お金の悩みを解決!マネープランクリニック/貯蓄ができない、赤字家計に悩むファミリー世帯

42歳契約社員。実母の借金150万円を肩代わりして貯蓄はゼロ、保険も解約しました(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、契約社員として働く42歳の女性の方。実の母親の借金の返済に追われ、貯蓄も保険も取り崩したとのこと。この状態から抜け出し、家計改善を目指したいと考えているが……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 最終的に「どちらを選ぶのか」を考えるべき

ご依頼文、拝見しました。いろいろ大変だったこと、お察しします。その相談ですが「今後どのように家計を回していけばいいのか」とのこと。そのためには決断すべきことがあります。それは、自身の家族(すずらんさんとご主人とお子さん)の幸福と実母の生活もしくは要望の、どちらを選択するのか、ということです。
 
残念ながら、両者を実現させる資金的余裕は今現在ありません。そして今後も、きびしいと言わざるを得ないでしょう。
 
仮に後者を選ぶのであれば、家計改善は難しいと思われます。ご主人が減収となったため、その確率はさらに高まりました。そして、結果的にその弊害をもっとも受けるのは5歳のお子さんです。教育費を十分に用意できない可能性が高いからです。このままではいずれ児童手当も生活費に消え、さらに学資保険の中途解約もあり得るかもしれません。
 
前者を選ぶということは、少なくとも実母の借金について今後一切関わらないということです。法的機関に相談されて「実母の負債を負う法的義務はない」と言われたとのこと。したがって、兄弟の方の言い分についても、その根拠がわかりませんので断言はできませんが、法的には無効な可能性が高いと考えます。場合によっては、弁護士を立てる必要があるかもしれません。ともあれ、借金の肩代わりという状況が変わらないなら、最終的には「親子の縁を切る」くらいの覚悟が必要だと思います。
 
親の介護についても、その資金を子どもが負担するのではなく、あくまで公的介護保険と親の資金でまかなうのが、原則と考えるべき。実際の介護も地域の包括センターに相談するのが正しい対処です。
 
これまでの経緯や詳しい現状はわかりません。しかし、いただいた内容から考えて、すずらんさんは十分実母には尽くしたのではないでしょうか。また、病気で通院しているとはいえ、年金10万円にパート収入が13万円。現状、家賃も発生していないのですから、自身の収入の範囲内で十分生活できるはずです。
 
前置きが長くなりましたが、家計を立て直すなら、家族を選ぶしかありませんし、私もそうすべきだと思います。それでも実の親子ですから、簡単には決められないかもしれません。それでも、結論を先延ばしにするべきではないと思います。そして、最終的に決断するのは、あくまでも、すずらんさんご自身です。
 

アドバイス2 今後3カ月の家計管理が改善のカギ

ここからは家計の立て直しの話に移ります。そのためには、先に触れたように、今後「実母の借金の肩代わりは一切しない」。これが絶対的条件となります。それが守られるという前提で、次に実践すべきは「毎月の収支で赤字を出さない」こと。現在、貯蓄がほぼゼロですから、それができないと、また新たな借り入れをせざるを得ません。それは、いつまでもこの状態から抜け出せないことを意味します。
 
とくに大事なのは今後3カ月間。リボ払いの残債が28万円ですから、返済額から考えてあと3回で完済です。その間、新たにリボ払いやキャッシングなどをしなければ、月のコストが一気に10万円下がります。まずはこれを目指さなくてはいけません。
 
それを踏まえて家計を見ていきます。金額が「不明」の雑費を除くと、毎月の支出は43万2000円。そのうち、クレジットカードのリボ払いと金融機関からの借入の2つの返済が計11万6000円ですから、実際の生活費は31万6000円。まずこれを見直します。
 
最初は保険です。ご主人の終身保険(死亡保険)は払済保険にします。終身保険は掛け捨てではないため、保険料が割高です。今は将来の備えより、現金を増やすことが優先されます。払済保険は解約ではないので、保険料の支払いがなくなりますが、これまで支払った保険料分の保障は残すことができます。
 
そして、ゴルファー保険ですが、「ゴルフは会社の付き合いで保険も解約できない」とのこと。ただ、一般にこの保険の保険料は高くても年間で1万円程度。毎月1万円というのはあまりにも高額です。ゴルフ費用の積立分も含まれているなら別ですが、保険料だけでこの負担であれば、いくら付き合いでも家計状況を会社の方に伝えて、一時的にでも解約する状況だと考えます。
 
また、すずらんさん加入の養老保険は当然貯蓄性を考えての保険ですが、やはり払済保険にします。理由は、終身保険と同様です。また、満期金額は小さくなりますが、やはり今まで支払った分の満期金と死亡保障(医療保障はおそらくなくなります)は残すことができます。さらに、多くの場合、「復旧(契約内容を払済保険の前に戻す)」も可能ですので、家計に余裕が生まれたら、そうしてもいいでしょう。
 
ただし、これでは死亡保障が不足します。必要な保障はより割安な保険料で確保することが家計改善の大きなポイントですから、夫婦とも死亡保障1500万円を保険期間15年の定期保険で確保します。併せて入院5000円の医療保険(終身保障・終身払い)に夫婦とも加入して、保険料は合計1万2000円程度。ゴルファー保険も解約できれば、月額1万7000円、年間で20万円下げることができます。また、見直し後に加入する保険は同等の保障が得られる共済や、定期保険の代わりに収入保障保険でも構いません。
 

アドバイス3 家計収支で赤字を出さないだけの「見直し」が不可欠

保険以外にも見直しは必要です。候補としては食費、電気水道光熱費、通信費の3つ。これだけで月に計17万5000円。ご夫婦ともフルタイム勤務のため、とくに食費が割高になるのは仕方がないとしても、やはり貯蓄ゼロは「非常時」です。思い切った節約をすべきでしょう。
 
何をどう削るのかは世帯によって異なります。それでも、最終的には月4万~5万円下げたいところ。食費は予算を決める。通信費はスマホの料金プランの変更、格安スマホに切り替えるなど、やれることはすべて行う姿勢が必要です。
 
それ以外の費目では金額が「不明」と書かれている雑費。ほぼお母さんへの小遣いと借金の支払いで、少なければ月1万円、多ければ5万~6万円とのこと。この見直しは、借金は一切肩代わりしないことが前提ですから、かかるのは小遣いだけとなります。それも必要ないと考えれば「0円」でもいいですし、多少でも渡したいなら1万~2万円、最大でも3万円でしょう。
 
月間収支は単純計算で支出を3万2000円+雑費分下げることができれば、赤字を出さないで済みます。保険その他の見直しで、たとえば月5万円支出を下げることができたとして、あとは雑費=実母の小遣いが1万8000円を超えなければそれが達成できます。逆に言えば、これができなければ、家計は立て直せないことになりますし、決して不可能な数字ではないと思います。
 

アドバイス4 貯蓄ペースが維持できれば資金的には別居も可能

3カ月間、赤字を出さず、リボ払い分が完済できたとします。その後、生活コストを変わらず維持できれば、翌月は計算上10万円の黒字となります。つまり、年間120万円貯蓄ができるということです。それをご主人が定年となるまで継続すれば、18年間×120万円=2160万円貯まることになります。
 
もちろん、毎年大きな支出もなく、順調に貯蓄できる保証はありません。しかし一方で、ボーナスから生活費の補填もしなくて済むのでしたら、もっと貯まる可能性もあるわけです。また、ある程度貯まれば、金融機関からの借り入れの残債分も一括返済できます。結果、貯蓄ペースはさらに上がります。
 
また今後の暮らし方として、もし別居を望まれるなら、今は無理でも先の家計の見直しが実践できれば、1~2年後には資金的に十分可能です。当然、家賃分が、新たな生活コストとなります。と、同時に、実母との別居は、食費その他の生活費の負担がなくなることを意味します。家を出ることは「ある程度の覚悟」を持ってその行動をするわけですから、実母への小遣いも不要となるかもしれません。そう考えれば、仮に家賃が7万円としても、他のコストが下がって、実質2万~3万円のアップで済む可能性も十分あるはずです。
 
ともあれ家計的に大事なのは、リボ払いの支払いが完済するまで、家計で赤字を出さないこと。加えて、完済後は家計に、そして精神的にもゆとりが生まれますが、それで気を緩めず、継続的に貯蓄をしていくことです。もちろん、何から何まで節約では、貯蓄はできても、窮屈な生活となってしまいます。ときに、家族で楽しむことに支出するなど、上手に息抜きもしながら、いかに貯蓄体質を持続させるがポイントになると考えます。
 

相談者「すずらん」さんから寄せられた感想

この度は深野康彦先生に、ここまで詳細に家計診断をしていただけて本当に感謝しております。いただいたアドバイスを何度も熟読いたしました。相談前は、コロナ禍も相まって、一生親の負債を背負って生きるのかと絶望しておりましたが、深野先生に「十分お母さまに尽くされたのでは?」と言っていただけたので、新たな一歩が踏み出せそうです。特に、「保険の払い済」に関しては知識がなかったので、目から鱗でした。今後は、できるだけ早急に家計を見直し、債務を完済して新たな生活の準備に取り掛かれるように努めて参ります。本当にありがとうございました。


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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武



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