「愛」がつく名前の第二ブーム
「愛」という漢字は、感受性、思いやりを表わす
「愛」がつく名前はいつの時代にもよくありましたが、はじめは大正時代に流行し、次に昭和の終わり頃から平成の半ばにかけてブームが起きました。
愛の字がとくに大流行したのは、経済成長、バブルの時代です。つまり皆が収入や地位ばかりに関心を向けて競争していた時期です。そして残業、接待ゴルフ、単身赴任、塾通いが当たり前になり、家庭内の人との触れ合いが希薄になった頃なのです。この時期に、家族の触れ合い、結びつきに欠乏感を感じた人達の間で、愛という漢字を使った名前がつけられることがあったのです。
愛がつく人気の名前
愛の字は、著名な方の名前にも見られます。何よりも皇室の愛子様がおられ、俳優の芦田愛菜さん、卓球の福原愛さん、新体操の畠山愛理さん、そして本名ではないですが片岡愛之助さんなどをはじめ、愛のつく名前はたくさん見られます。では愛の字を使ってどんな名前が作れるか、呼び名の人気順にあげれば次のようになります。
あいり 愛李 愛理 愛里 愛莉 愛梨
あ い 愛
あいか 愛夏 愛果 愛花 愛華 愛香
あいな 愛菜 愛奈 愛那
あいこ 愛子
あいみ 愛美 愛実 愛海
あいら 愛羅
あいね 愛音
あいの 愛乃
あいさ 愛沙 愛紗
あいほ 愛帆 愛穂
あいは 愛葉 愛羽 愛芭
愛がつく名前はよくない?
ところで最近は、親の虐待で亡くなる子たちにも愛の字がよく見られます。こうした事件が起きると、愛の字は何か悪い暗示でもあるのではないか、と話題にされたりもします。ただし誤解してはならないのは、愛の字がつく名前自体に良い、悪い、という区別はない、ということです。名前が原因で性格や生き方が決まったりはしません。それは占いの世界でいわれることはありますが、統計上はそのような事実はありません。名前は原因ではなく結果なのです。
愛の字をつけた親は「人に愛されるように」と願っているわけですが、そのベースにある感覚、心理というのは人によって様々です。その一つに「欠乏感」というのがあります。
わかりやすい例では、人が信用できない戦国時代には、信玄、信長、謙信など、「信」の字が流行しました。また昭和の食糧難の時代には、茂、実、稔、豊など、収穫を表わす字が大人気でした。
虐待のケースに限って見れば、虐待をする親自身も温かみのない空気、環境の中で育っているケースが多いといわれます。愛という言葉だけ知っていても、それを実感したことがない人は、子の名づけの時に愛の字をむしょうに使いたくなり、それによって心の空洞が満たされた気分になり、ひと安心するのです。しかし環境で覚えたことはクセとして身についていて、自分も子の虐待をしてしまうのです。
名前というのは、心理的に見ないと解けません。そして流行の名前には、その時代、その社会全体に欠乏しているものが表現されるという傾向はあります。ただもちろんそれはあくまでマクロの見方であり、個人のことはいえません。愛がつく名前の人に「さびしい家庭だったんだね」などと言うと間違えますからご注意を。
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