「改名」も「作名」も原則としてできない
戸籍に登録された本名を書き変える「改名」は原則、できない
また、戸籍と別の名前を作って使うことを「作名」といいます。改名と作名はよく混同されますが、まるっきり違うことです。そして作名も実は法律上は認められてはいないのです。ただそんなことは一般の人はゆめゆめ知りませんし、罰則規定も無いので、現実には野放しになってはいます。
改名も作名も原則としてできない、というのが基本の原則なのですが、世の中にかなり誤解もありますので、私たちは基本のことを知っておく必要があります。
例外的に改名ができるケース
例外的に改名ができる場合があります。それには正当事由といって、社会的な必要性がなければなりません。具体的には、
- 営業目的による襲名(名前入りの屋号を継ぐような場合)
- 同姓同名の人が近くにいて大混乱している場合(郵便物の誤配など)
- 神官、僧侶になったり、またはやめたりするとき
- 珍奇な名。難解な文字の名(人に読めない、また男女を間違えられる、あるいは悪ふざけのような名前)
- 帰化した場合
- 永年通名として使用した名前がある(別の名前が社会で知られている)
時々、結婚して苗字が変わったわけでもないのに、運勢が悪いからと占いに影響されて「名前を変えました」と知人に知らせたり、また何年か後に、今度は知らせもしないで元の名前に戻したりする人がいます。しかし、「運が開けない」「字画が良くないと言われた」というような占いの話は正当事由にはならず、混乱を招くだけです。
改名の手続き
名前を変えたいという正当事由のある人は、家庭裁判所に「名の変更許可申立書」を出します。用紙は家庭裁判所にあります。この際、正当事由と、新たにつけたい名前を書いて出します。家庭裁判所で改名が許可されたら、許可の審判書の謄本を添付して市町村の役所へ届出をします。家庭裁判所が許可しないときは「却下の告知」がされますが、それが不服なら即時抗告の手続をとって高等裁判所で争うこともできます。高等裁判所で許可になれば、判決文を添付して同じく改名の届出をします。高等裁判所でも許可しなかったら、もうあきらめるしかありません。
例外として作名ができる場合
「作名」とは、戸籍と別の名前を作って使うこと
ただこれは、大きな声では言えませんが、微妙な問題を含んではいます。それは、必ずその作品発表で生活が成り立たなければいけない、という条件は無いのです。
今の時代は、別に生活費を稼げなくても、作品発表をする機会はよくあります。そのための名前を作るのは違法ではない、とも言えるのです。
改名をしたいが正当事由も無い、という人は、作品発表のための名前を作って使えば、とりあえず嫌いな本名は普段使わなくてすみます。もし作った名前が何年にもわたって多くの人に知られたなら、正当事由の6「永年通名として使用した名前がある」を理由にして、改名の申請をしてみる手もありますが、その時は永年にわたる証拠書類、記録の提出が必要になります。
なぜ改名がむつかしいのか?
本人が「これが自分の名前だ」と思ったら、それが名前のはずだ、というご意見もよく聞きます。気持ちはわかりますが、ただ私たちがわきまえなければならない基本のことは、名前というのは個人の持ち物ではなく、「社会の共有物」だということです。戸籍に記載された本名を、私たちが勝手に「違う」などと決めることはできず、戸籍と違う名前を「こっちが本当の名前だ」と思っても、それは空想であって事実ではないのです。個人がある日思ったことをそのまま事実と認めたら、どの人がどんな名前なのか本人にしかわからなくなり、初めから名前をもつ意味は無くなり、犯罪天国になって社会は崩壊します。ですから名前はよほどの事情がなければ変えられないよう、法律で定めているのです。
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