「完璧すぎて言うことがない」とFPも唸った資産内容
この連載のタイトルは「貯蓄の達人」ですが、この「達人」とは「ある分野の奥義に達している人」「物事の道理に深く通じた人」という意味となります。こういう人は、大人になって突然才能を開花させることもあれば、子どもの頃から非凡な資質があった人もいるでしょう。今回登場いただく赤毛のアンさん(44歳)は、都内に住む4人家族。以前に、保険の保障の過不足や資産運用の内容等を、有料でFPの方に診断してもらったところ「完璧すぎて言うことがない……という言葉をいただき、自身の資産運用や資産管理に自信が持てました」。
いろいろ話を伺うと、幼少期よりよそ様の子どもとは違う部分が多々あったことが読み取れます。FPをも唸らせた達人ぶり、それはどのように育まれたのでしょうか。ますば、その一端を紹介します。
■基本データ
赤毛のアンさん(仮名)
女性(44歳/自営)
家族=夫(54歳/会社員)、子2人(中学生/小学生)、犬1匹
東京都/持ち家・一戸建て
若干11歳で次の日本景気のピークを察知する
[エピソード1]赤毛のアンさん、小学5年生のとき。家で購読していた日本経済新聞の日曜版に、いざなぎ景気や神武景気の解説が載っていました。詳しい内容は理解できませんでしたが、その記事から「次の曲線が上向きのピークとなるのは私が40歳くらいのとき……」と感じ取り、そのことがずーっと記憶として残ったと言います。
弱冠11歳で日経新聞を手に取り、そこから次の景気のピークを察知する。すごいです……。しかも、それにより「歳を取るのが怖くなかった」とのこと。それは裏を返せば、40歳でそういう好景気の恩恵を受けることが楽しみ、と思ったわけですから、この時点で凡人ではありません。
そして、40歳になり、投資目的で当時所有していた都内のワンルームマンションを、購入時(中古で購入)の倍の価格で売却します。
[エピソード2]
高校生のとき、大人用自転車を買うことになり、親からは「1万円あげるから好きなものを購入してよい。足りなければ、自分のお小遣いを足しなさい。それよりも安いものを買えば、差額は小遣いとして取っておきなさい」と言われました。さて、皆さんならどうしますか?
このときの赤毛のアンさんの行動ですが、何と自分が貯めていたお金から2万円を足して、ナショナル製の「いい」自転車を購入したのです。一方、同様の条件で1万円を受け取ったお姉さんは、範囲内の金額でノーブランドの自転車を購入、残りは自身のお小遣いに。ところが、やがてその自転車から異音がしだし、さらに盗難されてしまいます。
このとき赤毛のアンさんは、自分の行動が間違っていなかったことを確信したはずです。そして、自転車から離れるときは必ずダブルロックをかけ、その後、結婚するまで乗り続けることに。
「本当はもっと乗りたかったのですが、母に処分されてしまいました。ともあれ、高くても大切に使えば、結果、乗り心地もよく、長く使えることができることは身をもって経験しました」
結婚までに「貯めては投資」で3000万円!!
では、赤毛のアンさんは実際にどうやって金融資産を増やしていったのでしょうか。その原動力となったのは「投資」です。最初に投資を経験したのは、まだ10代のとき。お年玉やお小遣いを貯めて作った軍資金12万円で、親の証券口座でソニー株を購入。それが40万円に増えたことから、投資の面白さを実感します。さらに、社会人になってから結婚するまで、習い事以外はほぼまとまった支出がなかったため「貯めては投資」を繰り返し、何と3000万円にまで増やします。
勤務していた企業を退職後、時間的に余裕ができたため、デイトレードを開始。少しでもトレードをした方が儲けが出ると気付いたためです。ただ、お子さんが生まれてからは「9時の前場前に、新聞・株式ニュースを見てから、ずっと張り付いて、午後も3時までパソコンの前から離れられない生活はとても無理でした」という理由で、以来デイトレードはやめています。
それでも、投資を資産運用のメインとする考え方は今も同じ。現預金は70万円。保有する全金融資産のわずか0.6%に過ぎません。見方によっては極端とも思える資産配分ですが、赤毛のアンさんはまとまった現金が手元になくても何の不安もないと言います。
「経験上、予定外に急に支出が必要になったことはありません。車検や子どもの受験等は、あらかじめわかっていることなので、相場を見据えながら売却していくという感じで充分間に合います」
ちなみに上のお子さんは現在私立中学に通っていて、年間の学費は95万円。この支払いも含めて、高校卒業までの授業料分は、運用益ですでに全額用意できているのだそうです(したがって、上記データの教育費にその分は加算されていない)。
売却しなければ損にはなりません
現在の家計収支では、年間600万円の黒字。2年間で1200万円、5年間で3000万円ですから、黙って貯蓄してもあっという間に「達人」の域に達してしまうほどの世帯収入があります。ですが、あくまでも投資中心。現在は、デイトレードをしていたときのように多くの時間を証券投資に割くことはありません。そのかわり、不動産投資により力を入れています(情報収集、現地・物件の視察など)。
そして、積み上げた金融資産は1億2000万円。他にマンションを1室。加えて、現在のお住まいも1億8000万円(うち土地は1億2000万円)の資産価値を持っているとのこと(しかも現金購入!!)。
そんな赤毛のアンさんは、まだ投資をしていない人は今からでも始めてみるべきだと言います。
「投資が怖いという方は、下がったら不安になって売却してしまい、結果、損が出してしまうからだと思います。しかし、資産の評価額が目減りしても、売却しなければ損をしません。私は、保有期間を長期、中期、短期と分けていますので、下がることはさほど気になりません。いいときもあれば悪いときもあります。米国株は一時コロナで値を大きく下げましたが、その後持ち直しましたし、長いスパンの経済成長を見れば、投資をしない理由が見当たりません」
赤毛のアンさんのこれまでを見ていくと「わらしべ長者」の話を思い出します。ひとつの利益が、より大きな次の利益を生む。そこで得たこと、学んだことが、さらに大きな利益につながる。そんな達人の「金銭哲学」は、きっと多くの人にとって人生のヒントとなるはずです。
■赤毛のアンさんが収入アップのために実践していること
「収入源が、一つだと不安なので、本業の他、マンション賃料、原稿を書く、団体の協議会委員になって給料をいただいたり、出来ることは全て引き受け、7つの収入源を持っています。大した額ではないですが。コロナ禍の中、数カ月本業が休業しましたが、他でかなり補填出来ました。またステイホーム期間を利用してFP2級の資格を取得しました。さらに、総合的な視野で家計を見つめられそうです」■なかなか貯蓄できない人へ達人からアドバイス
「とにかく、固定費を見直すこと。アンペア数は、適切か?電力自由化を最大限に利用すること。また、中途半端なお金の使い方をしないようにしています。だらだらと、お金を使っていると、満足感がないのにお金だけが減っていくと思います。私は、ひと月で常備品以外、冷蔵庫を空にしています。食材は、絶対に無駄にしません」取材・文/清水京武
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