から大人気の字の一つになり、結果として追加は正しかったといえます。
名前に使えるようになった直後ではなく、何年かたって増えた「颯」「柚」「湊」
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「颯」……「サッと吹く風」を意味する字
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「柚」……2006年頃から急速に増え、今では大人気の字に
平成以後に名前に使えるようになった漢字で人気が出た「湊」……多くの船が出入りする港のこと
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