数字に追われ、業務も激増し精神的におかしくなりそうです

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、大手企業を退職して中小企業に転職したという57歳の会社員男性です。ところがパワハラ社長とわかり、このまま働き続けることに精神的な危機感を持っているとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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転職したもののワンマン経営でした

転職したもののワンマン経営でした


■相談者
えんえんさん
男性/会社員/57歳
関西/持ち家(一戸建て)
 
■家族構成
妻(51歳・パート)、子ども(14歳)
 
■相談内容(原文ママ)
役職定年を機会に大手企業を退職し中小企業に転職しました。転職で年収は半分以下になりましたが、今の会社は定年がなく長く働けるのが魅力でした。しかし、ワンマン・パワハラ社長とわかり、このまま勤めることに大きな不安が出てきました。数字に追われ、業務も激増し精神的におかしくなりそうで危機感を持っています。
 
子どもは私立中高一貫校の中学2年生でまだまだ教育費用も掛かりますし、近年、家を建て住宅ローンもあります。何とか60歳までは我慢して勤めなければと、日々自分にムチ打っております。60歳で個人年金・企業年金をもらうまでは、預金切り崩しの赤字家計となります。子どもは私立中高一貫校で高校卒業までに430万円ほど必要で、大学は文系になると思われます。
 
年金の見込み額は、以下のとおりです。
・公的年金  本人 232万円/年、加給年金39万円/年、妻79万円/年
・企業年金 
1. 60歳から20年間、92万円/年
2. 60歳から15年間 192万円/年(退職金を年金で受け取る分)
その他の支出は、
・固定資産税 27万円/年
・車はあと2回程度買い替え、1回300万円見込み(保険・車検費用は雑費の中で積み立て)
・20年後にリフォーム 300万円見込み
・最初の会社では家庭を顧みず仕事をし、妻に迷惑をかけたので、これからは妻の好きな家族旅行を増やしていきたい。年間50万円程度

ご相談したいことは、60歳で今の会社を退職し、その後、セミリタイアできるか否か、できる場合はアルバイトなどで、どの程度稼がねばならないかをご教示いただきたいです。よろしくお願いいたします。
 
■家計収支データ
相談者「えんえん」さんの家計収支データ

相談者「えんえん」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
住宅ローンの返済として年間60万円。それ以外に、お小遣い6万円、家電などで10万円。
 
(2)家計収支について
雑費の4万円は、車の税金と車検費用として1万5000円の積立、病院費用1万円、衣服・雑貨などで1万5000円。年間での収支では、おおむね月4万5000円×12カ月=54万円の取り崩し。加えて家族旅行費用(今年は30万円見込み)で、合計約80万円を貯蓄から取り崩し。
 
(3)住宅ローンについて
・借入残金額 2500万円、70歳まで。
・毎月返済額10万6000円、ボーナス時返済額60万円/年
ローンは15年返済で、金利は0.7%(3年固定)。住宅ローン減税が終わる10年目の65歳時に繰り上げ返済をしたい。
 
(4)生命保険について
・生命保険(死亡保障4000万円)=毎月の保険料 1万4000円・掛け捨て
・医療保障(入院日額7500円)=毎月の保険料 本人・妻で4000円・掛け捨て
・ガン保険 (診断一時金100万円、入院日額7500円)=毎月の保険料 本人・妻で3700円・掛け捨て
・学資保険(18歳時 200万円、22歳満期時 100万円)=毎月の保険料 1万2000円(本人65歳時まで払込み)
・個人年金(60歳から15年間、年80万円受け取り)=毎月の保険料 1万2000円(本人60歳まで払込み)
 
生命保険は、前の会社の団体保険。契約者は会社で、1年定期保険。61歳からは保障限度額が1000万円になります(保険料不明)。この保険は妻が続けて欲しいといっています。余談ですが、私が働くことを辞めたときには、前の会社の健康保険組合に戻ることができ、夫婦で保険料29万5000円/年になるようです。多分、国民健康保険より安いと思います(月の医療費も上限2万7000円)。
 
(5)妻の就業状況について
妻は5年前くらいから、月6万~8万円程度のパートをしております。少し貯金をしているとは思いますが、収支はわかりません。 おそらく、結婚前5年程度、厚生年金に加入していたと思います。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 現状の支出を見直し、60歳までの生活費をできるだけ抑える
アドバイス2 住宅ローンを60歳で完済。年金が増える65歳までの支出を把握する
アドバイス3 60歳以降の働き方、妻の貯金、年金の扱いを確認しておく
 

アドバイス1 現状の支出を見直し、60歳までの生活費できるだけ抑える

金銭的な不安もさることながら、ご相談者の精神的な面も心配になってきます。ご家族が支えになっておられると思いますが、なんとか60歳までは、と考えておられますので、その前提で金銭的な部分がどうなるか、見ていきましょう。くれぐれも健康第一で、無理は禁物ですよ。
 
とはいえ、最初から、厳しい話になってしまいます。現状、貯蓄からの取り崩しはやむなし、と思いますが、それでも収入が減ったのなら、本来は収支トントン。貯蓄からの取り崩しは最低限にとどめる必要があります。すぐに生活レベルを変えるのは難しいとは思いますが、今の支出で削れる部分がないか、一度確認してみてください。
 
たとえば、食費を削減する。個人年金は残り3年分を前納してしまう(おそらく40万円ぐらいではないでしょうか)。これで毎月2万5000円は支出を抑えられます。現状毎月4万5000円の不足ですが、2万円にできないでしょうか。
 
年間で24万円。これに旅行費用50万円を加えて74万円の取り崩しです。60歳までの3年間で222万円。今のままだと312万円の取り崩しになりますが、少し削減すれば90万円は貯蓄を減らさないで済みます。60歳以降、年金頼みになることを考えれば、90万円は決して少なくない額です。
 
セミリタイアを視野に入れているのであれば、生活費のコスト削減、ダウンサイジングを考えてみてください。
 

アドバイス2 住宅ローンを60歳で完済。年金が増える65歳までの支出を把握する

支出の見直しができたとして、60歳時点での金融資産は、約3800万円です。現在の4050万円から個人年金の前納で40万円、生活費の不足分で222万円を差し引いた額です。このあとは、基本的に収入は年金のみとなります。
 
そこで住宅ローンに関してですが、住宅ローン減税が終わる65歳での繰り上げ返済、完済をお考えのようですが、60歳時点で繰り上げ返済してはいかがでしょう。確かに、住宅ローン減税で所得税が戻ってくるメリットはありますが、60歳以降、年金から差し引かれる所得税の還付のために、毎月の返済に加え、ボーナス払いの60万円を貯蓄から取り崩していくのは、矛盾しています。
 
おそらく、ローン残高は1800万円ぐらいだと思われます。一気に貯蓄がなくなってしまう心配はありますが、それでも手元には2000万円残ります。このほか、お子さんの高校までの学校教育費が430万円、大学費用として300万円は学資保険がありますので、プラスアルファ分として200万円。合計約700万円を差し引いても、1300万円が60歳時点で残ります。
 
60歳からは、企業年金と個人年金で364万円の収入。支出は住宅ローンがなくなりますから、月30万円になり年間360万円。ただし、旅行費用や固定資産税、車の維持費がかかりますから、やはり年間80万~100万円を貯蓄から補っていくと、65歳までに500万円のマイナスとなります。65歳時点での金融資産は、約800万円となります。
 
ただ、65歳からは公的年金の受給が始まり、年間の収入は、635万円に増えます。ここで支出が大幅に増えない限り、このあとは貯蓄を積み増していけるようになります。75歳で個人年金と企業年金の一部がなくなり、収入は324万円と減ってしまいますので、65歳からの10年間に、どれだけ貯蓄を増やすことができるか、ということになります。単純計算で、年間200万円貯蓄ができれば、10年で2000万円増やすことができるわけです。
 
この間に、車の買い換えで600万円の支出があります。貯蓄の増え方次第で、できるだけ長く乗り、買い換えの頻度を抑える、予算を少し抑えるといった工夫も必要になってくるでしょう。住宅のリフォームは、まだ先の話ですから、その時点での貯蓄額次第で予算を決めて行うようにしてください。
 

アドバイス3 60歳以降の働き方、妻の貯金、年金の扱いを確認しておく

ここまで、実は、奥さまの収入や貯蓄、公的年金については、加味していません。えんえんさんが、これまで一家の大黒柱として、すべてやってこられたのでしょう。奥さまの収入は関与しておられないということでしたので、えんえんさんだけの収入で試算してきました。
 
ただ、60歳を機に、セミリタイアを考えておられるのであれば、奥さまの貯蓄をあてにする、という意味ではなく、お二人のお財布の中身は把握しておいたほうがいいのではないでしょうか。年間でいくら不足し、貯蓄を取り崩していること、60歳以降の働き方も含めて、一度お話し合いをされてはいかがでしょう。
 
生活費のダウンサイジングも奥さまの協力がなければ、できないことです。金融資産の推移としては、これまで説明したとおりで、余裕があるわけではありませんが、えんえんさんが60歳以降も、高収入を得なければいけない状況でもありません。無理のない範囲でアルバイト的な働き方で十分です。
 
こうしたことは、お一人で抱え込まず、家族で現状と将来予測を話しておくことが大事です。ここまで第一線で働いてこられたこその、貯蓄ですし、マイホームです。家族旅行も大いに楽しんでほしいと思います。
 
住宅ローンの繰り上げ返済については、65歳でもいいと思います。ただ、60歳以降も生活費の不足、ボーナス返済分を貯蓄から取り崩していくことになります。結果は同じでも、気持ちの問題もあると思います。こうしたことも、奥さまとよく話し合われてみてください。
 
以上、えんえんさんの60歳以降の収入を考慮せず試算しましたが、この試算をベースにして60歳以降のセミリタイア時にいくら稼げばよいのかご自身で考えてみてください。セミリタイア後も収入は多いに越したことはありませんが、えんえんさんのライフプランやご健康を鑑みてこれくらい稼げば大丈夫という金額を計算して収入額は決めていただきたく、あるいは試算から働かなくても大丈夫と判断してください。
 

相談者「えんえん」さんから寄せられた感想

常日頃、マネープランクリニックを拝読させていただき、FPの方のアドバイスから学び、自分なりにライフプランを作成しておりました。今回、深野様にアドバイスをいただく機会をいただき、大変ありがたく思いました。実際にアドバイスを読み、私自身ライフプランを作成過程で、矛盾を感じたり、不安を感じた部分全てというか、それ以上の気づきと対策法をいただきました。長年勤めた会社を辞めて以降、悩み、不安な日々を過ごしておりましたが、60歳以降働かなくても大丈夫との試算をいただき、心救われました。深野様のコメントで「ご家族が支えとなっている」とありましたが、正にその通りであり、どのように楽しく今後を過ごしていくか、そのためにはどうしていくかをこの機会に妻とよく話し合っていきたいと思います。大げさではなく、人生の節目となるアドバイスをいただき、本当にありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子



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