“世間”につぶされそうになったけれど、誰も助けてはくれない

母親のくせに

「世間」は、何かとうるさいものだ。独身でいると「結婚したほうがいい」、子どもがいなければ「子どもは?」、産めば「ひとりじゃ寂しいでしょう」などなど、多くの女性たちは、親、親戚、近所や職場の人などからそういった言葉をかけられた経験があるのではないだろうか。

親は別としても、言っている「他人」たちに特別な意図はない。世間話の一環として言っている人もいるほどだから、真正面から受け止めて怒るのもおとなげない。それがわかっていても、そんな言葉を受け続けていると、ストレスがたまっていくものだ。

 

「妻らしく」「母らしく」の呪縛

つい先日、タレントの紅蘭さんが露出の多い服を着ている写真をSNSにアップすると、「母親らしくない」「子育てが不安」というコメントがたくさんついた。よけいなお世話だと思うが、紅蘭さんももちろんそう感じたようで、

「「最近よく『母親らしい格好しろよ』とDMやコメントを頂きます。そもそも『母親らしい格好』とはなんなのか……。どの様な服装なのか? 誰が決めたモノなのか? 母親になったら着たい服が着れないのでしょうか? 母親になると胸元が見える服は着てはいけないのでしょうか? どなたの考えがそのような多くの方の考えに行き着いたのでしょうか?」

と疑問を呈している。これだけ立て続けにクエッションマークが並ぶのは、相当、腹に据えかねているのだろう。もっともである。

母は地味な服を着なければいけない、母は遊びに行ってはいけない、母は子どものことだけを考えるべき。こうした考え方が、女性たちを縛りつける。生きづらい。こうした風潮が少子化に拍車をかける一因にもなっているのではないだろうか。

「ようやく休みがとれて、夏に子どもたちをプールに連れて行ったんです。夫は仕事だったから、私が7歳と3歳の子を連れて。帰りには下の子が疲れ果てたみたいなので、抱っこして電車に乗っていたら、見知らぬ年配の男性が『子どもがいるのに、なんだその格好は』って。ただノースリーブを着ていただけですよ。言い返すのもバカバカしくて黙っていたんですが、周りの人たちは興味津々な顔で見ているだけ。するとその男性、『母親のくせにそんなに肌を見せて』って追い打ちをかけてきた。思わず、『あなたの母親じゃないんで放っておいてください』と言ってやりました。でもまだぐだぐだ言っている。ちょうど降りる駅に着いたので降りちゃいましたけど、気にしないつもりでもずっと心に残るんですよね、そういうの」

リエコさん(40歳)は苦笑しながらそう言った。

どんな体型であれ、どんな年齢であれ、人は着たいものを着ればいい。それだけのことなのに、なぜ他人がとやかく言うのか。そこには「人は立場で生きている」この国の「悪しき常識」があるからなのかもしれない。

「その人個人」よりも、「立場」でものを決めたがるのだ。彼女が子どもを連れておらず、かちっとジャケットを着てキャリアウーマン風にしていながら、ブラウスのボタンをはずして胸元を大きく開けていたら、中傷した男性はかえって喜ぶのではないだろうか。

 

「らしさ」に縛られるのをやめてみたら……

TPOは大事である。人の葬式にウエディングドレスを着ていく人はいない。それと「らしさ」に縛られるのとは違う。

「私も若いころはずいぶん人の言葉に左右されたし、結婚して子どもを産んでから『もうひとり生みなさい』と義母に言われて、生まないとダメかなあと本気で悩んだりしたんです。だけど私の当時の仕事の状況や家庭のことを考えると、うちはひとりでいい、と。今、娘は中学生になったんですが、同じ洋服を共用することもあります。若作りと言われているんだろうなと思うけど、私もそれを着たいと思ったのだからいいんじゃないか、と。会社に行くために着ているわけじゃなくて休みの日に娘と遊びに行くときに着るんですから、言いたいヤツには言わせておけばいい」

マチコさん(43歳)はそう言う。開き直ることができたのは、「人はどういうときも好き勝手なことを言う」と気づいたから。

「娘が小学生のころ、近所だからと家着で塾のお迎えに行ったら、たまたま会ったママ友に『どうしたの、地味すぎる』って言われたんです。次に友だちと飲みに行った帰りにママ友に会ったら『派手な服着て酔っ払って歩いてた』と噂をたてられて。あー、もうめんどくさいって感じ。何をしようとしまいと、人は勝手なことを言う。それなら私は好きなように生きると決めて。それからはラクになりましたよ」

最近はマチコさんに感化されたのか、3歳年下の夫も派手な色のTシャツなどを着るようになった。

「娘は、パパが派手すぎて恥ずかしいと言いながらも楽しそうに一緒に出歩いています。枠を破るのは自分しかいない。自分が楽しくて心地いいのがいちばんです」

「らしさ」を押しつけてくる「世間」は、結局、関係のない他人なのだ。その枠を一度破ってしまえば、「あの人はそういう人だから」と認知されるようにすらなる。「世間」はどこまでも曖昧で無責任なのだから。


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