お金の悩みを解決!マネープランクリニック/自営業・フリーランス・会社経営する人のお金の悩み

58歳、貯金3200万円。個人事業主として働いていましたが契約終了で仕事がなくなりました(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、個人事業主として働いていたものの、契約終了してお休みをしているという58歳の一人暮らしの女性。大病をしたため、コロナウイルスが怖く、仕事を探すのにも前向きになれないといいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 住宅ローンを完済し、個人年金も前納して身軽に

突然の契約終了は、精神的にも厳しいことでしたね。でも、現状の家計、金融資産を拝見する限り、今は無理して仕事探しをしなくてもいいと思います。1年ぐらい休養しても大丈夫です。
 
しばらくは、お金が出ていくばかりで不安もあると思いますが、いったんここで清算してしまってもいいかもしれません。支出のうち、大きなものは、住宅ローンと保険、個人年金の保険料です。それ以外の無駄使いはありません。
 
現在、住宅ローンは残りが1000万円とのこと。これを一括で繰り上げ返済してしまえば、毎月の支出は17万2000円になります。さらに、終身保険については、払い済みとし、これ以降の保険料の払い込みをストップ。ここまでの保険料の分が保障となります。医療特約は消滅してしまいますが十分貯蓄があるので過度に心配される必要はありません。個人年金については、今後60歳まで、65歳までの保険料分をまとめて前納してしまいます。これらの保険料の支払いがなくなれば、毎月の支出は約13万円に抑えることができます。
 
住宅ローンで1000万円、個人年金の前納で約190万円。現在の金融資産3200万円から差し引いても、約2000万円が残ります。
 
60歳から個人年金が受け取れますが、それまでの2年間の支出は貯蓄からの取り崩しとなります。年間支出は156万円、2年で312万円。年間で発生する固定資産税、国民年金などで約200万円。60歳時点での金融資産は、約1500万円となります。加えて、前の会社の退職年金を一時金で受け取るとすると1900万円となります。
 
実際には、少し休養されてから、どういう働き方をするかによって、貯蓄の取り崩しのペースは変わってきます。
 

アドバイス2 再就職するなら厚生年金加入がベスト。バイトでもOK

年間の支出は156万円と固定資産税の10万円。年収が166万円以上あれば家計収支はトントンで、貯蓄からの取り崩しはしなくて済みます。厚生年金加入できる勤務先であれば、国民年金、国民健康保険を別途払う必要もありません。
 
ただ、60歳から受け取れる個人年金が10年確定だとすると100万円が受け取れるわけですから、それを差し引けば、そこまで厳しい働き方をしなくても十分生活をしていけます。もちろん、収入が多いに越したことはありませんし、その分は、貯蓄の上乗せができ、老後資金にゆとりが生まれるでしょう。
 
65歳からは公的年金受給がはじまり、年金基金をいれて165万円受け取れ、個人年金と合わせて265万円で、個人年金の大半は貯蓄することもできます。個人年金は70歳までとすると400万円程度は貯蓄の上乗せができるわけです。70歳から75歳まで収支トントンでいけば、75歳からは、25万円の別の個人年金の受け取りもはじまり、また貯蓄の上乗せになっていきます。
 
仮に、月8万円ぐらいのバイトでも、年間で96万円の収入です。年間の不足額は130万円程度ですから5年で650万円が貯蓄からの取り崩しとなります。
 
つまり、これから65歳までの収入いかんで、貯蓄からの取り崩しの額は変わりますが、65歳からは、実質収支トントン、その時点での貯蓄はずっと残ることになるのです。
 

アドバイス3 年金総額から考えれば、金銭的な心配は不要

別の試算でも考えてみましょう。現在の金融資産は3200万円。これに個人年金で受け取る総額は1250万円。前の会社の退職年金が400万円。合計で4850万円が現時点での生涯総資産となります。
 
ここから住宅ローンの繰り上げ返済で1000万円、個人年金の前納で190万円。差し引き3660万円です。
 
65歳からは公的年金で収支トントンですから、それまでの6年で生活費や年間の支払いで1400万円使ったとしても、2200万円程度は残るということになります。年間50万円程度をお楽しみに使ったとしても、貯蓄がゼロになるのは44年後です。人生100年を十分乗り切れます。
 
金銭的な心配は、大きな出費がない限り不要です。ただ、いままで個人事業主として頑張ってこられたわけですし、まだまだ働く意欲があるのですから、コロナ禍が落ち着くまで、じっくりと今後の仕事、働き方を考えればいいでしょう。できる限り働きたい、という気持ちは大事にし、焦らず、希望に沿った働き方を見つけてください。大丈夫ですよ。
 

相談者「働きたいけどコロナが怖い」さんから寄せられた感想

深野先生からこんなに詳しいマネープランと「大丈夫ですよ」という優しいお言葉をいただきました。本当にありがとうございます。アドバイス3の「金銭的な心配は不要」という言葉に安心し涙がでてきました。ここ数カ月、本当にお金が出ていくばかりで超節約生活をしておりました。深野先生のアドバイスを何度も読み返しました。これから行うことを住宅ローン完済を始め1つ1つ整理していきます。終身保険を払い済み、というのがあるのですね。勉強になりました。医療特約も終身に付いていたから続けていただけでした。何より老後は年間50万円をお楽しみに使えるなんて元気がでました。仕事も少しずつ案件が増え始めているようです。厚生年金に加入できて無理なく働ける仕事を探していこうと思います。色々と迷うばかりの日々でしたが方向を示していただき、本当にありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子



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