ひどいカサカサ乾燥肌は「尋常性魚鱗癬」のことも
乾燥が気になる季節。すねの部分がうろこ状になるほどガサガサしている場合、ただの乾燥肌ではないことも
また、乾燥肌と間違えやすい病気に「尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)」があります。冬などの乾燥する季節になると、特にスネの部分の肌がガサガサになり、うろこ状になります。魚のうろこのように見えることから「魚鱗癬」と名付けられています。
尋常性魚鱗癬とは……症例画像で見るうろこ状のすねの皮膚
「尋常性魚鱗癬」は、様々な種類がある魚鱗癬の中で一番多く、症状も軽いタイプです。写真のように、スネの部分の肌が六角形に浮き上がり、うろこ状になります。患者さんの訴えでも、夏は症状が気にならず、冬になるとすねがガサガサして模様が浮き出てくる、というものが多いです。■尋常性魚鱗癬の症例画像
尋常性魚鱗癬の特徴が見られる患部。ガサガサと六角形に浮き上がって見えます
尋常性魚鱗癬の原因・有病率・遺伝性・好発年齢……50%は子に遺伝
データにもよりますが、300人に1人程度は尋常性魚鱗癬と言われています。症状の強さにはかなりばらつきがあり、大人になってから別の症状で皮膚科を受診した際に、たまたま指摘されるケースもあります。私も、尋常性魚鱗癬の患者さんを診断したことがありますが、患者さんご自身はその症状が病気によるものという自覚を持たれていませんでした。尋常性魚鱗癬の原因は、フィラグリンという皮膚のバリア機能を司る遺伝子の異常です。常染色体優性遺伝のため、両親の片方が尋常性魚鱗癬の場合、半分の確率で子どもは尋常性魚鱗癬になります。通常、生後すぐには症状はなく、幼少期に気づくことが多いです。男女差はありません。
乾燥肌やアトピー性皮膚炎と尋常性魚鱗癬の違い・見分け方
尋常性魚鱗癬は夏には改善することが多く、場合によっては皮膚の症状は消失します。冬に、特にすねの部分の皮膚がうろこ状になることで気づきます。乾燥肌の場合も肌が粉をふいたようにカサカサしますが、うろこ状にまでなることはありません。尋常性魚鱗癬はアトピー性皮膚炎と合併しやすいことが知られています。というのも尋常性魚鱗癬で遺伝子異常のあるフィラグリンという物質がアトピー性皮膚炎患者でも減っていることがわかっているためです。2つの病気は密接に関わっていると考えられます。アトピー性皮膚炎や湿疹の場合は皮膚が赤くガサガサしてかゆくなるのに対して、尋常性魚鱗癬の場合は赤く炎症を起こすことはなく、カサカサだけという点が大きな違いです。
尋常性魚鱗癬は完治するのか? 治療法・日常のケア方法
尋常性魚鱗癬は完治しませんが、症状は思春期頃に最もひどくなり、年齢を重ねるに従って症状は弱くなっていきます。尿素、サリチル酸など角質のガサガサをとる成分、もしくはセラミドといった皮膚のバリア機能を補う成分の入った保湿薬を毎日塗ると有効です。ステロイドの塗り薬は通常必要ないですが、湿疹を合併することもありますので、かゆいときには使うといいでしょう。