こたつの健康効果・メリット……頭寒足熱、冷え解消に有効か?
こたつは頭寒足熱で健康的? 風邪を引きやすくなる? 実際に注意すべきことは何でしょうか
昔から「頭寒足熱」という言葉があります。頭を冷やして、足を暖かくすることが健康によいということです。これは『傷寒論』という東洋医学の古典でもいわれていることで、ここからこたつで足を温めれば免疫力も上げられるのではないか、と考える人もいるかもしれません。しかし西洋医学的な観点では、足を温めることと免疫力の関係は明らかになっていません。2005年のJohnsonらの実験では、10℃の水で20分間足を冷やしたグループは、冷やさなかった人と比べて、4~5日後に風邪症状を訴える人数が2.57倍になったという報告があります。この報告からは「足を冷やすと免疫が低下する」可能性はあるといえるかもしれません。
また、頭痛は頭を冷やすことで軽減することがありますが、脳の血管は拡張すると痛みが出てきます。身体が暖まりすぎると、のぼせが出てくることもありますので、そうしたときに頭を冷やすのは有効です。その点では寒い時も全身を温めるよりも、足だけ温めるというのは理に叶っているかもしれません。
そして、足は全身の中でも血流が悪くなりやすい部分です。足を温めることで血流が増えれば、代謝機能や自律神経が整うことも考えられます。足を温めるこたつはこれらの面では体に優しく、良い暖房器具といえるかもしれません。
こたつの危険性・リスク……低温やけど・脱水・事故には要注意
一方で、こたつに関しては都市伝説に近いような話もよく耳にします。「こたつで寝ると風邪を引く」「足だけ温まって汗をかくので、自律神経が狂う」「血栓ができやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こす」「死亡者も出ている」といったものです。温度変化や上半身と下半身の温度差による不快感などで自律神経の調子が悪くなる可能性はあるかもしれませんが、風邪を引きやすくなるかも含め、個人差が大きいと思われます。医学的に考えると、実際にこたつの使用で注意すべきことは「低温やけど」「脱水」「事故」の3つでしょう。低温やけどと脱水については、こたつで長時間温まっているときにリスクがあります。特に乳幼児やお年寄り、また飲酒後など、こたつでぐっすり眠ってしまうと、熱さにきづかずにやけどをしてしまうことがあります。冬は水分補給がおろそかになりがちですが、特にこたつで寝てしまった場合などは汗をかき続けてしまい、脱水も起こりやすくなります。
アルコールには麻酔のような作用があり、低温やけどに気づかなかったり、利尿作用で脱水になりやすくなりますので、飲酒後のこたつでそのまま寝てしまうのは控えたほうが良いでしょう。
また、特に子どもがいる場合は、こたつならではの家庭内の事故の危険性があがります。こたつの天板は重さの割に動きやすいため、天板の落下や上に載せているものの転倒や落下などによる怪我のリスクがあります。動き回る乳幼児にとっては、こたつ布団をかぶってしまうことや、こたつ布団にひっかかっての転倒、床を這う電気コードを触っての事故などには注意する必要があるでしょう。全身でこたつに入ってしまうと脱水も起こしやすくなるため、使い方には注意が必要です。
こたつでの死亡リスクについては難しいところです。こたつで汗をかいて脱水を起こすと、血液中の水分が減るため、血栓ができやすくなります。この結果として、死亡リスクを伴う脳梗塞・心筋梗塞を起こす可能性も指摘されているようです。しかしこれは入浴中の心筋梗塞のリスクと似た面があります。入浴中に心筋梗塞を起こす危険はゼロではありませんが、多くの人にとっては入浴そのものが死亡リスクを伴うような危険なものではないことと同等です。
命の危険について考えるのであれば、こたつが原因での火災も無視すべきではないでしょう。2004年度から2009年度までの5年間で、こたつによる火災などの事故は179件発生しており、これにより27名が死亡しています。この死亡者で最も多いのは80歳以上で全体の70%が60歳以上と高齢者が多くなっています(独立行政法人の製品評価技術基盤機構(NITE、東京)による報告)。
こたつの温かさを安全に楽しむために
日常的にこたつを使う場合の注意としては、先述した通り、低温やけど、脱水、事故に注意することです。こたつで寝ないこと、長時間入りっぱなしにならないことを意識し、意識してこたつから出て動く時間を作ることが大切です。また、基本的なことではありますが、火事を起こさないために、
- 電気こたつの中に座布団や衣類などを入れない
- 家具などが電源コードを踏みつけないようにする
- 電源コードが足に引っかからないように取り付ける
- 電気こたつのヒーターにほこりがたまらないようにする
- 電気こたつを使わないときは電源を切っておく
これらのポイントを少し意識するようにして、温かく健康的に冬を過ごしましょう。