食と健康

「五味」に辛味は含まれない?舌で感じる味の種類とおいしさの作り方

【管理栄養士が解説】五味とは舌で感じる「5つの基本味」で、甘・塩・酸・苦・うま味の5種類を指します。辛味・渋味は「痛覚」扱いで味には含まれません。仏教や清酒、四川料理など、異なった分野で違う「五味」もあります。奥深い「五味」を上手に活用して、心にも体にもおいしい食事を目指しましょう。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

人が感じるおいしさの正体は? 味蕾で感じられる「味」の種類 

五味とは何か…味の決まり方や作用など

味の基本形である「五味」。おいしさが決まる条件とは?

「おいしい!」という言葉を言ったことがない人はいないでしょう。「おいしい味」は、誰にとっても興味深いものですが、なぜ私たちはおいしさを感じることができるのでしょうか?

ヒトが「味」を感じられるのは、舌に「味蕾(みらい)」というセンサーがあるためです。そして「味蕾」で感じる「味」は大きく5種類あると考えられており、これを「五味」と呼びます(ほかにも「五味」の定義はたくさんありますが、今回は特に断りがない限り、この定義で話を進めていきます)。
 

五味とは何か? 5種類の基本味に含まれる主な食材

「5つの基本味」は、甘・塩・酸・苦・うま味の5種類です。このうち「うま味」は日本で発見されました。この5種類を「五味」とか「5つの基本味」と呼びます。「辛味」と「渋味」も「味」という文字を使いますが、この2つは「痛覚」として考えられているため、「5つの基本味」には含まれていません。5つの味は読んで字のごとくではありますが、例としては
  • 甘:砂糖、はちみつ など
  • 塩:塩、醤油、味噌 など
  • 酸:酢(穀物酢、りんご酢など)、梅、レモンなどのかんきつ類 など
  • 苦:コーヒー、ビール、おこげ(ご飯、焼き魚など)、ピーマン、ニガウリ など
  • うま味:出汁(昆布だし、かつおだしなど) など
が挙げられます。

甘・塩など好まれやすい味もあれば、酸・苦などの食べ慣れることで美味しいと感じる味もあります。これらの5つの味が混ざり合って、さまざまな食材や料理の味に深みが出るのですね。
 
他にも分野によってさまざまな「五味」と呼ばれるものがあり、
  • 仏教の「五行」に対応するものとしての五味
  • 清酒の五味……甘味、酸味、辛味、苦味、渋味
  • 四川料理の五味……甜(甘味)、酸(酸味)、咸(塩味)、苦(苦味)、辣(辛味)
などがあります。「五味」は奥深いですね。
 

五味の活用法……日本では五味を重ねない定食式が定番 

「甘辛い」など複数の味を組み合わせた味付けもありますが、日本では1食の食事を作る際には「定食」のように複数の料理を組み合わせることが多いです。そこで、複数の料理の味付けを五味が重ならないように考えると最後まで飽きずに食べやすい味付けになります。例えば、主菜が「(ぶりの)照り焼き」であれば、主な味は「塩味(醤油)」ですので、副菜は「酸味(食酢)」の効いた「(大根)なます」を付け、デザートに「柿」などの甘いものを添える、といった具合です。
 
漢方の世界では、五味の作用として、
  • 酸……筋肉などを引き締める収斂作用     
  • 苦……炎症をおさえたり、物を固める働き
  • 甘……緊張を緩め痛みをとったり、滋養強壮にも働く
  • 辛……発散作用があり、風邪のとき発汗を促す働き
  • 鹹……物を軟らげる作用
があります。

また、それぞれに禁止事項である「五禁」と呼ばれるものがあり、
  • 酸……脾(膵臓を指すといわれています)が弱っている人は、酸っぱいものをとり過ぎてはいけない
  • 苦……肺が弱っている人は、苦いものをとり過ぎてはいけない
  • 甘……腎が弱っている人は、甘いものをとり過ぎてはいけない
  • 辛……肝が弱っている人は、辛いものをとり過ぎてはいけない
  • 鹹……心が弱っている人は、塩からいものをとり過ぎてはいけない
といわれています。

漢方的な作用や禁止事項は、西洋医学から派生した現代の栄養学とは違う部分もありますが、一つの考え方としてご紹介しておきます。
 

五味・温度・テクスチャーを考えて、おいしい食事を楽しんで 

五味を上手に組み合わせることによって食卓は豊かになります。しかし、五味は美味しさの基本でしかなく、温度やくちどけなどのテクスチャーの違いによっても美味しさの感じ方は大きく変化します。例えば、同じ濃度でも甘味は温度が高いほど強く感じますし、塩味は温度が高くなるほど薄く感じます。テクスチャーの代表例としては、クッキーのホロホロ感や、チョコレートのくちどけ感など、口の中での物理的な感覚があります。

おいしさは、五味と、料理の温度(適温)、テクスチャーによって決定されます。調味料が多く味付けが濃いことが、イコール「おいしい」ではありません。調理をする際には、「五味」を補うための温度やテクスチャーに気を配ることで、「おいしいけれど、体によい食事」になります。心にも体にも「おいしい」食事を目指しましょう。
 
■参考
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