亀山早苗の恋愛コラム

「もう、夫はいらない…」。離婚というゴールに向けて罵り合う虚しさ

「もう、夫はいらない……」。夫の浮気が原因で、いきなり別居した妻がいる。その後母子家庭の快適さに気づいたのです。調停申し立ての応酬が続いて、なかなか離婚に至っていない。結婚するより離婚するほうが何倍もエネルギーを必要とするのは真実だ。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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離婚への道 調停申し立ての応酬……もう夫はいらない

もう夫はいらない……離婚への道

もう夫はいらない……離婚への道

日本では、離婚の9割近くが夫婦ふたりの合意にもとづく「協議離婚」である。ところが当事者では話し合いがつかない場合、離婚に至る道には、調停、裁判とステップがある。そもそも離婚に合意するかしないか、財産分与、未成年の子がいる場合はどちらが親権をもつかなど、離婚するにあたってはさまざまな同意が必要なのだ。

夫の浮気が原因で、いきなり別居した妻がいる。その後は調停申し立ての応酬が続いて、なかなか離婚に至っていない。
 

夫の浮気が我慢できなかった

カズエさん(37歳)が夫の浮気に気づいたのは、第二子を生んだ直後の2年前。30歳のとき、同い年の彼と妊娠を機に結婚、すぐに長女を、33歳で長男を出産した。夫はなんと結婚当初から浮気をしていたらしい。

「別れたりくっついたりを繰り返していたセフレみたいな女性が、ずっといたんです。私は長年、騙されてた。それが許せなかった」

子どもふたりを連れて家を出て、すぐに離婚を視野にいれた調停を申し立てた。それと同時に、収入的には夫のほうが多いので、別居中の生活費を補償する婚姻費用も出してもらうよう申し立てた。離婚調停に及ぶと、夫は「もともと夫婦生活は破綻していた。だが自分は離婚するつもりはない」という主張を繰り広げた。

「夫婦関係が破綻していたから不倫はやむを得ない。だけど自分は夫として父親として責務を果たしてきた。だから離婚はしない。そんな言い分でした」

さらに別居中でも、子どもと面会する権利はあると、さらに調停を申し立ててきた。さまざまな主張と調停申し立てが入り乱れたが、話し合い自体は同じ調停委員のもとで継続しておこなわれていった。

「なかなか意見が一致しないんです。婚姻費用はすぐ出ました。毎月、夫からいくばくかの生活費が入ってくるので、私も仕事をしつつ、なんとか暮らしていくことができています。子どもたちのこともあるので仕事を続けられるか不安だったんですが、そこは義妹が手伝ってくれていて」

義母は息子である夫の味方をしているが、義妹は実兄ではなくカズエさんの味方なのだという。もともと義妹と彼女が友だち関係だったこともある。

「そういうところも複雑だし、私は離婚したい、夫はしたくないで揉めて……。あげくコロナの影響で調停も止まってしまっていて、ようやく再開したところなんです。ただ、もう進展が見込めないので、裁判を起こすしかないのかと弁護士さんとも話しています」

早く離婚はしたいけれど、財産分与や慰謝料を考えると、きちんとステップを踏んだほうが後悔しないはず、と彼女は離婚した先輩からアドバイスを受けている。
 

母子家庭の快適さに気づいて

子どもを連れて家を飛び出した当初、カズエさんは離婚を本気で決めてはいなかった。ただ、浮気を続けていた夫の裏切りがショックだったし、どうしても許せない気持ちが強く、冷却期間を置きたかったのだ。

「だけど夫は、謝罪はしたものの、『浮気なんだから、そんなに怒らなくてもいいじゃん。本気じゃないんだし』という感じだったんです。それが我慢できなかった。私がつわりに苦しんでいた時期も、ふたりの子を抱えてろくに睡眠もとれなかった時期も、夫はなじんだ女性と心身ともにリラックスした時間を過ごしていたわけですよ。どうして私だけこんな目にあうのかとつらくて。だけど調停が進むうち、夫は『妻は結婚前も結婚後も僕のことを愛してくれなかった』と言い出して」

反論はしたものの、本当のところは妊娠がなかったら彼とは結婚していなかったかもしれないとカズエさん自身も思っているところがある。だから反論の切っ先は鈍った。だったら、夫こそ私を本気で愛していたのかとは言ったものの、「今さら愛だの好きだのっていう気持ち自体がなくなっている」ことに気づいただけだった。

「虚しいですよね。離婚することに夫が合意したら、今度はお金の話が待っている。結婚して家庭を作るのは“流れ”でできますけど、壊すときってひとつひとつ的確に壊していかなければいけない。親権は渡しませんが、子どものためには少しでも養育費はほしい。大人がエゴをむき出しにするのが離婚なんだと実感しています」

とはいえ、現在の子どもたちとの暮らしは快適だとも言う。夫の浮気が発覚する前は、カズエさんは決して夫を嫌ってはいなかった。それでも、夫が家にいると鬱陶しさを感じていたという。

「やっぱり相性があまりよくなかったんですかね。夫の存在そのものが私から自由を奪うものだったという気がします。浮気はしていたものの、あるいは浮気をしていたからこそなのかわかりませんが、夫は非常に常識的で几帳面なところがあって、家ではその几帳面さが全開だった。子どものことに関してもマニュアル通りでないといけない。下の子が離乳食になった時期も、もっと食べたがっているのに与えようとしない。画一的にコントロールしようとする気配がイヤでしたね」

そんな几帳面な夫が、長い間、妻を裏切り続けていたのも不思議な話ではある。日常生活では常識を重んじていたから、息抜きとしての不倫が必要だったのだろうか。

「いずれにしても虚しい日々です。ゴールは離婚しかないのに、他人を入れて顔を合わせてはお互いを悪く言い合っているだけ。疲れてきました」

早く決着をつけて新たな人生を歩みたい。彼女はしみじみとそう言った。中途半端な状態は人をどんどん不安にさせる。とはいえ安易な妥協はできない。結婚するより離婚するほうが何倍もエネルギーを必要とするのは真実だ。

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