亀山早苗の恋愛コラム

「したいなら外でどうぞ」と夫に言われ…40代の性欲とセックスレス

夫婦にとってセックスの有無が重要だと思う人もいれば、セックスレスだっていいと思う人もいる。その価値観が違うと、どちらかが不満を抱くのは当然で、そこから軋轢が生まれることもあるだろう。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

恋愛ガイド

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「セックス下手」な夫だけど愛おしいと思えたとき

セックスレス
 

夫婦にとってセックスの有無が重要だと思う人もいれば、セックスレスだっていいと思う人もいる。その価値観が違うと、どちらかが不満を抱くのは当然で、そこから軋轢が生まれることもあるだろう。

 

逃げの一手の夫を追いつめたら

「40代になってから性欲が強くなったんですよね、私」

そう言うのはアキコさん(46歳)だ。結婚して18年、高校生と中学生の子がいる。夫とは同じ職場で出会い、結婚を機にアキコさんは転職。共働きで家庭を築いてきた。

「夫のことは信頼しているし、親友みたいに感じていました。30代は子育てと仕事と家庭で手一杯。夫とはいつの間にかレス状態になっていました。正直言って、セックスするくらいなら少しでも睡眠時間がほしかった。夫の誘いを断ったこともあるかもしれません。でも応じたこともあるはずで……。ただ、40代になったら下の子が小学校に入ったこともあって、急に自分にも性欲があることを思い出したんです(笑)」

アキコさんから夫に誘いをかけたが、夫は「今さら……」と戸惑った様子だった。浮気をしているわけではなさそうだが、夫としては「その気になれない」のが正直なところだったらしい。

「親である時間ばかり過ごしてきたんですよね。男女の間で生じる欲望から遠ざかっていると、もうその気がなくなるんだ、と夫は言っていました。私も30代はそうだったからわかるんだけど、でも、とてもしたいわけですよ」

折りに触れて夫を誘った。寝室ではシングルベッドを少し離して並べているのだが、彼女はこっそり夫のベッドに潜り込んでみたこともある。それでも夫は「その気になれない」と言う。実際、体に触れてみても、やはりその気ではなかったようだ。

「拒否されているみたいで悲しくなったこともありました。何度もそういうことがあり、しまいに夫は『そんなにしたいなら外でしてきていいよ』って。いいよって何よ、とケンカになりました。夫は『オレが許可するとかそういうことではなく、あなたにその気があっても応じられないからどこかで解消してきたほうがいいんじゃないのかなと思って』と。そのあたりがヘンにやさしいというかなんというか」

夫のその言葉は彼女にとってはショックだった。自分が他の男としても平気なのだろうかとも思い、愛情を疑った。

「もちろん、そんなことをするつもりはありませんでした。夫の思うつぼみたいになるのが嫌だったし、私はそんな不埒な女じゃないわよって言ってやりました」

そのときは、もちろん本音だった。

 

なぜかうっかりホテルへ行ってしまい

「それなのに、私ったら」

アキコさんはそう言って嘆く。彼女の話はシリアスではあるのだが、根っから明るい性格なのか、あまり暗くは聞こえない。

「よく言われるんですよ、何を話しても冗談にしか聞こえないって(笑)」

1年ほど前のことだ。よくある話だが、40代に入って急に中学・高校時代の同窓会の報せが届くようになった。子育てが一段落した人が増えるからだろう。

「都心の繁華街で中学卒業時のクラス会があると聞いて、それなら遠くないし行ってみたいなと思ったんです。夫に聞いたら、その日は土曜日で空いてるから家にいるよと言ってくれて。そのとき中学生の下の子が、『おかあさんの中学時代って想像つかない』なんて言い出して家族でひとしきり盛り上がりました。夫も私も中学時代のアルバムを出してきたりして」

アルバムの中のある男の子の写真に、アキコさんの目が釘付けになった。片思いをしていたダイスケくんだ。彼はどうしているのだろうという思いが去来した。

「いざクラス会に行ったら、半数以上が集まったんですよ。先生も。みんなもう、いい大人なのに中学時代の呼び方そのままで、一気に30年くらい前に引き戻された。ダイスケくんも来てたんですよ」

アキコさんはにやりと笑った。その日、楽しかったけれど一次会で帰ることにしたアキコさんを追ってきたのはダイスケくんだった。

「ふたりでちょっとだけ飲まないかと言われて。私は中学時代に忘れ物をしてきたから、それを取りにいくためにつきあうと答えました。彼にはわかっていたみたい。バーで飲んでいるうちに『私が片思いしていた』『いや、オレだ』という話になって笑っちゃいました。そしてなぜかそのノリでホテルに行ってしまったんですよね」

彼の目に欲望を感じたと彼女は言ったが、彼から見れば彼女の目にも欲望は燃えていたに違いない。

「すごく情熱的で素敵な夜でした。夜遅くなりかけて、あわててケーキを買って帰ったのを覚えています」

そんな大人の関係が一度で終わるはずもなく、その2週間後にまた会った。

「だけどそのとき、ダイスケくんが奥さんの悪口を言ったんですよね。単に愚痴っただけかもしれないけど、この関係に配偶者の存在を入れるのも私は嫌だったし、まして妻の悪口を言うなんて。私だって妻なんだから。そのとき思ったんです。うちの夫がもし浮気をしても、妻の悪口は言わないだろうなって」

アキコさんはベッドから飛び降りて洋服を身につけると、「ごめん、今日は用事があったのを忘れてた。じゃあね」とホテルを飛び出した。

「一回にしておけばよかったと思いましたね。二度会うものではなかった、と。その日は夫の好きな厚めの牛肉を買って、家で焼き肉をしました。夫がバクバク食べるのを見て、私はやっぱりこの人でいいや、と。あ、違う、この人がいいわと(笑)」

その晩、アキコさんは夫のベッドに潜り込んだ。夫がふわりと抱きしめてくれ、そのまま眠りに落ちたという。

「今はセックスしてもしなくてもいいと思いつつ、夫とじゃれあうことは増えました。肉体的にはそれで満足しているわけじゃないので、今度ふたりでゆっくりラブホテルに行こうという話はしています。夫も何か勘づいているのかもしれませんね」

そんなにしたいなら外でしてくれば? その一言を夫が覚えているかどうかはわからない。だがクラス会からそれにまつわるできごとで、妻の気持ちが夫に向き、夫もそれを感じているのは確かなようだ。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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